慢性閉塞性肺疾患(COPD)のスクリーニング手法の改善に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201222043A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性閉塞性肺疾患(COPD)のスクリーニング手法の改善に関する疫学研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小倉 剛(一般財団法人結核予防会大阪府支部)
研究分担者(所属機関)
  • 内村 和広(公益財団法人結核予防会結核研究所)
  • 工藤 翔二(公益財団法人結核予防会複十字病院)
  • 太田 睦子(公益財団法人岩手県予防医学協会)
  • 土屋 俊晶(公益財団法人新潟県保健衛生センター)
  • 南 貴博(公益財団法人結核予防会福岡県支部)
  • 岡山 明(公益財団法人結核予防会第一健康相談所)
  • 星野 斉之(公益財団法人結核予防会第一健康相談所)
  • 林 清二(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では、40歳以上での慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率は8.6%で、大部分は軽症例であるが未受診のままで重症化するものが多く、そのため、集団健診を利用したCOPDの効率的な早期発見が必要視されている。本研究では、ハイ・チェッカーを併用することにより、質問票のみによるスクリーニングの問題点を克服できる可能性について検討を行っているところであり、IPAG質問票を用いて、肺機能検査が必要な対象を適切にスクリーニングする方法を検討することとした。ハイ・チェッカーの効率的な検査体制および利用方法が確立すれば、集団健診における肺機能検査体制を標準化しうる可能性がある。さらに本研究の一つの特徴は、COPD患者の大半を未診断の軽症例が占めている日本の現状に鑑み、集団検診を利用してCOPDの予備群や軽症患者を早期発見するという点にあり、将来的には、禁煙などの介入によるCOPDの発症や重症化の予防、あるいは肺機能検査値の推移と生命予後や要介護度との関連性などについて有用な情報を提供しうる可能性もある。
研究方法
研究-Ⅰでは、COPDの早期発見方法の確立をめざし、結核予防会と4か所の支部での人間ドック受診者を対象に、ドック健診でのスパイロメーターによる肺機能検査結果、及び IPAG・COPD質問票の回答結果と簡易型肺機能測定機器(ハイ・チェッカー)による肺機能検査結果の集積を図ってきた。現在、それらを基に感度・特異度の向上を図るための具体策や、今まで見逃されがちであった軽症COPD例やCOPDハイリスク群への早期介入策さらには長期的な疾病負担の低減などの面から提言を行うべくデーター解析を進めており、ハイ・チェッカー検査法の改良についても検討を開始した。また、研究-Ⅱでは、大阪府支部堺高島屋内診療所が行う種々の事業所健診において、研究-Ⅰと同様な方法でスクリーニングされたCOPD疑い例に対し、堺市内の国立病院機構近畿中央胸部疾患センターでの確定診断を勧奨し、COPDの早期発見に関わる問題点を検討した。
結果と考察
研究―Ⅰに関しては、予備調査に基づいて定めた説明内容を用いてハイ・チェッカーを用いた1秒量/6秒量比とスパイロメーターでの1秒率と比較検討したところ、被検者の検査実技が良好であった群では感度、特異度共に高い値を示したが、実技が悪くなると感度・特異度が低くなる傾向が見られた。全体では80%の感度、特異度が得られており、集団健診などの場で対象者が簡単な説明を受けて自己測定した値を用いるスクリーニング方法としては優れた方法と考えられる。一方スクリーニング効率は実技の巧拙度に強く依存しているので、良好群の割合を高めるためには、検査の仕方についてのインストラクションの方法や検査機器では特にマウスピースの改善をする必要があると考えられた。研究-Ⅱについては、限られたスペース、時間、費用、スタッフで行う一般事業所での健診の場では、ハイリスク例を効率よくスクリーニングし、速やかにかつ確実に確定診断を受けるよう手配する必要がある。今年度の経験では、IPAG質問票によるハイリスク例の発見頻度は33.5%で、我々が過去、4万例を超える人間ドック受診者で調査した結果と同程度であったそれらのほとんどがハイチェッカー検査を受け(92.2%)、気流制限例の発見頻度は9.6%であったが、この数値も上記の人間ドック受診者での頻度(9.4%)と同程度に低く、今後の検討課題となった。しかし、気流制限例の確定診断受診診率は、現時点では、45.8%で、そのうち81.8%がCOPDであったことは、確定診断の受診勧奨を強化する必要性を強く示唆している。今後、未受診の理由などについて調査する予定である。
結論
第2年度で収集しクリーニングしたデータを元に簡易型肺機能測定機器:ハイ・チェッカーのCOPDスクリーニング効率を検討したところ約80%の感度、特異度を期待しうると考えられた。検査実技が良好であった群では更に高かったため、機器や操作手順を改善することで更に高いスクリーニング効率が期待できると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222043Z