歯科介入型の新たな口腔管理法の開発及び介入効果の検証等に関する研究

文献情報

文献番号
201222009A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科介入型の新たな口腔管理法の開発及び介入効果の検証等に関する研究
課題番号
H24-循環器等(歯)-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
菊谷 武(日本歯科大学 大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)
研究分担者(所属機関)
  • 向井 美惠(昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔衛生学部門)
  • 角 保徳(国立長寿医療研究センター 歯科口腔先進医療開発センター 歯科口腔先端診療開発部)
  • 窪木 拓男( 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 吉田 光由(広島市総合リハビリテーションセンター)
  • 岸本 裕充(兵庫医科大学歯科口腔外科)
  • 大野 友久(聖隷三方原病院リハビリテーション科)
  • 荒川 浩久(神奈川歯科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来の健常者を対象とした口腔衛生手法のみでは対応できない有病者などのSpecial Needsに合わせた口腔管理のあり方が求められ、歯科医療の特殊性を生かした歯科専門職の介入がどのような効果を現すかの検証が求められている。本研究では、急性期病院から回復期といった社会復帰に向けた生活の再構築場面での歯科の役割、維持期や終末期に至るまでの歯科の関わり方を確立することで、医療、介護場面での歯科介入による口腔衛生管理のあり方を検討する。初年度は急性期から回復期、維持期に至る各ステージでの対象者の口腔内実態調査ならびに歯科の介入について検討し、各ステージでのSpecial Needsを明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.介護保険施設34施設に入所している2,097名の調査対象者の基本情報について、入居高齢者の口腔機能のアセスメントを各施設の歯科衛生士が実施した。2.急性期病院における歯科医療者の口腔管理の介入がどの程度行われているか実態調査を実施した。3.急性期高齢者病院における整形外科領域手術に対する術前からの周術期口腔管理の介入による術後合併症の発生率の抑制効果について検討した。4.歯科介入型の新たな口腔管理法の開発及び介入効果の検証を行った。5.リハビリテーション病院に入院中の患者358名について、脳卒中患者とそれ以外患者(外傷後の脳血管障害患者や脊髄損傷、その他の骨折患者等)に分けて、各年代の両者の残存歯数を調査した。6.周管の啓発・普及に努めるため、研修会、著作活動を中心に進めた。また、RSTの対象患者の口腔の問題点を抽出し、年次別に集計した。7.日本全国の緩和ケア病棟およびがん拠点病院の、緩和ケア病棟に勤務する看護師責任者、緩和ケアチームの責任者、また緩和医療に関わっている歯科医師あるいは歯科衛生士、を対象にアンケートを行った。8.市の事業として集団フッ化物洗口プログラムを実施している保育所・幼稚園児、小学生・中学生5、283名を対象に質問紙調査ならびに学校歯科健康診断結果の集計をした。
結果と考察
1.嚥下障害を推測する項目および口腔内の汚染度を推測する項目が肺炎の発症と関連を示したことは、介護場面での支援の必要性のメルクマールになることが示された。2.医療現場における歯科介入の重要性が認識され、多くの診療科との連携が確立されつつあることが推察された。3.整形外科領域の手術において徹底した周術期口腔管理の実施が、手術成績や患者の予後・QOLに貢献できる可能性が示唆された。4.歯科系診療科等に紹介を行った医科系診療科等は、呼吸器外科手術および消化管外科の食道手術を対象とする周術期管理センター、耳鼻咽喉科、心臓血管外科、循環器内科等が多かった。5.脳卒中患者ではより早期に歯を喪失している可能性が示された。6.周管は、保険導入前から実施している施設以外には未だ認知度が低く、特に歯科を併設しない病院、一般歯科診療所への周管の啓発・普及に努めることが必須であると考えられた。7.緩和ケア病棟および緩和ケアチームと歯科の連携は、調査票を回収できた施設においては高率に連携が取れており、また実際に歯科介入のニードも非常に高かった。8.集団フッ化物洗口を実施することによって、フッ化物に頼りすぎるという心配、歯のフッ素症が生じるという心配、口内炎などの粘膜への副作用の心配は少ないことがわかった。
結論
1.嚥下障害を推測する項目および口腔内の汚染度を推測する項目が肺炎の発症と関連を示した。
2.口腔ケアクリニカルパスなどで医療連携をシステム化することは、チーム医療の推進のみならず、他職種のニーズに対する歯科介入プログラム開発の一助になるものと考えられる。
3.在宅歯科医療の拡充の第一歩として、周術期口腔管理施行患者の一次医療機関への逆紹介を行うとともに地域歯科医療を担う歯科専門職に対する啓蒙と患者や家族に対する教育によりシームレスな連携体制の構築を推進することが今後の課題である。
4.急性期病院で展開される医科治療において、歯科的介入のニーズが高いことを示した。
5.脳卒中患者ではより早期に歯を喪失している可能性が示された。
6.次年度以降の介入研究を円滑に進めるために、研修会、著作活動を中心に周管の啓発・普及に努め、「患者への説明用パンフレット」や医科歯科連携用の「診療情報提供書」の充実が重要であることがわかった。
7.緩和ケア病棟および緩和ケアチームと歯科の連携は、調査票を回収できた施設においては高率に連携が取れており、また実際に歯科介入のニードも非常に高い結果となった。
8.永久歯う蝕はフッ化物洗口の継続にともなって減少する傾向が示され、歯磨き習慣などがおろそかになる、歯のフッ素症が生じる、口内炎などの粘膜への副作用が生じるという有害性は認められていない。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222009Z