更年期障害に対する加味逍遥散のプラセボ対照二重盲検群間比較試験

文献情報

文献番号
201222022A
報告書区分
総括
研究課題名
更年期障害に対する加味逍遥散のプラセボ対照二重盲検群間比較試験
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水沼 英樹(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 泰典(慶應義塾大学 医学部)
  • 高松 潔(東京歯科大学 市川総合病院)
  • 櫻木 範明(北海道大学 医学部)
  • 苛原 稔(徳島大学 医学部)
  • 久保田 俊郎(東京医科歯科大学)
  • 林 邦彦(群馬大学 医学部保健学科)
  • 加瀬 義夫(株式会社ツムラ ツムラ研究所)
  • 武田 卓(近畿大学 東洋医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多施設共同研究にて二重盲検ランダム化比較研究で加味逍遥散の更年期障害に対する効果を確認すること。継続研究として3年間をかけて集積して来た結果を分析する。
研究方法
ほてり、不眠、頭痛、神経症状などを主訴に受診し、更年期障害と診断された40歳以上60歳以下の症例で、重篤な合併疾患がなく、かつ投与前4週以内にホルモン補充療法、漢方療法などの既往の無い症例を対象候補とした。このうち、文章にて同意が得られ、かつSelf-rating Depression Scale(SDS)を施行し61点以下の者を対象とした。
対象者は中央に登録され、2週間の投与前観察期間をおいた後に無作為に加味逍遥散投与群とプラセボ投与群に割り当てた。薬剤は1日7.5gを3回に分割し食前または食間に8週間服用させ、投与開始前、投与後4週および8週時に、SDS、State-Trait Anxiety Inventory(STAI)、SF-36 および日本産科婦人科学会の更年期症状評価表を用いて評価した。なお、試験期間中に評価判定に影響を与えると判断される薬剤(性ステロイドホルモン、抗不安剤、抗うつ剤、SSRI、SNRI、自律神経調整薬、カリジノゲナーゼ製剤、カンゾウ含有製剤、グリチルリチン酸を含む製剤など)の投与は原則禁止とした。
また、投与開始前の成績を供変量とし、加味逍遥散群かプラセボ群かを要因として, 投与後の成績を目的変数とする供分散分析を行い、さらに、両群の投与開始前、開始後の成績の差(変化量)および変化率の要約統計量を求め、実薬群とプラセボ群の比較をt検定で行なった。安全性の検討Fisher直接確率法にて検討した。P<0.05を有意差ありとした。
結果と考察
本試験に対し205名が登録され、101名が加味逍遥散群に、残る104名がプラセボ投与群に割り付けられた。両群間において、年齢、身長、体重、血圧、月経状況、出産回数、子宮摘出の割合、卵巣摘出の割合、飲酒習慣、喫煙習慣等において有意差は見られなかった。
 対象者における投与前のホットフラッシュの平均回数は2.4回/日であった。加味逍遥散とプラセボ投与群のいずれの群でも通院期間に平行して回数の減少が観察されたが、減少効果において両群間での差はみられなかった。
 プラセボ群および加味逍遥散投与群の治療開始前のSDS値はそれぞれ45.1±0.8、43.2±0.8と両群間で有意な差を認めなかった。いずれの群でも、投与開始後にSDS値の有意な減少が観察されたが、SDSの減少値には両群間で有意の差を認めなかった。また、投与前のSDSの程度、対象者の年齢、月経の有無、閉経後年数およびホットフラッシュの有無などの背景因子もSDS値の低下に有意な影響を与えていなかった。
 治療開始前のSTAIによる状態不安と特性不安値、およびQOLを指標であるSF-36においても、そそれぞれの改善度において、加味逍遥散とプラセボ群で有意差は見られなかった。
結論
加味逍遥散は更年期障害によるうつ状態、不安状態およびQOLに対し、プラセボ以上の効果を示さない。今後は、各症状ごとの効果を検証する目的で、各症状に焦点を当てての検討が必要である

