虚血性心疾患の疾病管理プログラムとしての外来型心臓リハビリテーションの効果と普及方策に関する研究

文献情報

文献番号
201222015A
報告書区分
総括
研究課題名
虚血性心疾患の疾病管理プログラムとしての外来型心臓リハビリテーションの効果と普及方策に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 葉一(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環器病リハビリテーション部/心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 百村伸一(自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科)
  • 野原隆司((公財)田附興風会医学研究所北野病院心臓センター)
  • 代田浩之(順天堂大学医学部付属順天堂医院循環器内科)
  • 増田 卓(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)
  • 上月正博(東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学国際医療センター心臓リハビリテーション科)
  • 上嶋健治(京都大学大学院医学研究科EBM研究センター)
  • 折口秀樹(九州厚生年金病院内科)
  • 安達 仁(群馬県立心臓血管センター心臓リハビリテーション部)
  • 長山雅俊((公財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器内科)
  • 大宮一人(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
  • 西崎真里(独立行政法人国立病院機構岡山医療センターリハビリテーション科)
  • 木村 穣(関西医科大学健康科学)
  • 安 隆則(琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学)
  • 鶴川俊洋(独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センターリハビリテーション科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
虚血性心疾患に対する心臓リハビリテーション(心臓リハ)は運動耐容能、生活の質(QOL)、および長期予後に対する有効性が確立されている上、欧米では再入院リスクの高い虚血性心疾患・慢性心不全に対して「外来心臓リハ」が退院後の疾病管理(disease management)プログラムとして2次予防ガイドライン目標の達成・維持や再入院減少に有効であることが示され注目されている。しかしわが国では、退院後の疾病管理プログラムとなるべき外来心臓リハの普及は著しく遅れている。本研究では、わが国におけるこのような現状を踏まえ、再入院リスクの高い虚血性心疾患・慢性心不全患者に対する疾病管理プログラムとしての外来心臓リハの効果を多施設で検証するとともに、わが国において外来心臓リハが虚血性心疾患・慢性心不全患者に対する疾病管理プログラムとして普及するための方策を明らかにすることを目的とする。
研究方法
第3年度である平成24年度は、班全体研究として、1)虚血性心疾患に対する外来型心臓リハの有効性に関する多施設前向き登録研究(J-REHAB前向き)、2)冠動脈バイパス術後外来心臓リハの効果に関する多施設後ろ向き調査(J-REHAB CABG)、3) ICD/CRT-D後の外来心臓リハビリの効果に関する多施設後ろ向き調査(J-REHAB ICD/CRT-D後ろ向き)、4)冠動脈インターベンション(PCI)後外来心臓リハの効果に関する前向き無作為割り付け試験(J-REHAB PCI)の4研究を、個別研究として、慢性心不全に対する外来心臓リハビリの効果に関する研究、を実施した。
結果と考察
1)「J-REHAB前向き」
 多施設前向き登録研究において過去最多の1060例を登録した。暫定解析において、外来心臓リハ施行群では非施行群に比べ、運動耐容能改善率が大きく、1年後までの心事故発生率が低率であり、外来心臓リハ施行による長期予後改善効果が示された。
2)「J-REHAB CABG」
 外来心臓リハ施行群240例では非施行群106例に比べ、3ヶ月後の運動耐容能改善率が大きく、心疾患による入院・虚血性心事故の発生率が低率であり、CABG術後の外来心臓リハ参加が長期予後改善に寄与することが初めて明らかになった。
3)「J-REHAB ICD/CRT-D後ろ向き」
 低心機能・致死的不整脈・低運動耐容能を有しICD/CRT-D植え込み術を受けた高リスク心不全患者149例に症候限界性心肺運動負荷試験・外来心臓リハを実施し、有害事象は無く、外来心臓リハ施行により運動耐容能改善を認めたことから、ICD/CRT-D装着症例における運動負荷試験および外来心臓リハが安全かつ有用であることが明らかになった。
4)「J-REHAB PCI」
 薬物溶出ステント(DES)を用いたPCI後患者に対する外来心臓リハの効果と安全性を検証することを目的として前向き無作為割付け試験を実施したが、登録数がいまだ目標に及んでいない。本試験は、今後参加施設を追加して研究助成期間終了後も継続する方針である。
5)「慢性心不全に対する外来心臓リハの効果に関する研究」
 外来心臓リハに参加した慢性心不全患者191例のうち、運動療法効果不良患者(Non-responder)が48例(25%)存在し、これらの患者に対する対策が必要であることが示された。
