保健指導実施者の技術の向上を図るための教育方法の開発

文献情報

文献番号
201222029A
報告書区分
総括
研究課題名
保健指導実施者の技術の向上を図るための教育方法の開発
課題番号
H22-循環器等(生習)-若手-022
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小出 恵子(岡山大学? 大学院保健学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 草野 恵美子(大阪医科大学 看護学部)
  • 小野 美穂(川崎医療福祉大学 医療福祉大学)
  • 北脇 知己(岡山大学? 大学院保健学研究科 )
  • 山崎 光洋(岡山大学 教師教育開発センター)
  • 猫田泰敏(首都大学東京大学院 人間健康科学研究科)
  • 岡本 玲子(岡山大学? 大学院保健学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、保健指導技術の自己評価・他者評価の結果をもとに、研究班が作成した「保健指導技術向上プログラム」の介入効果について検討することである。
研究方法
研究デザインは、2群事前・事後テストの準実験デザインとした。対象は特定保健指導に従事している経験年数10年以下の保健師であり、2群間の割り付けはグループマッチングを行った。プログラムは、保健師を対象とした教育プログラムの先行研究を参考に、リフレクションを理論的基盤として作成した。当プログラムは、おおよそ3カ月間に4回(計16時間)の講義・演習から構成されている。具体的には、保健指導技術とリフレクションに関する講義、模擬事例検討・ロールプレイ等のグループワークと学習成果の発表であり、研究実施期間は平成24年8月~12月であった。
保健指導技術の評価方法は、模擬患者との初回面接を想定したロールプレイ後に実施した自記式質問紙調査である。調査内容は、先行研究をもとに作成した保健指導における技術項目(全17項目、0‐85)を5段階評定で尋ねた。技術項目は6つの 下位項目(A関係をつくる、Bアセスメントする、C意欲・関心を高める、D健康課題と生活実態をつなぐ、E生活実態と行動計画をつなぐ、F自信を高める)で構成されている。実施時期はベースライン、介入直後、介入3か月後である。
分析方法は全項目、下位項目について、①時期ごとの2群間の平均値を比較するために、平均値を算出し検定を行った。次に、3か月後とベースラインにおける2群間の平均値の変化を明らかにするために、平均値の差を算出し検定を行った。さらに、属性による平均値の違いを検討するために、各属性を因子として多元配置の分散分析を行った。有意水準を0.05とした。
参加者全員に研究目的、個人情報の保護、参加協力の自由等の倫理的配慮について文書を用いて説明し、同意書に署名を得た。なお、本研究は,所属大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
参加者は介入群、対照群ともに11名であり、性別、経験年数、所属等2群間の属性に有意差はみられなかった。自己評価の3か月後からベースラインの平均値の差は、介入群より対照群の方が高く、介入群はマイナスの数値であった。自己評価、他者評価ともに全項目、下位項目の平均値は2群間に有意な差はみられなかった。多元配置の分散分析の結果、自己評価ではBアセスメントする、C関心・意欲を高める項目において対照群が有意に高く、他者評価では有意差はみられなかった。自己評価ではベースラインと比較して3か月後の平均値は、介入群では低くなっており、対照群では高くなっていた。これらの要因として、リフレクションを学び、実践した介入群では、より客観的に実践を振り返ることにつながった可能性が挙げられる。また、プログラムの実施期間が短かったため、ロールプレイでは学びを実践に活かすことの難しさに直面した可能性もある。今後、プログラム内容の検討をすすめるとともに、対象者を増やし、プログラムの効果を検討する必要がある。
結論
以上より、本プログラムの効果として、リフレクションに継続的に取り組んだことが挙げられる。一方、実施できるまでには至らず、プログラムの実施期間等について今後改良することも必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201222029B
報告書区分
総合
研究課題名
保健指導実施者の技術の向上を図るための教育方法の開発
課題番号
H22-循環器等(生習)-若手-022
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小出 恵子(岡山大学? 大学院保健学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 草野 恵美子(大阪医科大学 看護学部)
  • 小野 美穂(川崎医療福祉大学 医療福祉学部)
  • 北脇 知己(岡山大学 大学院保健学研究科)
  • 山崎 光洋(岡山大学 教師教育開発センター)
  • 猫田 泰敏(首都大学東京 大学院人間健康科学研究科)
  • 岡本 玲子(岡山大学 大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、対象者のアドヒアランスを重視した生活習慣病予防のための行動変容を促す保健指導技術を明らかにし、それに基づいて保健師の保健指導技術の向上を図るための教育方法を開発することである。
研究方法
(1) 技術項目の作成
 行動変容を促す保健指導において、保健師に必要と考えられる技術項目を検討するために、行動変容理論等の文献検討、保健師を対象としたファーカスグループインタビューを実施し技術項目(案)(17項目)を作成した。これらの項目について保健指導の専門家集団と考えられる産業、行政の保健師に内容について同意を得るためにデルファイ法による質問紙調査を2回実施した。

