日本人の食生活の内容を規定する社会経済的要因に関する実証的研究

文献情報

文献番号
201222050A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食生活の内容を規定する社会経済的要因に関する実証的研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 吉治(山口大学 医学部)
  • 中谷 友樹(立命館大学 文学部)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 大内 妙子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 西 信雄(国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター)
  • 林 芙美(千葉県立保健医療大学 健康科学部)
  • 武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、世帯の経済的要因と食料品へのアクセスに関わる地理的要因について、食生活との関連を明らかにすることである。平成24年度は、既存のデータベースを用いた分析(研究1)と、実態調査の準備(研究2)をおこなった。
研究方法
研究1 既存のデータベースを用いた社会経済指標と食生活・栄養状態との関連検討
1)世帯の年間収入と生鮮食品の摂取量との関連
 平成22年国民健康・栄養調査のデータを用い2821世帯を解析対象とした。世帯の年間収入200万円未満、200~600万円未満、600万円以上の3群間で、生鮮食品(野菜類、果実類、魚介類、肉類)の摂取量に差がみられるかについてマルチレベル分析をおこなった。
2)成人の主観的な「ゆとり感」と食生活等との関連
平成21年内閣府「食育の現状と意識に関する調査」のデータを用い、満20歳以上の2297名を解析対象とした。社会経済的因子は教育年数、都市規模、雇用形態、世帯年収、主観的な暮らし向きを用いた。従属変数は主観的な健康状態、食に関する主観的QOL(食生活の満足度)、食習慣に関する6項目とした。
3)子どもの保護者世代の所得と食事内容の関連
平成23年埼玉県民健康・栄養調査のデータを用い、30歳から59歳の356名を解析対象とした。食事記録をもとに、世帯の年間収入200万円未満、200~600万円未満、600万円以上の3群間で、料理レベル、食品群レベル、料理レベルで摂取量に差がみられるかを分析した。
研究2
1)食料品店への近接性と食事・栄養状態との関連に関する文献レビュー
データベースPubMedを用い先進工業国対象の12編を整理した。
2)食料品店へ近接性を反映する地理的環境指標の検討
既存の地理空間情報を活用し、(1)徒歩による食料品店舗へのアクセスを評価する食料品店舗の500m圏域を示す主題図、(2)栄養調査の調査協力者について居住地から最寄りの食料品店舗までの距離、および500m圏域内の食料店舗の種類と数の指標計測をおこなった。
3)食料品店への近接性と高齢者の食事・栄養状態との関連プレテスト
山口県美祢市に居住する65歳以上の独居女性20名を対象に、質問紙調査と2日分の食事記録調査を行った。
4)世帯の経済状態と子どもの食事・栄養状態との関連に関する文献レビュー
PubMedを用い先進工業国対象の11編を整理した。
結果と考察
研究1
1)国民健康・栄養調査における世帯の年間収入別にみた生鮮食品の摂取量
 野菜類、肉類の摂取量は、年間収入が600万円以上の世帯に比べて200万円未満の世帯で有意に少なかった。
2)成人の主観的な「ゆとり感」と食生活等との関連
全ての社会経済的変数を投入した多重ロジスティックモデルでは、「主観的な健康状態」「食に関する主観的QOL」「メタボリックシンドロームの予防・改善」「朝食摂取」「欠食の有無」「食事のバランス」について共通に、主観的な暮らし向きで“ゆとりなし”に比べて“ゆとりあり”のオッズ比は有意であった。年間収入は、他の社会経済的要因を投入した場合に、全ての項目で関連がみられなくなった。
3)子どもの保護者世代の所得と食事内容の関連
世帯所得200万円未満群は、男性では野菜、果物の摂取量、女性では野菜、果物の摂取量が少なく、総食物繊維、カルシウム、カリウム摂取量、たんぱく質摂取量が少ないことが示唆された。
研究2
1)食料品店への近接性と食事・栄養状態との関連に関する文献レビュー
店舗までの距離が800m以内に居住する者に、そこで販売される食物(高脂肪食品、砂糖入り飲料、ファストフード、野菜・果物等)の摂取が多いことが報告されていた。
2)食料品店へ近接性を反映する地理的環境指標の検討
DARMSおよびテレポイントPack!を用いることで、徒歩による食料品店舗へのアクセスを評価する主題図が作成可能であるが、情報の網羅性ではテレポイントPack!が優れていた。
3)食料品店への近接性と高齢者の食事・栄養状態との関連のプレテスト
食事調査の結果では、コレステロールが低く、塩分相当量が高い傾向が認められた。また高齢者において食事調査、質問紙調査が実施可能であることが確認できた。
4)世帯の経済状態と子どもの食事・栄養状態との関連に関する文献レビュー
世帯の経済状態が低いと、子どもは乳製品、果物、魚等、ビタミン、たんぱく質摂取量が少なく、過体重や肥満のリスクが高いことが報告されていた。
結論
日本の成人では、収入が低い群で野菜、肉やたんぱく質摂取量が少ないことが示された。また主観的な健康観や食のQOL、食習慣は、収入よりも主観的な暮らし向きが強く関連していることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222050Z