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201222022B
報告書区分
総合
研究課題名
更年期障害に対する加味逍遥散のプラセボ対照二重盲検群間比較試験
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
水沼 英樹(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉村 泰典(慶應義塾大学 医学部)
  • 高松 潔(東京歯科大学 市川総合病院)
  • 櫻木 範明(北海道大学 医学部)
  • 苛原 稔(徳島大学 医学部)
  • 久保田 俊郎(東京医科歯科大学)
  • 林 邦彦(群馬大学 医学部保健学科)
  • 加瀬 義夫(株式会社ツムラ ツムラ研究所)
  • 武田 卓(近畿大学 東洋医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多種多様な症状の出現を特徴とする更年期障害に対し加味逍遥散の効果を二重盲検ランダム化比較研究で確認すること。
研究方法
ほてり、不眠、頭痛、神経症状などを主訴に受診し、更年期障害と診断された40歳以上60歳以下の症例で、重篤な合併疾患がなく、かつ投与前4週以内にホルモン補充療法、漢方療法などの既往の無い症例を対象候補とした。このうち、文章にて同意が得られ、かつSelf-rating Depression Scale(SDS)を施行し61点以下の者を対象とした。
対象者は中央に登録され、2週間の投与前観察期間をおいた後に無作為に加味逍遥散投与群とプラセボ投与群に割り当てた。薬剤は1日7.5gを3回に分割し食前または食間に服用させた。投与期間は8週間とし、投与開始前、投与後4週および8週時に、SDS、State-Trait Anxiety Inventory(STAI)、SF-36 および日本産科婦人科学会の更年期症状評価表を用いて評価した。なお、試験期間中に評価判定に影響を与えると判断される薬剤(性ステロイドホルモン、抗不安剤、抗うつ剤、SSRI、SNRI、自律神経調整薬、カリジノゲナーゼ製剤、カンゾウ含有製剤、グリチルリチン酸を含む製剤など)の投与は原則禁止とした。
また、投与開始前の成績を供変量とし、加味逍遥散群かプラセボ群かを要因として, 投与後の成績を目的変数とする供分散分析を行い、さらに、両群の投与開始前、開始後の成績の差(変化量)および変化率の要約統計量を求め、実薬群とプラセボ群の比較をt検定で行なった。安全性の検討Fisher直接確率法にて検討した。P<0.05を有意差ありとした。
結果と考察
本試験に対し205名が登録され、101名が加味逍遥散群に、残る104名がプラセボ投与群に割り付けられた。両群間において、年齢、身長、体重、血圧、月経状況、出産回数、子宮摘出の割合、卵巣摘出の割合、飲酒習慣、喫煙習慣等において有意差は見られなかった。
 対象者における投与前のホットフラッシュの平均回数は2.4回/日であった。加味逍遥散とプラセボ投与群のいずれの群でも通院期間に平行して回数の減少が観察されたが、減少効果において両群間での差はみられなかった。
 プラセボ群および加味逍遥散投与群の治療開始前のSDS値はそれぞれ45.1±0.8、43.2±0.8と両群間で有意な差を認めなかった。いずれの群でも、投与開始後にSDS値の有意な減少が観察されたが、SDSの減少値には両群間で有意の差を認めなかった。また、投与前のSDSの程度、対象者の年齢、月経の有無、閉経後年数およびホットフラッシュの有無などの背景因子もSDS値の低下に有意な影響を与えていなかった。
 治療開始前のSTAIによる状態不安と特性不安値、およびQOLを指標であるSF-36においても、そそれぞれの改善度において、加味逍遥散とプラセボ群で有意差は見られなかった。
結論
加味逍遥散は更年期障害によるうつ状態、不安状態およびQOLに対し、プラセボ以上の効果を示さない。今後は、各症状ごとの効果を検証する目的で、各症状に焦点を当てての検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201222022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は更年期障害の治療薬としての加味逍遥散の効果を科学的に検証した初めての試験である。本試験では、薬剤の評価法としてSDS、STAI、SF-36など客観的な検査法を用いたが、その結果、これらで検出された症状はプラセボ効果でかなり改善する事が示された。また、加味逍遥散のこれらの指標に対する効果はプラセボ効果で説明できる範囲にとどまり、更年期障害の治療薬としての加味逍遥散の位置づけや、更年期障害の治療薬の試験法にも大きな影響をもたらすと考えられる。
臨床的観点からの成果
本研究は更年期障害の治療薬としての加味逍遥散の効果を科学的に検証した初めての試験である。本試験では、薬剤の評価法としてSDS、STAI、SF-36など客観的な検査法を用いたが、その結果、これらで検出された症状はプラセボ効果でかなり改善する事が示された。また、加味逍遥散のこれらの指標に対する効果はプラセボ効果で説明できる範囲にとどまり、更年期障害の治療薬としての加味逍遥散の位置づけや、更年期障害の治療薬の試験法にも大きな影響をもたらすと考えられる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
女性にとり更年期障害は関心の高い疾患であり、また、漢方薬への期待も少なくない。今回の試験はマスコミでも取り上げられ、その結果に期待が寄せられていた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222022Z