健康づくり施策の効率性等の経済分析に関する研究

文献情報

文献番号
201222033A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくり施策の効率性等の経済分析に関する研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水嶋 春朔(横浜市立大学 大学院医学研究科疫学・公衆衛生学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 比佐 章一(横浜市立大学 大学院国際マネジメント研究科)
  • 島袋 充生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部心臓血管病態医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
OECD「肥満と予防の経済(Obesity and the Economics of Prevention; Fit not Fat)」報告書で扱われた分析手法、シミュレーションモデルに関する検討、我が国の健康づくり施策にフィットしたモデル開発を行うことを目的としている。
研究方法
同報告書内容および関連資料を詳細に検討することで(1)第6章「介入の影響」で扱われた介入方法の分析手法に関する検討 (2)DALY(Disability-adjusted Life Year, 障害調整生存年)の有効性の検討 (3)総務省の「家計調査データ」をもとに、経済学的検証 (4)国民健康栄養調査平成19年を現状値として、30年後までの糖尿病有病者数の将来予測を行うリスク因子のうちBMI (Body Mass Index)の変化を考慮して、糖尿病有病者数の将来予測を行う比較的簡便な方法を検討 (5)沖縄県の自治体国民健康保険被保険者のコホートデータセットを用いた、肥満対策、糖尿病等の生活習慣病対策における経済的な指標についての検討を行った。
結果と考察
【結果】(1)第6章「介入の影響」で扱われた介入方法の検討:各介入方法の効果は、次の3つの観点から評価されている。1.個人の行動変容に関する効果をみる 2.カバー率(Coverage)を考慮する 3.安定した状態に達するまでに要する時間を考慮する。(2)DALY(Disability-adjusted Life Year, 障害調整生存年)の有効性の検討:DALYはQALY(Quality-adjusted Life Year, 質調整生存年)やHALE(Health Life Expectancy, 健康寿命)とともに、健康統合指標の一つであるが、この健康統合指標は死亡率のように致死的な疾病やリスク因子のみを過大に評価するのではなく、生活の質(Quality of Life, QOL)に大きな影響を与える疾病やリスク因子も同等の比較ができることが大きな特徴の一つと言える。(3)総務省の「家計調査データ」をもとに、家計の食品に対する価格弾力性を求め、生活習慣病に対する補助金・課税政策が、どの程度、人々の消費量を増加・減少させるかに関する経済学的検証を行った。(4)国民健康・栄養調査データを用いた健康づくり施策の効果分析:性年齢階級別有病率が将来も維持された場合、高齢者の増加に伴って糖尿病有病者数は平成34年に約1000万人となり、以後はほぼ1000万人で推移する。ただし、人口が減少するため有病率は増加を続ける。平均BMIが男性+0.05/年、女性+0.03/年とした場合、平成26年に1000万人を超え、以後1100万人程度まで増加する。この簡便法は、リスク因子の変化の様々なシナリオを設定し、健康づくり施策の目標設定と効果予測に役立つことが期待される。(5)沖縄県の自治体国民健康保険被保険者のコホートデータセットを用いた、肥満対策、糖尿病等の生活習慣病対策における経済的な指標についての検討:沖縄県の自治体国民健康保険被保険者のコホート(2008年度より特定健診データとレセプトデータを突合済み)のデータセットを用いて、2006-2008年に特定健診受診した40-74才、30942名が対象とし、BMI による肥満度分類により年間医療費を検討したところ、普通体重、肥満1度、2度、3-4度(男性のみ)では年齢とともに医療費が増大した。男性での増大が女性よりも大であった。
【考察】同報告書における各リスク因子のレベル別に、好ましいレベルへの行動変容の効果、次のリスク因子への移行の確率の低減(罹患率の低下)に対する効果をエビデンスの主要ソースを基に推計を行い、各介入方法の効果を評価している。我が国の保健事業の評価モデルを構築するには、コホート研究を中心とした疫学調査研究データから、「性・年齢階級別」「社会経済的状態別」「それぞれのリスク要因のレベルの分布」「慢性疾患の有病率、罹患率、相対リスク、致命率」などをモデルに入れて関係性の全体を把握する必要がある。
結論
同報告書で提示された慢性疾患予防モデル(The Chronic Disease Prevention Model)では、3つの主要カテゴリー(1.健康教育・健康増進介入、2.規制および 財政措置、3.一次医療ベースの介入)に分けられるこれら9種類の介入(学校保健、職域保健、マスメディアキャンペーン、税制措置、食品広告自主規制、食品広告規制、食品成分等表示、医師による指導、医師と栄養士による指導)を対象に、WHOと共同開発した数学モデルに基づく経済分析を行い、9種類の健康介入が個人の健康関連行動、肥満、その他の慢性疾患リスク因子に及ぼす影響に関して評価している。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222033Z