生活習慣病対策が医療費・介護保険給付費に及ぼす効果に関する研究

文献情報

文献番号
201222044A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病対策が医療費・介護保険給付費に及ぼす効果に関する研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-若手-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
柿崎 真沙子(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国民の健康水準を維持しつつ、社会保障負担を適正なレベルに保つことは、我が国にとって喫緊の課題である。「生活習慣を改善することで、どのくらい医療費は減らせるか?」「中年期の生活習慣病対策は、高齢期の医療費・介護保険給付費を減らせるか?」「投資効果を考慮した場合、生活習慣病対策の適正な規模はどの程度か?」という3つの疑問に回答することが本研究の目的である。そのため、地域住民を対象に生活習慣・基本健康診査(健診)成績と医療費・介護保険認定状況を長期追跡しているコホートを駆使し、中年期の生活習慣が死亡リスクに及ぼす影響に関する研究、中年期の健診受診が高齢期の医療費および介護保険認定リスクに及ぼす影響に関する研究、中年期から高齢期にわたる生活習慣の変化が高齢期の介護保険認定リスクに及ぼす影響に関する研究を行った。
研究方法
 本研究では、宮城県の大崎保健所管内に在住する40歳から79歳の国民健康保険加入者全員約5万人を対象とし、1994年9月から12月にベースライン調査を行い、1995年1月以降の死亡および医療利用状況を追跡している「大崎国保コホート研究」、および宮城県の大崎市(大崎国保コホート研究の対象地区であった大崎保健所管内1市13町の1市6町が2006年3月31日に合併)に在住する40歳以上の全住民約7万7千人を対象とし、死亡情報と要介護認定に関する追跡を行っている「大崎市民コホート2006」のデータを用いている。大崎国保コホートの有効回答者は52,029人、大崎市民コホート2006の有効回答者は49,603人、両コホートに回答した者は16,982人である。
結果と考察
 3年の研究計画の2年目である本年度においては、以下の成果を得た。第一に中年期の良好な生活習慣の蓄積はその後の循環器疾患死亡リスクに影響した。これは良好な生活習慣を多く持つ者ほど、循環器疾患死亡リスクが減少することが示され、この結果より、中年期の生活習慣がその後の生活習慣病リスクと関連していることがわかった。第二に中年期の健康診査(健診)受診はその後の高額医療費発生リスクを有意に低下させることがわかった。これにより、中年期の健診受診により医療費が削減できる余地が大きいことが示唆される。しかしながら、中年期の健診における血液指標の結果は、高齢期の要介護認定リスクとは関連しなかった。中年期の血液指標の結果は、生活習慣病の罹患リスクを予測することは可能であるものの、長期的な要介護認定の予測には有用でない可能性が示唆される。第三に中年期から高齢期にわたる生活習慣が要介護認定リスクと関連する可能性が示唆された。特に喫煙習慣といった中年期の不健康な生活習慣は、その後健康な生活習慣に改善しても要介護認定リスクを高めることが示唆されるほか、良好であった生活習慣が悪化することで要介護認定リスクが上昇する可能性が示唆された。
結論
 以上の結果は、中年期の生活習慣は高齢期の健康レベルに大きな影響をおよぼすこと、中年期の健診受診は医療費に影響をおよぼすこと、中年期の生活習慣そのものが高齢期の生活習慣の変化に関わらず要介護認定リスクに影響することを示唆するものである。本年度の研究成果は、生活習慣病の予防を通じて医療費および介護給付費を節減できる余地が大きいことを示唆するものである。今後さらに予防や生活習慣の改善を貴重とする保険医療の費用対効果に関する検討を深め、疾病予防対策の経済効果に関して明白なエビデンスを提示し、今後これらのエビデンスに基づいて生活習慣の改善に重点をおいた保険医療制度を構築することで、医療費・介護保険給付費の適正化を目指すことが求められる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222044Z