小児における脳死判定基準に関する研究

文献情報

文献番号
199800083A
報告書区分
総括
研究課題名
小児における脳死判定基準に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 一夫(杏林大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在のところ、厚生科学研究費特別研究事業脳死に関する研究班報告書「脳死の判定指針及び判定基準」(昭和60年)及び、「厚生省「脳死に関する研究班」による脳死判定基準の補遺」(いわゆる竹内基準)においては、6歳未満の者は脳死判定の対象とはされていないが、こうした事情に鑑み、本邦における臨床例の収集による検討と共に、海外における小児の脳死判定基準に関する知見も併せて研究し、日本における6歳未満の者の脳死判定基準について作成する事を目的とする。
研究方法
平成9年度の研究では国内の有識者による、検討会を数度重ね、外国の文献等も参考にしながら、昭和60年度厚生科学研究特別研究事業「脳死に関する研究」班による脳死判定基準(いわゆる竹内基準)を基に、次のような6歳未満の小児における脳死判定基準(案)を作成した。
脳死判定基準(案)
判定対象と除外例
(対象)
本判定基準は、6歳未満の小児を対象とする。
判定の対象は、器質的脳障害により深昏睡および無呼吸を来しており、脳死になりうる原疾患が確実に診断され、それに対する最大限の治療にもかかわらず回復の可能性が全くないと判断される症例とする。
従って、以下は除外例とする
(除外例)
1判定時、深昏睡および自発呼吸の消失の原因病態が不明の場合
2 判定時、深昏睡および自発呼吸の消失の原因病態が可逆性の可能性がある場合
低体温 体温摂氏32度以下
低血圧 年齢不相応の著しい低血圧
著しい低酸素血症 
筋弛緩薬や中枢神経抑制薬による深昏睡及び自発呼吸の消失の可能性がある場合
代謝障害、内分泌障害が深昏睡及び自発呼吸の消失の原因の場合
判定基準
1深昏睡
2瞳孔の両側の中等度以上の散大と固定
3脳幹反射の消失
4平坦脳波
5自発呼吸の消失
この5つの判定基準項目を、以下の通りの年齢に応じた一定の再評価間隔で確認し判定する。
但し、自発呼吸の消失の確認は、毎回の検査の最後に行う。
また、瞳孔の固定とは対光反射の消失のことを指す。
(再評価間隔(観察期間))
判定基準の全5項目を、以下の間隔で2回確認する。
生後28日以内の新生児   48時間
1歳未満の乳児       24時間
1~6歳未満の小児     12時間
判定医
臓器移植に直接関わらない医師が2名以上で判定する。
少なくとも1名以上は、小児の脳死状態に関して経験を積んだ専門医師とする。
他の1名は治療担当医であっても良い。 
(専門医師とは脳神経外科医、小児神経科医、救急医、麻酔・蘇生・集中治療医のいずれかであって、それぞれの学会専門医又は学会認定医の資格を持つ医師とする。)
補助検査  
聴性脳幹誘発反応、脳血管撮影、RI脳シンチグラム検査(SPECT等)、超音波ドプラ検査、Xe-CTなどは有用な情報を提供するが必須ではない。
本年度(平成10年度)の研究では、この案を用いて、全国の関連施設に対し、以下のような手順で小児の脳死症例の実態調査を実施した。
<調査の概要>
対象:全国1000以上の脳死患者が発生しうると思われる医療施設
方法:前向き調査   平成10年5月 1日~平成10年10月31日
後ろ向き調査  昭和63年4月31日~平成10年 4月31日
回収:郵送による
結果と考察
調査結果(平成11年3月31日までに回収されたもの)は以下の通りであった。
前向き症例 :  女性 54例   男性 78例   合計132例
後ろ向き症例:  女性  4例   男性  9例   合計 13例
収集された症例の中に、脳死判定基準を満たしながら、長期間(数十日以上)心停止に至らない例が報告されている。
結論
研究協力者からは、近年の医学的身体管理技術の向上により、脳死と診断されてからも、心停止に至る期間を従来よりも延長することは可能である旨も報告されたが、こうした脳死と診断されながら長期間(数十日以上)心停止に至らない例症例に関して慎重な検討を行っているところである。また、最終的な案の妥当性の検討や判定基準の確定は平成11年度の研究にて行う予定である。

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研究報告書(紙媒体)

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