結論
第3年度である今年度は、班全体でJ-REHAB前向き症例登録を完了、J-REHAB CABGの追加解析、J-REHAB ICD/CRT-D後ろ向き調査を進め、J-REHAB PCI前向き無作為割り付け試験の症例組み込みを継続するとともに、慢性心不全に対する外来心臓リハの効果に関する個別研究を実施した。その結果、外来型心臓リハが虚血性心疾患およびCABG後患者の長期予後を改善すること、ICD・CRT-D後植え込み後患者の運動耐容能を安全に増加させること、慢性心不全患者の中に運動療法効果が不良であるNon-responder患者が存在し対策が必要であることをわが国において初めて明らかにした。本研究は、外来心臓リハという既存の多職種介入プログラムを虚血性心疾患や慢性心不全患者の退院後の疾病管理プログラムとして活用しその有効性を明らかにしたという点で画期的であり、その成果の社会的インパクトはきわめて大きいと言える。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201222015B
報告書区分
総合
研究課題名
虚血性心疾患の疾病管理プログラムとしての外来型心臓リハビリテーションの効果と普及方策に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 葉一(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環器病リハビリテーション部/心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 百村伸一(自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科)
  • 野原隆司((公財)田附興風会医学研究所北野病院心臓センター)
  • 代田浩之(順天堂大学医学部付属順天堂医院循環器内科)
  • 増田 卓(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)
  • 上月正博(東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学国際医療センター心臓リハビリテーション科)
  • 上嶋健治(京都大学大学院医学研究科EBM研究センター)
  • 折口秀樹(九州厚生年金病院内科)
  • 安達 仁(群馬県立心臓血管センター心臓リハビリテーション部)
  • 長山雅俊((公財)日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院循環器内科)
  • 大宮一人(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
  • 西﨑真里(独立行政法人国立病院機構岡山医療センターリハビリテーション科)
  • 木村 穣(関西医科大学健康科学)
  • 安 隆則(琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学)
  • 鶴川俊洋(独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センターリハビリテーション科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
退院後に外来で実施される心臓リハビリテーション(外来心臓リハ)は、運動耐容能・QOL・長期予後改善効果を有する上、再入院リスクの高い虚血性心疾患・慢性心不全に対する疾病管理プログラムとして注目されている。しかしわが国では、外来心臓リハの普及は著しく遅れている。本研究では、虚血性心疾患・慢性心不全患者に対する疾病管理プログラムとしての外来心臓リハの効果を多施設で検証するとともに、わが国において外来心臓リハが普及するための方策を明らかにすることを目的とする。
研究方法
班全体研究として、1)虚血性心疾患に対する外来型心臓リハの有効性に関する多施設前向き登録研究(J-REHAB前向き)、2)冠動脈バイパス術後外来心臓リハの効果に関する多施設後ろ向き調査(J-REHAB CABG)、3) ICD/CRT-D後の外来心臓リハビリの効果に関する多施設後ろ向き調査(J-REHAB ICD/CRT-D後ろ向き)、4)冠動脈インターベンション(PCI)後外来心臓リハの効果に関する前向き無作為割り付け試験(J-REHAB PCI)の4課題および個別研究を実施し、さらにわが国において外来心臓リハを普及させる方策の提言をまとめた。
結果と考察
1)「J-REHAB前向き」
 多施設前向き登録研究において過去最多の1060例を登録した。暫定解析において、外来心臓リハ施行群では非施行群に比べ、運動耐容能改善率が大きく、1年後までの心事故発生率が低率であり、外来心臓リハ施行による長期予後改善効果が示された。
2)「J-REHAB CABG」
 外来心臓リハ施行群240例では非施行群106例に比べ、3ヶ月後の運動耐容能改善率が大きく、心疾患による入院・虚血性心事故の発生率が低率であり、CABG術後の外来心臓リハ参加が長期予後改善に寄与することが初めて明らかになった。
3)「J-REHAB ICD/CRT-D後ろ向き」
 低心機能・致死的不整脈・低運動耐容能を有しICD/CRT-D植え込み術を受けた高リスク心不全患者149例に症候限界性心肺運動負荷試験・外来心臓リハを実施し、有害事象は無く、外来心臓リハ施行により運動耐容能改善を認めたことから、ICD/CRT-D装着症例における運動負荷試験および外来心臓リハが安全かつ有用であることが明らかになった。
