HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進

文献情報

文献番号
201221061A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1キャリア・ATL患者に対する相談機能の強化と正しい知識の普及の促進
課題番号
H23-がん臨床-一般-020
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(東京大学 医科学研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学系研究科)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 塚崎 邦弘(独立行政法人国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科)
  • 鵜池 直邦(独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) 血液内科)
  • 宇都宮 與(公益財団法人慈愛会今村病院分院 血液内科)
  • 岡山 昭彦(宮崎大学 医学部)
  • 石塚 賢治(福岡大学 医学部)
  • 岩月 啓氏(岡山大学大学院 医歯薬総合研究科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学 医学部)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 渡邊 清高(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 高 起良(西日本旅客鉄道株式会社大阪鉄道病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国で同レベルのHTLV-1キャリア、ATL患者に対する情報提供、相談対応行うために
(1)相談対応を行う医療従事者のサポートのために必要な体制の検討
(2)ATL患者、HTLV-1キャリア相談対応のために構築すべき体制の検討
(3)ATL患者、HTLV-1キャリア、一般市民などに効率的に情報を提供する体制の検討
を行うことを目的とする。
研究方法
1.相談に対応する医療従事者への教育ツールの検討及び開発
医療従事者用の教育用ツールの作成のため、全国4施設におけるHTLV-1キャリア外来の実態調査を行った。この結果を踏まえ、母子感染、キャリア指導の各種マニュアルをベースにminimum requirementを抽出しQ&Aの作成に着手した。昨年度実施したモニター調査の結果を元に「HTLV-1情報サービス」ウェブサイトの改修を行い、また医療機関検索掲載HTLV-1キャリア対応施設の再調査を行った。再度モニター調査を繰り返すことでHTLV-1に関するウェブ情報に求められるものを明らかにして行く。

2.全国における相談体制の構築の検討
地域毎に現状の実態と問題点を明らかにするために、各班員がそれぞれの都道府県におけるHTLV-1キャリア、ATL患者の相談体制構築の現状を調査した。全国各地の医療講演会、シンポジウムを開催するのに合わせて、開催地元都道府県の行政担当者、医療関係者、HTLV-1キャリアおよび関連疾患患者、患者団体との意見交換により各地域毎の現状と問題点の情報を収集した。昨年に引き続き全国保健所実態調査および都道府県担当部署調査を行い、今後の対応体制構築に必要な情報を抽出した。HTLV-1関連疾患患者、家族に対する相談対応の検討のため、全国のがん拠点病院相談支援センターの実態調査を実施しその整備に向けての問題点を検討した。

3.HTLV-1キャリア、ATL患者・家族、全国の一般市民に対し、HTLV-1ウイルス関連疾患やその治療に関する正しい情報を提供する
「HTLV-1情報サービス」によりキャリア、ATL患者の求める情報を提供できるウェブサイトの構築をめざし、あわせて一般市民からのモニター結果も反映させた。情報提供、及び医療従事者を含む一般市民への啓発を目的とした医療講演会、シンポジウムを全国4ケ所で開催し、その有用性と問題を検討した。
結果と考察
HTLV-1キャリアに対する外来対応で一体何をすればよいのかわからないという声は、特にnon-endemic areaにおいてよく聞かれ、実際、「HTLV-1情報サービス」ウェブ掲載病院調査では40%は相談対応を行っていなかった。HTLV-1キャリア専門外来調査は現在データ集積中でHTLV-1キャリア対応の標準化に極めて有効であろうと考えられる。Q&Aも現在項目を収集中で、よく整理されたQ&A集は相談対応にあたる医療従事者の教育用資料としても利用価値は高いと考えられる。また20%の施設は今回の調査では対応不可と回答し、これらの結果は保健所等における一次対応後に2次的な対応を行う医療施設は意図的に整備しておかなければならないこと、および拠点化して行くことの必要性を示唆している。都道府県担当部署調査でも、拠点病院の整備が必要と考える都道府県の比率は昨年の58%から72%に増加していた。がん拠点病院相談支援センターでも相談実績は乏しく、専門施設との連携を求める声が強いことも合わせ、都道府県、地区毎の拠点化が必要であろう。地方自治体単位で母子感染対策協議会をベースにこれらの整備への取り組みが見られ今後の方向として注目される。「HTLV-1情報サービス」のアクセス解析の結果、ユーザー所在地は東京都はじめ大都市圏が上位を占め、昨年に比べアクセスは倍増している。大都市圏を中心に大きな情報のニーズがあると推定され、組織的相談体制を構築し、その上で保健所、相談支援センターともより積極的な広報に取り組むことで相談者が大きく伸びる可能性がある。医療講演会・シンポジウムは患者・キャリアと行政、専門家が直接意見交換する場として、また行政、保健所などの研修としては非常に有用なものであったが、各会とも一般の参加者は極めて少なかったと考えられ、HTLV-1(ATL)という名前の知名度を上げる方策が別途必要であろうと考えられる。
結論
保健所、がん診療拠点病院相談支援センターなどの利用の促進、活性化のために都道府県単位でHTLV-1キャリア、ATL患者相談対応を行う医療機関の拠点化と整備を行い、連携体制の構築を行っていくことが必要と考えられ、関係部門、団体などによる協議会での検討が有用と期待される。相談対応の標準化のためにその指針を示す必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221061Z