歯科保健医療の需給に関する地域構造的分析

文献情報

文献番号
199800086A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科保健医療の需給に関する地域構造的分析
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
宮武 光吉(財団法人口腔保健協会)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田眞人(東京歯科大学)
  • 大川由一(千葉県立衛生短期大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科保健医療の適正な需給状況を把握するためには、人口構造の変化、県民所得ならびに民力指数等種々の地域特性が歯科保健医療の需要因子である歯科疾患量や歯科受療行動等に影響しており、これらの因子を解明することが必要である。また、これらの因子は、歯科保健医療の供給にも影響を与えているので、歯科保健医療施設と歯科保健医療担当者の地域分布と歯科医療費ならびに都市化、アクセス要因等との関連を分析し、歯科保健医療の需給関係を検討するための基礎的な資料を得ることを目的として、本研究を実施した。
研究方法
都道府県、定住・昼間人口別に人口10万対歯科医師数、歯科診療所数および1歯科診療所当りの稼動点数を求め、それぞれの数値に基づき都道府県別の格差指数を求め、これを階層化した地図を作成し、各々の格差指数についての相関関係を分析し、要因を解析する。歯科医師数および歯科診療所数と各種社会経済等の指標との要因分析を行うため、重回帰分析を実施し、仮定したモデルとの比較を行う。
結果と考察
定住人口による人口10万対歯科医師数と昼間人口による人口10万対歯科医師数をみると、大差はなかった。歯科診療所についても、ほぼ同様の結果が得られた。人口10万対歯科診療所数と歯科診療所1か所当り稼動点数との相関をみると、定住人口と昼間人口のいずれの場合も有意な負の相関がみられた。定住人口と昼間人口との差が大きい地域について歯科診療所1か所当りの稼動点数をみると、低い傾向が認められた。都道府県・二次医療圏別に人口10万対歯科医師・歯科診療所の格差指数を地図化し地域構造を明らかにした。歯科診療所数と有意な正の相関関係が認められた社会経済的要因として、人口集中、都市化ならびにアクセス要因等との関連が推測された。また、都市化とアクセス要因の影響が大であることも重回帰分析の結果から認められた。最も人口10万対歯科診療所数の多い東京都を除いて分析したところ、説明変数による相関および寄与率が低下しており、大都市圏については、個別により詳細な分析が必要である。歯科医師ならびに歯科診療所は、都市化地域に集中している傾向がみられ、これらの地域における歯科診療所経営は困難度が高いと推測された。昼間人口の多い地域は東京、大阪および愛知であり、少ない地域はこれらの地域の周辺に位置している神奈川、埼玉、千葉および和歌山等となっており、歯科医師および歯科診療所の集中度は、大都市圏および隣接県にまで及んでいることが示唆された。歯科診療所数と関連する要因のうちで、重回帰分析の結果から第三次産業就業者割合と民力水準といった「都市化要因」の影響が大きいことが示された。これらの分析は、都道府県別に行われたものであるが、同一都道府県内にも二次医療圏別にみると格差がみられるので、今後は二次医療圏さらに市町村単位で詳細に分析することが今後の課題である。
結論
定住人口および昼間人口10万対歯科医師と歯科診療所数の格差指数とは高い相関関係を示し、両者の分布はほぼ同様な状況である。定住・昼間人口差の大きな所は関東や関西を中心とした大都市周辺地域に認められ、歯科医師および歯科診療所の集中傾向は東京、大阪等の都市圏中心部から周辺の県に波及していることが認められた。歯科医師および歯科診療所数と歯科診療収入(稼動点数)とは負の相関関係が認められ、集中傾向の低い地域ほど収入は高い傾向が認められた。定住人口と昼間人口の差が大きな地域では歯科診療収入が低い傾向が認められた。歯科診療所数と歯科医師数と社会経済等の相関をみると、人口密度等の「人口の集中傾向要因」、第3次産業就業者割合等の「都市化関連要
因」、歯科受療率にみられる「アクセス要因」などとの関連が推測された。重回帰分析の結果、「都市化要因」と「アクセス要因」の影響が大きかった。東京都を除外した場合の重回帰分析では説明変数による相関と寄与率が低下するため、大都市圏についてはより詳細な分析が必要である。

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