希少小児がんである肝芽腫に対する薬剤開発戦略としての国際共同臨床試験に関する研究

文献情報

文献番号
201221078A
報告書区分
総括
研究課題名
希少小児がんである肝芽腫に対する薬剤開発戦略としての国際共同臨床試験に関する研究
課題番号
H24-がん臨床-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
檜山 英三(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 臨床研究センター臨床研究推進室)
  • 大喜多 肇(国立成育医療研究センター研究所 小児血液腫瘍研究部分子病理研究室)
  • 渡邉 健一郎(京都大学 大学院医学研究科)
  • 越永 從道(日本大学 医学部小児外科)
  • 麦島 秀雄(日本大学 医学部小児科学系小児科学分野)
  • 牧本 敦(国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
  • 小川 淳(新潟県立がんセンター新潟病院 小児科)
  • 菊田 敦(福島県立医科大学附属病院 臨床腫瘍センター小児腫瘍部門)
  • 石田 裕二(静岡県立静岡がんセンター 小児科)
  • 岡本 康裕(鹿児島大学病院 小児診療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,233,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんを代表とした希少がんの分野では、症例登録の困難さ及び市場性の乏しさから、企業主導の薬剤開発は歴史的にも皆無に等しい。そのような中、小児疾患に対する薬剤開発推進のための法整備がなされた欧米では、活発に臨床試験が行われ、有効性エビデンスのある新薬が続出してドラッグラグ問題が顕性化している。本研究は、小児がん、特に難治群を対象とした新規薬剤開発を世界水準で推進するため、北米の小児がん研究グループであるChildren’s Oncology Group(COG)との国際共同臨床試験を実施し、我が国の小児がん患者を含む国際的エビデンスを創出し、我が国の薬事行政に貢献する事を目的として、そのモデルケースとして難治性(高リスク)肝芽腫に対する新たな治療戦略を含むCOG-AHEP0731第III相臨床試験に参画し、エビテンスを得ることを目的とした。
研究方法
本研究は、COGで2009年より開始されている肝芽腫全体を対象とした第III相試験(COG-AHEP0731)のうち、新たに改変された高リスク肝芽腫に対するビンクリスチン、イリノテカン、テムシロリムス(VIT)併用療法(Regimen H)を北米と日本との共同研究としてほぼ2年計画で実施し、その奏効率は最初の2コースで評価するものである。本年度は、日本小児固形がんの臨床試験グループの代表者及び早期治療開発臨床試験の実績ある施設の代表者で構成し、国際共同臨床試験の実施体制の整備を行い、同時に小児の国際共同臨床試験運用に関して検討を行った。特に、本邦からの症例登録数の検討と、適格症例の選別と集積法を検討し、具体的な本邦での国際共同臨床試験を実施する体制を構築した。また、症例のデータ管理等については、米国NCIが採用しているMediData Raveにて登録、管理するために、既に他のがん分野で国際共同臨床試験の調整業務実績がある北里大学臨床薬理研究所に国際臨床試験実施の調整業務およびデータ管理業務の遂行可能性を検討し、本国際共同研究の実施体制の構築を行うこととして準備を進め、臨床試験の制度対応については、再度医薬品医療機器総合機構(PMDA)に対する薬事戦略相談の対面面談を受けて、この体制で本国際共同研究の迅速な実施に対するための検討を行った。
結果と考察
当該研究班は、臨床試験の実績ある8施設をCOGに加盟させ、この国内8施設をCOG-Japanと定義した。臨床試験実施に関しては、症例登録、症例データの提出には、NCI標準のMediData Raveを用いるための協議を行い、COGのGroup手順書の中央モニタリング及び訪問監査を受け入れる検討を行った。診断時の正確なリスク分類と治療奏功率の判定に基いた試験を実施するための中央画像診断体制の整備として、匿名化したDICOM画像をオンラインのクラウドに蓄積し、オンタイムにレビューすることが可能なシステムを構築し、さらに、システムを英語版に修正し、米国の小児放射線医のレビューもオンラインで可能な体制とした。また、欧米と病理診断分類を統一すべく、欧米の病理医と協議し、小児肝腫瘍の国際共同新分類を策定し、病理スライドをスキャンしてクラウドにアップロードしてレビューを行う迅速な中央病理コンサルテーションシステムも構築した。
協議にて本VIT療法のテムシロリムスの投与量は35mg/m2に設定した。しかし、本邦では成人でのテムシロリムスの最大耐用量(MLD)が25mg/m2であり、日本人での忍容性が確認されていないため、PMDAの助言を受けて、日本人の小児の35mg/m2の第Ⅰ相試験を行い、安全性、忍容性を確認したうえで、この臨床試験に参画することが妥当と判断した。また、先行したVI(ビンクリスチン+イリノテカン)によるウィンドウ療法の解析結果から、本VIT療法の期待奏効率を80%とし、第一種の過誤を0.05とすると、42症例が必要であることから、脱落症例も含めて集積症例数は48例とした。また、奏功例の判定にはRECISTを用いることとし、さらに腫瘍マーカーであるAFPの低下率を併用して判定して、奏効率を算出する方法とした。
結論
実際の臨床試験の開始には至らなかったが、小児肝芽腫の高リスク群を対象とした新規薬剤開発を世界水準で推進するため、研究者主導ICH-GCP 適合臨床試験とそのプロジェクト遂行手順が理解され、米国COGとの国際共同臨床試験を実施しうる体制にほぼ到達し、今後グローバルなの国際共同研究遂行への活用が期待される。医療機関の拠点化と患者の集約化:必要な新規薬剤を用いた国際水準の臨床試験を実施することで難治患者の集約化が生じ、今回8施設は希少疾患に対する拠点のモデル施設となると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,202,000円
(2)補助金確定額
17,202,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,210,640円
人件費・謝金 1,862,933円
旅費 2,060,650円
その他 5,098,777円
間接経費 3,969,000円
合計 17,202,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
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