慢性期ハイリスク者、脳卒中および心疾患患者に適切な早期受診を促すための地域啓発研究

文献情報

文献番号
201222038A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性期ハイリスク者、脳卒中および心疾患患者に適切な早期受診を促すための地域啓発研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 恵宏(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 平出 敦(近畿大学医学部付属病院)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学医学部臨床看護学講座)
  • 石見 拓(京都大学環境安全保健機構付属健康科学センター)
  • 朴 孝憲(宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院事業統括本部)
  • 岸本 一郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 糖尿病・代謝内科)
  • 武呂 誠司(日本赤十字社大阪赤十字病院 糖尿病・内分泌内科)
  • 小久保 喜弘(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 渡邉 至(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 西村 邦宏(独立行政法人国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター予防医学・疫学情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
循環器疾患の克服には市民自らの積極的な行動が不可欠である。市民は正しい知識に基づいて生活習慣の改善や早期受診を行う潜在能力を有しているが、知識の不足や実行に至るきっかけがない。
我々は既に、糖尿病連携手帳の編集員を務め地域連携パスの協議会を大阪府豊能広域で展開している。また、日本脳卒中協会と協力した脳卒中のキャンペーン、救急蘇生についての“集う蘇生の心”のホームページなどを展開している。
本研究の目的は①糖尿病の早期受診と治療継続、②脳卒中の早期受診、③院外心停止に対する一次救命処置に対する市民の潜在能力を引き出す啓発効果の検討を行なうことである。
研究方法
本研究は3つの研究よりなる。
1. 糖尿病患者の受診率・アドヒアランス向上についての検証
 病診連携による治療継続についての調査をおこなうため、10の医療機関に糖尿病連携手帳を持参して訪れた患者の連携手帳記載内容を調査した。また、健診で要受診についての啓発キャンペーンを実施し、その効果評価の研究を実施した。
2.効果的な脳卒中啓発手段の開発
 2011年度は、マスメディアの効果を検証するため、広島県呉市の一般市民を対象に電話調査を実施した。2012年度は自治体(栃木県庁)および日本脳卒中協会の協力のもとに介入前調査を実施し、脳卒中発作時の症状と対応に関する知識の保有頻度を評価した。介入地域(栃木県下8市)および対照地域(群馬県高崎市)で脳卒中を疑った時の対処行動等に関する多肢選択式の電話調査を実施した。
3.院外心停止の一次救命処置の啓発手法の検討
 院外心停止に対する一次救命処置の地域での啓発効果を検証するため、2012年1月に地域介入前のベースラインデータ調査を実施した。さらに、2012年度は院外心停止に対する一次救命処置の地域啓発を、京都府舞鶴市でおこなった。
 
結果と考察
(結果)
1. 糖尿病患者の受診率・アドヒアランス向上についての検証
他の医療機関と連携していた手帳の割合は63%(41事例)であった。糖尿病連携手帳保持の有無について、回答を得た924名中、手帳ありは142名(15.4%)、無しが723名(78.2%)、無回答が59名(6.4%)であった。啓発キャンペーンの効果について、啓発キャンペーン前の1回目のアンケート調査は11月上旬に実施済みで(回収率は全体で約75%)、報告書作成時点では、2回目のアンケート調査を回収中である。
2.効果的な脳卒中啓発手段の開発
 ACジャパンによるテレビでの映像媒体への曝露が有意に脳卒中発作時症状の知識を向上させることを示した。そこで、自治体、医療・福祉機関、企業、教育機関等での脳卒中啓発を実施する団体が利用可能な啓発コンテンツとして、脳卒中発作に関する啓発動画を制作した。そして、同啓発動画に加え、国立循環器病研究センターが開発した中学生を対象とした啓発ツール(アニメ、漫画など)、(社)日本脳卒中協会がこれまでに制作した各種小冊子やチラシ、2007年~2011年にかけてAC ジャパンが制作した脳卒中啓発動画や広告等多彩な脳卒中啓発ツールを組み合わせて、子供から高齢者まで幅広い年代に対応しうる包括的脳卒中啓発プログラムを介入対象自治体(栃木県)と研究班とで共同開発した。
 2012年度の介入研究の基礎調査では、脳卒中5症状すべてを正しく選択したものの割合は51%(介入地域51%、対照地域51%)であった。2012年10月より、栃木県下で包括的脳卒中啓発活動を実施しており、次年度その効果を評価する予定である。
3.院外心停止の一次救命処置の啓発手法の検討
 2011年度は舞鶴市においてランダムサンプルによるベースライン調査をおこなった。2012年度は地域の啓発活動を体系的に進めるために、舞鶴市(教育委員会、医療福祉部など)が中心となって、消防、医療機関等関係者等による準備会を発足させ、市主導による啓発活動を開始した。これまでに、約半数の小、中学校にて簡易講習会を開催するなど、学校への講習会の普及を進めている。
 また、“集う蘇生の心”ホームページでは、実際に蘇生された方や、蘇生に関わった方のインタビューを動画で掲載した。蘇生の講習会や、講演会等がホームページのアクセスを増加させた。
(考察)
 包括的地域啓発プログラムの効果が科学的に立証されれば、行政、医療・福祉機関、教育機関等との共同による都道府県規模で実施可能な市民啓発事業の汎用性の高いプロトタイプとなると考えられる。
 
結論
本研究では、糖尿病患者の受診率・アドヒアランス向上、効果的な脳卒中啓発手段、院外心停止の一次救命処置の啓発手法、それぞれにおいて対象にあわせた啓発方法を開発、検証している。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222038Z