がん登録からみたがん診療ガイドラインの普及効果に関する研究-診療動向と治療成績の変化-

文献情報

文献番号
201221071A
報告書区分
総括
研究課題名
がん登録からみたがん診療ガイドラインの普及効果に関する研究-診療動向と治療成績の変化-
課題番号
H24-がん臨床-指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
平田 公一(札幌医科大学 医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 )
研究分担者(所属機関)
  • 石岡 千加史(東北大学加齢医学研究所)
  • 今村 正之(関西電力病院)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学医学部内分泌外科)
  • 沖田 憲司(札幌医科大学医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 )
  • 加賀美 芳和(昭和大学医学部放射線医学)
  • 片渕 秀隆(熊本大学大学院生命科学研究部産婦人科学分野)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学医学部外科学)
  • 桑野 博行(群馬大学大学院病態腫瘍制御学講座)
  • 國土 典宏(東京大学医学部医学系研究科・肝胆膵外科・人工臓器移植外科分野)
  • 後藤 満一(福島県立医科大学医学部臓器再生外科学講座)
  • 佐伯 俊昭(埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院腫瘍外科学)
  • 中村 清吾(昭和大学医学部乳腺外科)
  • 原 勲(和歌山県立医科大学泌尿器科)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 古畑 智久(札幌医科大学医学部 消化器・総合、乳腺・内分泌外科 )
  • 三木 恒治(京都府立医科大学大学院泌尿器科学)
  • 宮崎 勝(千葉大学大学院大学院医学研究院・臓器制御外科学)
  • 山口 幸二(産業医科大学第一外科)
  • 山口 俊晴(がん研究会有明病院)
  • 横井 香平(名古屋大学大学院医学系研究科・病態外科学講座呼吸器外科学)
  • 渡邉 聡明(東京大学大学院医学系研究科・腫瘍外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
20,261,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、がん診療ガイドライン普及の観点からがん診療の基本的データベースとなる臓器・組織がん登録の推進とそのデータの質の向上にどのような方法の可能性がありうるのかについて検討し、がん登録によりそのデータベースを応用することにより医療の質の向上、がん診療ガイドラインの普及とそのことによる診療動向の変化と治療成績の変化に関し、分析的研究へとつなげ、その結果として本邦におけるがん診療の質の向上に寄与する体制が提案できることを目的とする。特にガイドライン作成の責を負っている学術団体内の代表的立場にある分担研究者により本研究組織を構成し、各々の団体の考え方を当該研究へ反映させ、実務的に発展させていくことを原則として展開させていくことを目的とする。
研究方法
[A]がん診療ガイドライン普及の検証
・ガイドライン普及に関する検証項目を決定し、各ガイドライン間における共通項目と専門別項目に分ける。後者については臓器・組織癌種別の個別決定を探る。・学術団体が主となって発刊したガイドラインの普及状況を団体独自のシステムを利用して、その普及の程度を把握する。また、他に普及の程度を適切に表現する手法がありうるかを提案する。
[B]臓器・組織がん登録状況の課題とその解決策および登録推進
・現状のがん登録について、がん腫別に把握するとともに、今後の登録高率化を図る上で何が制限的要因となっているのかを明確にし、その対策の可能性を探る。・がん登録が高率に成されている領域の背景要因を知り、その手法をがん登録促進因子として抽出し、広く応用可能か否かを探る。・各学術団体別に、がん登録率向上をどのように発展させるべきかの考えを提示し、それぞれのもつ特性を生かし推進策を提示するとともに可能であればその実践を試みる
[C]臓器・組織がん診療動向の変化
・発刊されている診療ガイドラインの推奨内容と臨床現場での実際に実施されている臨床内容の一致・不一致を確認する方法論を探り、可能であればそれを試行する。・診療動向の変化の有無を確認する対象条件を一定程度定め、分担研究者間でその内容について検討し、合意形成が可能か否かを探る。
[D]臓器・組織がん診療ガイドライン推奨内容の遵守行為と変差行為後のアウトカム向上に関する研究
・ガイドライン推奨医行為とアウトカムに関する現状を把握する。・不遵守医療行為となる事由とその際の診療行為決定に関する背景因子について解析する。・医療行為後のアウトカム把握についての現状での課題点を明確にする。
結果と考察
本年度は、各領域における臓器がん登録の現状および診療ガイドラインへのフィードバックの在り方に関する研究を行った。臓器がん登録は各領域ごとに行われており、一部領域においては非常に精度の高いものとなっており国際的にも評価を得ているが、全体としては、登録率の低さ、個人情報の扱い、地域がん登録や院内がん登録やNCDなどの他の登録事業との重複などの問題点が指摘され、これらの問題を解決するためには、法的整備とその支援策が必要であるとの意見が多くみられた。また、診療ガイドラインへのフィードバックに関しては、前述に示したような課題から、現状ではアウトカム指標として臓器がん登録を活用することは困難であるが、プロセス指標としてQuality Indicator(QI)を用いた診療動向調査が一部領域で行われ、その有用性が享受されている。他の領域でも同様の研究が開始されることが望ましいとの結論に至った。

結論
がん登録とがん診療ガイドラインの関連に関し、米国では、プロセス指標として、公的機関や学術団体が作成したQIによるリアルタイムな診療内容アセスメントと診療動向調査が普及している。アウトカム指標として、NCIのSEER programに代表される比較的大規模ながん登録のレジストリ体制が存在し、得られた良質なデータは、大規模RCTの結果と共にガイドラインの推奨における重要な根拠となっており、ガイドラインと診療動向調査とアウトカム調査が密接にリンクしている。英国においても、Quality Outcome and Framework (QOF)制度により、診療プロセス指標と診療報酬を連動させるなど、欧米においては、診療動向やアウトカムのフィードバック体制が確立されつつある。本邦においては、QIやQOFの基礎をなす「標準治療」を定義する診療ガイドラインを各学術団体が作成しており、詳細なアウトカム調査である臓器がん登録も各学術団体で行っているため、欧米と同様のシステムを構築するのは困難と思われる。本年度の研究では、各学術団体でそれぞれ行っていたがん登録およびフィードバックの方法論の問題点が抽出された。来年度は問題点の解決に向け研究を推進し、本邦の現状に即したシステム構築を目標とする。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221071Z