胃がんに対するリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下手術と開腹手術との比較に関する多施設共同ランダム化比較試験

文献情報

文献番号
201221070A
報告書区分
総括
研究課題名
胃がんに対するリンパ節郭清を伴う腹腔鏡下手術と開腹手術との比較に関する多施設共同ランダム化比較試験
課題番号
H24-がん臨床-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
片井 均(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院 胃外科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 吉川 貴己(神奈川県立がんセンター 消化器外科)
  • 伊藤 誠二(愛知県がんセンター中央病院 消化器外科)
  • 木下 敬弘(独立行政法人国立がん研究センター 東病院  上部消化管外科)
  • 國崎 主税(横浜市立大学附属市民総合医療センター  消化器病センター外科)
  • 桜本 信一(北里大学東病院 消化器外科)
  • 菊池 史郎(北里大学医学部)
  • 小寺 泰弘(名古屋大学大学院医学研究科 )
  • 金治 新悟(兵庫県立がんセンター 消化器外科)
  • 安田 貴志(兵庫県立がんセンター 消化器外科)
  • 森田 信司(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院 消化器外科)
  • 安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
早期胃癌に対し、術後QOLの改善を期待し腹腔鏡手術が導入されつつある。低侵襲性を付加すると考えられる腹腔鏡下手術は、胃癌治療に導入され、治療費が開腹より高価だが、エビデンスなく増加している。また、難易度が高い手術であるにもかかわらず、リンパ節転移陽性患者で開腹術との同等性の検証がなされず広がっている現状も問題である。患者にとっての真のベネフィットの有無を検証するために、安全性,根治性両面からの科学的な有用性評価を臨床試験で行なう。
研究方法
臨床病期I期胃癌に対する開腹手術に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術の非劣性を証明する多施設第III相試験を行なう(JCOG0912: UMIN000003319)。primary endpointは全生存期間。開腹手術群の5年生存割合を90%、腹腔鏡下手術群の成績が開腹手術群と同等であることを期待し、生存割合で非劣性許容下限を5%(ハザード比:1.54)として検証するため、登録数は両群併せて920名となる(片側α5%、検出力80%)。治療効果の推定値として、Cox 比例ハザードモデルを用いて群間の治療効果のハザード比とその95%信頼区間を求める。なお、参考として施設以外の割付け調整因子を層としたCox回帰を行い、また、必要に応じてその他の偏りが見られた背景因子で調整したCox 回帰を行う。なお、非劣性が証明された場合には、引き続き優越性検証も行うこととする。低侵襲性を評価するためのエンドポイントは、術後早期経過(排ガスまでの日数、鎮痛剤の使用割合、術後3日目までおよび入院期間中の体温の最高値)の群間比較の結果を総合的に評価し、試験治療の優越性(低侵襲性)の有無を判断する。登録5年、追跡5年予定。腹腔鏡下手術の低侵襲性を探索的に評価するためにJCOG0912登録数の多いことが予想される4施設(国立がん研究センター中央病院、神奈川県立がんセンター、静岡県立静岡がんセンター、愛知県がんセンター中央病院)の登録患者を対象にQOL調査も行う。調査票にEORTC QLQ-C30、STO22を使用し、術後90日のGlobal health statusスコアが、登録時と比べて「臨床的に意味のある増悪」(登録時調査結果と比較して10点以上の低下)を示す患者の割合を開腹胃切除術群で61%、腹腔鏡下胃切除術群で45%と仮定すると、有意水準両側0.05、検出力80%で一群152例、両群で304例以上の登録数となる(4参加施設の全例登録)。
結果と考察
JCOG0912の予定登録数は両群併せて920名で、2013年5月15日現在、登録施設は32施設、登録数は822例。QOL調査の必要登録数は両群304名以上で、2013年5月15日現在、登録数は509例。ランダム化比較試験(JCOG0912)、QOL調査ともに順調に登録が進んでいる。問題となる有害事象も発生していない。なお、JCOG0912のプロトコールの詳細を論文掲載した(Jpn J Clin Oncol. 2013; 43: 324-7)。登録期間は5年の予定だが可能であれば短縮を試みる。
結論
本研究で、胃癌に対する郭清を伴う腹腔鏡下手術の安全性と有効性が証明され、この手術の評価が定まれば、内視鏡切除適応外の早期胃がん患者に早期社会復帰や術後患者QOLを向上させうる、新しい治療手段を積極的に提供できる。早期社会復帰や術後患者QOLの向上は、社会的活動の向上、精神的安定、雇用機会の増加、経済的な改善などの成果をもたらすこととなりうる。
腹腔鏡手術は、手術器具やロボティックシステムの開発により、さらなる低侵襲性を患者に提供可能である。この手術手技が一般化し、社会的な認知度が上がることにより、手術関連企業の開発への参画、市場の拡大などの多くの経済効果も期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221070Z