保健指導の導入による脳卒中・心筋梗塞の再発予防効果に関する研究

文献情報

文献番号
201222056A
報告書区分
総括
研究課題名
保健指導の導入による脳卒中・心筋梗塞の再発予防効果に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森山 美知子(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 成人看護開発学)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 昌泰(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 脳神経内科学)
  • 木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 百田 武司(日本赤十字広島看護大学 看護学部)
  • 木村 穣(関西医科大学医学部 健康科学センター )
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 企画部 疫学・統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脳梗塞や心筋梗塞を発症した患者に対して、独自に開発した指導教材及び保健指導プログラムに基づく保健指導の介入研究を実施し、再発・重症化予防における保健指導の有効性を検証する。また、自己管理手帳等を媒体として、急性期から在宅療養に至る過程を通じて関係医療機関と多職種が有機的に連携して、効果的な保健指導と適切な疾病管理を継続的に実施可能な地域連携システムの構築を目的とする。
研究方法
脳梗塞患者:無作為化比較対照試験。対象者は、広島市内、岡山県倉敷市内及び愛知県豊田市の急性期病院と回復期リハビリテーション病院10ヶ所を退院した、発症6ヶ月以内の脳梗塞と一過性脳虚血発作患者で、医療機関に通院中、40歳以上80歳未満の成人で、リクルート時点の脳梗塞重症度が日本版mRS 0~3で、研究参加に同意を得た者。病型ごとに無作為化を実施。開発したプログラム(6ヶ月間)を実施する介入群と従来通りの指導を医療機関で受ける対照群に振り分けた。評価は、6ヶ月のプログラム終了後、2年半の追跡観察を行った(合計30ヶ月)。対照群についても、30ヶ月の追跡観察を行った。
心筋梗塞患者:無作為化比較対照試験。大阪府内の急性期病院1ヵ所において、心筋梗塞又は狭心症で入院加療を受けた者を無作為割り付けし、在宅生体センサーを導入したシステム(自動血圧計、電子歩数計、電子体温計の貸し出し。患者は在宅で、毎日これらの測定を行う。)及び研究者らが開発したテキストを用いての保健指導による疾病管理を行った「生体センサー管理群」と、退院後は積極的な保健指導は行わず、外来において退院後の生活習慣、冠動脈危険因子のコントロール状況について医師が通常の診療の中で説明を行った「対照群」とに分けた。評価は、介入前及び介入6ヶ月後、その後6ヶ月毎に血清脂質、耐糖能、呼気ガス分析による運動負荷試験を施行し、運動耐容能を評価した。
結果と考察
1.脳梗塞
 平成24年12月17日までに321人(介入群156人、対照群165人)を登録(同意取得率57.1%)、介入群27人、対照群29人が脱落し、介入群3人と対照群11人が脳梗塞を再発した(p=0.038)。両群のベースラインとプログラム終了(6ヶ月目)までの評価指標の比較を行ったところ、介入群においてすべての指標が改善し、特に行動目標達成度(血圧測定、内服遵守、食事、運動のすべてp<0.001)、うつ(p<0.001)、自己効力感(p<0.001)、QOL(項目ごとにp<0.001~<0.05)のほか、体重(p<0.01)、BMI(p<0.01)、収縮期と拡張期血圧(いずれもp<0.001)、空腹時血糖(p<0.05)、Framingham Risk Score:CVD(p<0.001)の統計的な有意差を得ており、介入の効果を立証できている。また、介入終了後6ヶ月(12ヶ月目)までも、目標達成度(血圧測定、内服遵守、食事でp<0.001)や収縮期血圧(p<0.01)、拡張期血圧(p<0.001)、総コレステロール(p<0.05)、Framingham Risk Score:CVD(p<0.01)で統計的有意差が得られ、値も改善した。また、教育の効果によって、TIAや脳梗塞の再発、合併症および新たな危険因子の早期発見が出来たことが、教育を行った看護師から報告されている。
2.心筋梗塞
 外来診察での生体情報に基づく生活習慣の管理を実施する群55例、在宅での体重・歩数・血圧等の生体情報のセルフモニタリング及びIT自動記録システムによる専門スタッフ管理群49例、看護師による定期的な電話モニタリング指導群26例で、その後の体重、血圧、脂質、血糖値等の変化、虚血性心疾患の再発、冠動脈狭窄の進展、心イベントの発症等での比較検討を行った結果、血圧、体重の管理において、在宅生体センサーによる血圧、体重、歩数の管理は対照群に比し有意な改善が認められ、また従来の医療機関での心臓リハビリテーション施行群と同様の効果が得られた。
結論
 従来の医師を中心とした薬物治療を主とする診療だけよりも、看護師や保健師らによるこれらの基礎疾患/危険因子のコントロール(疾病管理)に向けた患者教育(保健指導)の追加が、再発予防に有効であることが示された。
 最適な保健指導方法や実施期間については、本研究結果に示される通り、6ヶ月間の、自己管理行動(セルフマネジメント能力)の獲得を主眼にした対面と電話を用いた教育介入は、効果があるといえる。患者の目線に立ったわかりやすい教材(テキスト)とセルフモニタリングを可能にする手帳の存在も有効であることがわかった。また、遠隔センサーを用いた教育指導も、患者にタイムリーなフィードバックがかけられる点からも、動機付けになりやすく、行動変容が図れることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222056Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,130,000円
(2)補助金確定額
9,130,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,974,892円
人件費・謝金 4,885,291円
旅費 852,190円
その他 617,083円
間接経費 830,000円
合計 9,159,456円

備考

備考
自己負担金29,456円

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-