4)「J-REHAB PCI」
 薬物溶出ステント(DES)を用いたPCI後患者に対する外来心臓リハの効果と安全性を検証することを目的として前向き無作為割付け試験を実施したが、登録数がいまだ目標に及んでいない。今後も参加施設を追加して研究助成期間終了後も継続する方針である。
5)「個別研究」
 ①わが国の外来心臓リハ実施率はPCI実施のHigh-volume施設でさえ31%に過ぎず、PCIの普及に比べ外来心臓リハの普及が遅れていること、②若年・再灌流成功・心機能良好の予後低リスクAMI患者は非低リスク患者に比べ複数冠危険因子保有率が高いが、このような予後低リスク患者でも外来心臓リハ積極参加により複数冠危険因子の改善が得られること、③左室駆出率と運動耐容能が高度に低下した重症心不全患者に対する外来心臓リハが安全かつ有効に運動耐容能を増加させ血中BNPを下降させること、④外来心臓リハに参加した慢性心不全患者191例のうち、運動療法効果不良患者(Non-responder)が25%存在し、これらの患者に対する対策が必要であること、などを示した。
6)「提言:わが国において虚血性心疾患の疾病管理プログラムとしての外来心臓リハを普及させるための方策」
 わが国において疾病管理プログラムとしての外来心臓リハを広く普及させるための方策として、1)心大血管リハ料の現行施設基準を緩和すること、2)心臓リハを組み込んだ地域連携パスを構築すること、3)一般市民および医療者に対する心臓リハの認知度を向上させること、4)医療サービスとしての心臓リハプログラムの利便性を向上させること、の4点が重要課題であることを提言した。
結論
3年の研究期間において班全体研究として、J-REHAB前向き症例登録、J-REHAB CABG解析、J-REHAB ICD/CRT-D後ろ向き調査および個別研究を完了し、外来型心臓リハが虚血性心疾患およびCABG後患者の長期予後を改善すること、ICD・CRT-D後植え込み後患者の運動耐容能を安全に増加させること、慢性心不全患者の外来心臓リハが運動耐容能改善に有効であることなどをわが国において初めて明らかにし、普及方策を提言した。本研究は、外来心臓リハという既存の多職種介入プログラムを虚血性心疾患や慢性心不全患者の退院後の疾病管理プログラムとして活用しその有効性を明らかにしたという点で画期的であり、その成果の社会的インパクトはきわめて大きいと言える。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201222015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
虚血性心疾患・慢性心不全患者に対する疾病管理プログラムとしての外来心臓リハビリテーション(リハ)の効果を多施設前向き登録研究および後ろ向き調査で検証した結果、約3ヶ月間の外来心臓リハ参加が虚血性心疾患および冠動脈バイパス術後患者の長期(1年以上)にわたる心事故率(心疾患入院率・虚血性心事故率)を減少させること、デバイス(ICD・CRT-D)植え込み後患者および慢性心不全患者の運動耐容能を安全に増加させることなどをわが国において初めて明らかにした。
臨床的観点からの成果
①わが国の外来心臓リハ実施率は、冠動脈インターベンション(PCI)多数実施施設でさえ31%と低く、普及が遅れていること、②若年・再灌流成功・心機能良好の予後低リスク急性心筋梗塞患者でも外来心臓リハ積極参加により複数冠危険因子の改善が得られること、③左室機能高度低下心不全患者に対する外来心臓リハが安全に運動耐容能を増加させ血中BNPを下降させること、④慢性心不全患者の中に運動療法効果不良患者(Non-responder)が存在し対策が必要であること、などを示した。
ガイドライン等の開発
日本循環器学会「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン (2012年改訂版)」(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nohara_h.pdf)に本研究の成果が採用された。
その他行政的観点からの成果
わが国において疾病管理プログラムとしての外来心臓リハを広く普及させるための方策として、1)心大血管リハ料の現行施設基準を緩和すること、2)心臓リハを組み込んだ地域連携パスを構築すること、3)一般市民および医療者に対する心臓リハの認知度を向上させること、4)医療サービスとしての心臓リハプログラムの利便性を向上させること、の4点が重要課題であることを提言した。
その他のインパクト
本研究は、外来心臓リハという既存の多職種介入プログラムを虚血性心疾患や慢性心不全患者の退院後の疾病管理プログラムとして活用しその有効性を明らかにしたという点で画期的であり、その成果の社会的インパクトはきわめて大きいと言える。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
31件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
25件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドラインに採用
その他成果(普及・啓発活動)
1件
市民講座

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222015Z