ハイリスク糖尿病患者における糖尿病薬、血糖管理と大血管障害発症に関するComparative Effectiveness Research

文献情報

文献番号
201222057A
報告書区分
総括
研究課題名
ハイリスク糖尿病患者における糖尿病薬、血糖管理と大血管障害発症に関するComparative Effectiveness Research
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野出 孝一(佐賀大学 医学部)
  • 井上 卓(琉球大学 附属病院)
  • 松島 雅人(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 大屋 祐輔(琉球大学 医学研究科)
  • 佐田 政隆(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 東 幸仁(広島大学 原爆放射線医科学研究所ゲノム障害病理研究センター)
  • 島田 健永(大阪市立大学 医学研究科)
  • 石橋 豊(島根大学 医学部)
  • 植田 育子(慶應義塾大学 医学部)
  • 今西 政仁(大阪市立総合医療センター )
  • 香坂 俊(慶應義塾大学 医学部)
  • 百村 伸一(自治医科大学 さいたま医療センター)
  • 安 隆則(獨協医科大学 日光医療センター)
  • 安藤 真一(九州大学 睡眠時無呼吸センター)
  • 新崎 修(医療法人友愛会 豊見城中央病院 循環器内科)
  • 仲田 清剛(社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック)
  • 川満 克紀(医療法人沖縄特州会南部特州会病院)
  • 田口 晴之(社団法人日本海員液済会)
  • 森本 剛(兵庫医科大学 )
  • 門上 俊明(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会二日市病院)
  • 島袋 充生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は糖尿病患者における大血管障害予防に有効な最善の危険因子管理を見いだすことである。心血管ハイリスク糖尿病患者に焦点をあて、大規模コホート研究で、プロペンシティスコアマッチングなどにより探索的にさまざまな治療法(各種糖尿病薬使用、非使用等や達成された血糖、血圧、脂質)の効果の比較を行う(Comparative effectiveness research)。質の高い観察研究からエビデンスを創出し、ハイリスク糖尿病患者の予後の改善を図る。
研究方法
対象患者は20歳以上の冠動脈疾患合併糖尿病患者。冠動脈疾患の定義は1)冠動脈にAHA分類75%以上の狭窄を一枝以上に有する、2) 急性冠症候群の既往、3) 過去のPCI, CABGの既往)である。無病気間3年未満の悪性新生物に罹患している患者は対象としない。研究デザインは多施設共同後ろ向き/前向きコホート研究で日常の診療を超えた検査、薬物、非薬物の介入なし。主要評価項目として死亡、心筋梗塞、脳卒中
結果と考察
米国のCOURAGE研究(積極的な薬物治療とインターベンションのランダム化比較試験)と比べると本研究は連続登録による観察研究であり、年齢は高めであり、男女比もCOURAGEと比較すると女性が多い。またPCIをおこなった患者が米国の3倍、逆にCABGを行った患者は米国よりも少ないという特徴もある。登録時薬剤についてACCORD研究(積極的血糖降下と標準的降下のランダム化比較試験)と比較した。 我々のレジストリは全般に糖尿病薬の使用頻度が低いが、とりわけメトフォルミンの使用がSU剤に比べても低いことが特徴である。今後メトフォルミン使用、非使用患者を比較する解析やメトフォルミン介入によるランダム化比較試験の実施が可能である。登録時にDPP-4阻害薬が使用されていた割合は0.2%であった。したがって本レジストリではDPP-4阻害薬の使用非使用を時間依存性変数とし、同薬の開始と心血管アウトカムのような解析を進めることが今後可能であろう。糖尿病薬以外では我々のレジストリではスタチン系薬剤の使用頻度が米国よりも低いこと(米国がほぼ100%, 我々のレジストリでは62%)、ACE阻害薬の使用頻度がARBよりも低いこと(米国では逆)、β遮断薬の使用頻度が低いことなどである。登録時の危険因子については我々のレジストリでは血糖は米国と同等であるが脂質や血圧はいずれも上回っている。いずれにせよこの問題はランダム化比較試験で積極的脂質低下、あるいは血圧降下の妥当性を検証する必要がある。心血管イベント発生については 死亡(年率3.8%)、非致死性心筋梗塞(0.9%)、非致死性脳卒中(1.5%)をあわせた発症率は年間6.5%程度であり,3年間でおおよそ20%である。この集団においてランダム化比較試験を実施する際、エンドポイントを同様に設定すると、3年間で20%リスクが減少することを有意差として検出するにはおおよそ4000人の患者が必要である。冠動脈疾患患者でありながら脳卒中の発症が多いことはおそらく米国と異なる点である。登録時ではなく経過中の血圧およびLDLが低い群(四分位点以下,収縮期血圧<123mmHg、LDLコレステロール<85mg/dl)は死亡率が高い傾向があった。
今後はより症例数を増やし、交絡因子を除去した解析を行い、結果の一貫性を求める必要があるが、やはりランダム化比較試験の結果を待つことが最善であろう。
結論
日本人ハイリスク糖尿病患者では欧米の患者に比べ血糖のコントロールは同程度であるが,脂質や血圧値は上回る。現行のガイドラインの基準を満たしている患者は半数以下である。
メトフォルミンの使用頻度が低いなど糖尿病薬の使用頻度も欧米と異なる。また降圧薬では本邦ではARBの使用頻度が高く、スタチンの費用頻度が低い。
観察研究では観察期間中の血圧や脂質の低値はかならずしもアウトカムの改善と関連しない。しかしスタチンの使用,非使用は関連する。
3年間で20%の患者に死亡、心筋梗塞、脳卒中が生じる。ハイリスクであり、早急な介入が望まれる。介入試験の候補としてはメトフォルミンの使用、非使用などが考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222057Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,580,000円
(2)補助金確定額
8,580,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 71,450円
人件費・謝金 4,312,507円
旅費 3,252,100円
その他 163,976円
間接経費 780,000円
合計 8,580,033円

備考

備考
差額の33円は利息がついたため

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-