外来化学療法におけるチーム医療の整備と検証に関する研究

文献情報

文献番号

201221075A

報告書区分

総括

研究課題名

外来化学療法におけるチーム医療の整備と検証に関する研究

課題番号

H24-がん臨床・一般-012

研究年度

平成24(2012)年度

研究代表者(所属機関)

高橋　俊二(公益財団法人がん研究会有明病院総合腫瘍科)

研究分担者(所属機関)

伊藤　良則(公益財団法人がん研究会有明病院乳腺内科)
山内　照夫(聖路加国際病院腫瘍内科)
齊藤　光江(順天堂大学医学部順天堂医院乳腺科)
中根　実(武蔵野日赤病院腫瘍内科)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野がん臨床研究

研究開始年度

平成24(2012)年度

研究終了予定年度

平成25(2013)年度

研究費

4,921,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

現状の外来化学療法の問題点を明らかにし、がん患者のQOLと安全を更に改善するための方策を、がん拠点病院の中でも性格が異なる病院において模索し、外来化学療法の新たなチーム医療モデルを作成する。

研究方法

１．異なった性格を持つ拠点病院における外来化学療法における問題点を明らかにして改善策を検討する.
２．従来分子標的治療が存在しなかった領域における新規の分子標的治療薬の導入について、チーム医療による安全な治療導入とマニュアル作成を行う。
３．チーム医療改善の客観的な評価体系を作成し、東京都がん拠点病院、研修プログラム参加病院へのアンケート等により検討する。

結果と考察

１．異なった性格を持つ拠点病院における外来化学療法における問題点を、各病院の外来化学療法担当医を中心に提示して改善策を検討した。1)がん研究会有明病院：即時に対応が必要な有害事象（114件/年）は過敏反応83％、血管外漏出17％であった。多様化する治療に対応できる外来治療管理体制の検討が必要と考えられた。2)順天堂大学病院：乳癌化学療法ＡＣ療法施行時の支持療法に関する研究を行い、アプレピタント・デキサメサゾン・セロトニン受容体拮抗剤の3剤が有効であることを確認した。３）聖路加国際病院：安全性確保に対する人員確保と配置ならびに経口抗がん剤・分子標的薬管理の体制整備の必要性が指摘された。４）武蔵野赤十字病院：外来経口抗がん剤の服薬管理指針の有効性の指摘がなされた。
２．従来分子標的治療が存在しなかった領域（頭頚科、整形外科）における新規の分子標的治療薬の導入について、がん研有明病院の腫瘍内科医・各診療科医師、外来看護師、外来治療センター看護師、外来担当薬剤師による検討を行い、チーム医療による安全な治療導入とマニュアル作成を行った。
３．東京都がん拠点病院における外来がん薬物療法の実態をアンケート形式で詳細に調査し、化学療法全般の体制整備（説明同意、レジメン管理、無菌調製、専任看護師、点滴の薬剤指導等）は大半の施設で行われているが有害事象発生時の対応の統一・多職種での議論、経口化学療法におけるチーム医療体制（服薬指導、看護師の指導）等が不十分であることが明らかになった。平行してがん研究会における薬物療法研修プログラム参加病院へのアンケートを行い、同様の傾向が認められた（図７．８）。
４．化学療法のチーム医療について、医療の質を客観的に評価する指標としてコンセンサスによりQuality indicator (QI)を作成する試みを開始した。１）病院診療体制、２）レジメンの管理、３）看護師・薬剤師の関与、４）外来治療室の体制、５）治療時および有害事象のチェック体制・安全対応、６）患者のサポート体制、について各4-8項目のQI指標を作成し、またアウトカムとしては１）安全、２）効果、３）患者満足度、精神状態について作成し、東京都がん拠点病院へのアンケートによる検討を開始した。　
状況の異なるがん拠点病院間で議論することにより、種々の問題点が指摘され、QIなど、病院の状況に応じたチーム医療の解決策が提示できると考えられた。

結論

新たなチーム医療モデルを作成できる可能性が示された。さらなる検討が必要である。