未成年者、特に幼児、小・中学生の糖尿病等の生活習慣病予防のための総合検診のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201222058A
報告書区分
総括
研究課題名
未成年者、特に幼児、小・中学生の糖尿病等の生活習慣病予防のための総合検診のあり方に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀米 仁志(筑波大学附属病院茨城県小児地域医療教育ステーション茨城県立こども病院医療教育局)
  • 高橋 秀人(筑波大学医学医療系・生物統計学、筑波大学次世代医療研究開発教育統合センター)
  • 長嶋 正實(あいち小児保健医療総合センター 小児循環器学)
  • 篠宮 正樹(医療法人社団 西船内科)
  • 宮崎 あゆみ(社会保険高岡病院 小児科)
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院)
  • 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域 小児科学)
  • 徳田 正邦(徳田こどもクリニック)
  • 原 光彦(東京都立広尾病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
16,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24~26年度の3年間で幼児、小・中学生 (5歳~14歳) の各年齢300人、計3,000人を対象に包括的なデータ収集を行い、糖尿病を含めた生活習慣病予防を目的にした総合検診のあり方に関するエビデンスを蓄積する。最終年度に小学生300名を対象にエビデンスに基づいた介入試験を行う。これらのデータ及び前回のデータ (高校生1,306名分) から、生活習慣病の診断基準、総合検診を行うべき年齢及びあり方を決定し、糖尿病を含めた生活習慣病の一次・二次予防ガイドラインを作成する。市民公開講座の開催、研究者の所属機関、学会HP等を通じて成果の公開・普及を行う。
研究方法
全国各地で生活習慣病検診を行い、次のデータは参加者全員から収集する;(1)計測値(身長、体重、腹囲、血圧), (2)血液データ{一般生化学 (ALT, 総-, HDL-, LDL-コレステロール, 尿酸)、糖代謝関連項目 (空腹時血糖, インスリン, HbA1c)、アディポカイン等 (レプチン、アディポネクチン、高感度CRP), 摂食因子 (グレリン/オベスタチン)}、(3)内臓脂肪量(オムロン社製, HDS-2000、生体インピーダンス法による直接測定)、(4) 1週間の歩数、(5)出生時から現在までの縦断的身長/体重値、(7) 母親の妊娠中データ、(7)食習慣・生活習慣データ。一部地域では血管硬化度指標、血液凝固線溶系指標も収集する。最終年度に、日本で肥満頻度の増加が続いている小学生300名を対象に、エビデンスに基づいた介入試験を行う。本研究と前回の研究(H18-循環器等(生習)-一般-049、高校生1,306名のデータ)を組み合わせた大規模かつ連続する包括的データから、エビデンスにもとづいた、かつ内臓脂肪量を考慮した生活習慣病の診断基準、総合検診を行うべき年齢及びあり方を決定し、糖尿病を含めた生活習慣病の一次・二次予防ガイドラインを作成する。
結果と考察
総計958名(男子465名、女子492名;幼児59名、小学生低学年345名、高学年354名、中学生200名)が参加した。(1) 小児期・思春期の心血管危険因子の基準値作成に関する研究;メタボリックシンドロームの構成項目について幼児、小学生低学年、高学年、中学生の平均値を分散分析でtrendを検討すると、腹囲、血圧、空腹時血糖は男女とも有意であった。他に、空腹時インスリン、HOMA-IR、HbA1c、ALT、尿酸、レプチン、アディポネクチンは男女とも、男子では総コレステロール、女子では高感度CRPも有意であった。内臓脂肪量は男女ともインスリン、HOMA-IRと、女子では他にHbA1cとも有意な相関を示していた。中学生女子においてはHbA1c値が動脈硬化の指標である脈波伝搬速度の有意な危険因子であった。小児期においては特に健常小児集団のデータが皆無に近く、エンドポイントとしての生活習慣病を持つ小児が肥満以外には稀なため、適切な介入時期、介入項目の設定が困難である。本研究結果をみると、小児期・思春期においては年齢、性を考慮した基準値作成が重要と考えられた。(2) 心血管危険因子に与える生活習慣の影響に関する研究;小学生低学年男子の心血管危険因子に対しては、本人の睡眠時間、TV視聴時間、父のBMI値が有意な影響因子であり、特に父のBMI値高値は多くの心血管危険因子に対して独立した危険因子となっていた。小学生高学年男子では、本人のTV視聴時間、父のBMI、母のBMIの影響が混在し、中学生男子では体育系部活動への参加がほとんどすべての心血管危険因子を軽快させる独立した因子となっていた。小学生低学年女子では、本人の睡眠時間、TV視聴時間、父のBMI、母のBMIの影響が混在していたが、特に母のBMI高値は多くの心血管危険因子の独立した危険因子値となっていた。女子では、睡眠は小学生低学年だけでなく、高学年でもインスリン抵抗性改善の独立した因子として残っていた。運動系部活への参加は男子におけるほど他の心血管危険因子を改善する因子とはなっていなかった。睡眠時間の影響は年齢により異なっており、父親の生活習慣の影響が過去の報告より極めて強くなっていることがわかった。
結論
幼児から中学生を対象として心血管危険因子値の基準値を設定する場合、年齢、性を考慮に入れた基準値設定が重要と考えられた。内臓脂肪量、脈波伝搬速度はインスリン抵抗性、慢性高血糖を評価可能な簡易な検査であり、小児においても生活習慣病検診に取り入れていい方法と考えられた。小児の心血管危険因子に与える本人、保護者の生活習慣の影響は、性、年齢により大きく変化していた。小児期の生活習慣病予防のための介入時には性、年齢を考慮したstrategyが大事と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222058Z