(2) 教育プログラムの開発
到達目標は、研究班が作成した「保健指導技術項目」を意識して実践できることである。そのために、保健師を対象とした教育プログラムの先行研究を参考に、リフレクションを理論的基盤としてプログラムを作成した。当プログラムは、おおよそ3カ月間に4回(計10時間)の講義・演習から構成され、具体的には、保健指導技術とリフレクションに関する講義、模擬事例検討・ロールプレイ(グループワーク)と学習成果の発表である。ロールプレイは、模擬患者を活用した。
プログラムは行政・産業に勤務する保健師10名を対象に、1群事前・事後テストの研究デザインで試行した。評価方法は、技術項目(17項目)ごとの習得度を6段階評定で尋ねた自記式質問紙調査をベースライン、介入直後、3か月後に実施した。

(3) 教育プログラムの効果の検討
研究デザインは、2群事前・事後テストの準実験デザインとした。対象は特定保健指導に従事している経験年数10年以下の保健師であり、2群間の割り付けはグループマッチングを行った。プログラムは、おおよそ3カ月間に4回(計16時間)の講義・演習から構成されており、研究実施期間は平成24年8月~12月であった。
保健指導技術の評価方法は、模擬患者との初回面接を想定したロールプレイ後に実施した自記式質問紙調査である。調査内容は、保健指導における技術項目(全17項目、0‐85)を5段階評定で尋ねた。実施時期はベースライン、介入直後、介入3か月後である。
結果と考察
(1) 技術項目の作成
対象者数は1回目115人(70施設),2回目119人(71施設)であった。質問紙の回収率は1回目64.3%(n=74),2回目63.0%(n=75)であり,全てを有効回答とした。行動変容を促す保健指導における技術項目として、6項目(中項目17項目)が明らかになった。大項目は,【Ⅰ対象者と関係をつくる技術】,【Ⅱ対象者をアセスメントする技術】,【Ⅲ行動変容に対する関心・意欲を高める技術】,【Ⅳ健康課題と生活実態をつなぐ技術】,【Ⅴ生活実態と行動目標をつなぐ技術】,【Ⅵ行動変容に対する自信を高める技術】であった。

(2) 教育プログラムの開発
プログラム終了者は10人であり、全員女性であった.勤務先は市町村8人(80.0%)、病院2人(20.0%)であり、経験年数は5年未満4人(40.0%)、5~15年未満3人(30.0%)、15~25年未満1人(10.0%)、25年以上2人(20.0%)であった。技術項目の習得度は、全ての項目でベースラインと比較して介入直後、3か月後は上昇し、11項目で有意差がみられた。本プログラムは、合計10時間という短い時間であったが、技術項目の習得度は、介入終了後3か月が経過しても、介入前と比較して向上しており、一定の効果がみられた。これらの結果より、プログラムを改良した。

(3) 教育プログラムの効果の検討
参加者は介入群、対照群ともに11名であり、2群間の属性に有意差はみられなかった。自己評価の3か月後からベースラインの平均値の差は、介入群より対照群の方が高く、介入群はマイナスの数値であった。自己評価、他者評価ともに全項目、下位項目の平均値は2群間に有意な差はみられなかった。多元配置の分散分析の結果、自己評価ではBアセスメントする、C関心・意欲を高める項目において対照群が有意に高く、他者評価では有意差はみられなかった。これらの要因として、リフレクションを学び、実践した介入群では、より客観的に実践を振り返ることにつながった可能性が挙げられる。また、プログラムの実施期間が短かったため、ロールプレイでは学びを実践に活かすことの難しさに直面した可能性もある。今後、プログラム内容の検討をすすめるとともに、対象者を増やし、プログラムの効果を検討する必要がある。
結論
本研究では、行動変容を促す保健指導における技術項目を明らかにし、それを実践するための教育プログラムを開発した。教育プログラムについては、今後も改良し、効果を検証するとともに、普及を図ることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201222029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究によって得られた成果として、特定保健指導における保健指導技術を高めるための教育プログラムを開発した点が挙げられる。プログラムの内容としては、実践の振り返りと事例検討・ロールプレイを行うことによって、保健指導を根拠に基づいて実施し、経験から学ぶ力(リフレクション)を高めるものである。このプログラムは、既存の特定保健指導の研修と比べて、「いかに考えながら実践するか、実践から何を学ぶのか」という保健指導技術の向上には欠かせない思考プロセスを習得するものである。
臨床的観点からの成果
保健指導技術の評価方法として、ロールプレイによる自己評価、他者評価を行う方法を実施し、提案した点が挙げられる。本研究では、他者評価として模擬患者を活用したが、今後先輩保健師等の専門職同士による他者評価を取り入れることも必要である。
ガイドライン等の開発
行動変容を促す保健指導における保健師の技術項目を体系化したことによって、今後評価指標として活用可能である。また、これらは、保健指導技術の評価尺度の開発にも貢献できる。
その他行政的観点からの成果
保健指導技術を高めるためには、一定の研修期間と研修体制の必要性が示唆された。
その他のインパクト
今回開発したプログラムをもとに、平成25年度、26年度に岡山県看護協会の保健指導ミーティングにおいて研修会を実施した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小出恵子,岡本玲子,草野恵美子他
生活習慣病予防のための行動変容を促す初回保健指導における保健師のコアとなる技術項目
四国公衆衛生雑誌 , 59 (1) , 103-113  (2014)
原著論文2
小出恵子,岡本玲子,猫田泰敏他
保健師を対象としたリフレクションに基づく保健指導技術向上プログラムの効果
日本地域看護学会誌 , 17 (3) , 4-13  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
2017-06-23

収支報告書

文献番号
201222029Z