日本における子宮頸癌予防HPVワクチンの医療経済的評価のための大規模臨床研究

文献情報

文献番号
201221060A
報告書区分
総括
研究課題名
日本における子宮頸癌予防HPVワクチンの医療経済的評価のための大規模臨床研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-019
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 隆之(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 石河 修(大阪市立大学大学院 医学系研究科)
  • 大道正英(大阪医科大学大学院 医学研究科)
  • 神崎秀陽(関西医科大学大学院 医学研究科)
  • 木村 正(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 万代 昌紀(近畿大学大学院 医学研究科)
  • 祖父江 友孝(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 藤田 征巳(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 吉野 潔(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 上田 豊(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 木村 敏啓(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
若年健常女性における HPV の感染状況(HPV-16型・18型の割合)を大規模に解析すること、および学童期女子に対する HPV ワクチンの中・長期予防効果を明らかにすることを検証することを目的とする。また、20歳・25歳のコントロール群の被験者を募るに際し、自治体の子宮がん検診の無料クーポン送付時に研究案内を同封し、細胞診に合わせてHPV検査(無料)の受診を促進することで、若年者の子宮がん検診受診率向上も図れるものと考える。
研究方法
大阪産婦人科医会に所属する施設において12-18歳でHPVワクチン接種を行った者を登録、20歳および25歳になった時点での子宮頸部細胞診異常の発現頻度とHPV感染を解析し、20歳および25歳の非接種者で子宮頸部細胞診の検診を受けた群と比較する。子宮頸部細胞診が異常であった場合はコルポスコープ下の生検等の精査を行う。
登録は3年を予定。目標症正常例数は、推定されるHPV感染率・細胞診異常の割合を元に、ワクチンの効果の有意な統計学的解析が可能と考えられる症例数、すなわち20歳および25歳時でそれぞれ少なくとも4000人程度・1500人程度とし、これを目標にワクチン接種者の登録は10000人を目安とした。
結果と考察
12歳から18歳までのHPV ワクチン接種症例の登録は平成23年4月から開始したが、開始後まもなくのHPV ワクチン(サーバリックス)の供給が停止したため、当初は接種者の登録が進まなかった。しかし、供給が安定した夏以降は順調に登録が進み、本年3月末までに2561症例の登録を得た。しかし、現在までの登録は3年間で10000症例登録という当初の目標数を下回るペースであった。HPVワクチンが産婦人科ではなく内科で接種されることが多くなっていることが原因として考えられたため、大阪府内科医会に協力を依頼し、平成24年3月からは内科機関等からの登録も可能とした。今後、内科からの登録も含め、十分な登録が得られるものと期待するところである。
平成25年度からは、登録者およびコントロール群の検診(子宮頸部細胞診・HPV検査)が始まる。特にコントロール群については、大阪府下の各自治体が、がん検診の無料クーポンを20歳・25歳の市民に送付する際に、当研究への参加を依頼する案内書を同封して被験者を確保することを予定しており、今年度は箕面市で案内書の同封を試験的に実施した。また、検診も箕面市の全施設および他地域の一部施設で試験的に実施、平成25年3月31日までに24施設から317症例のデータが集積された。まだ予備的なデータではあるが、202症例中、ハイリスク型HPV 感染を認めた症例は54症例(17%)あり、特にHPV-16型・18型の感染は14症例(4%)(重複感染の2症例を含む)に認めた。
研究のスムースな推進を図るため、在阪5大学(大阪大学・大阪医科大学・大阪市立大学・関西医科大学・近畿大学)から推薦されたコアメンバーの会議も2回開催した。
現在は解析対象の症例を登録している段階であり、結果は明らかになっていないが、倫理面への配慮を含め、研究体制は整ってきている。登録数の伸び悩みについては、大阪府内科医会の協力を得て、内科施設からの登録も可能とした。これによって、登録も進むものと考える。
また、来年度からの検診に備え、一部地域・一部施設で試験的に検診を開始した。さらに、府下の自治体の6割から協力を得ることができ、コントロール群の被験者の確保も実現可能なものとなった。
結論
 現在、12-18歳のHPVワクチン接種者の登録が進んでいる。また、来年度以降に本格的に始まる検診の準備も順調に進んでいる。来年度以降も府下自治体の協力を得ながら、研究を推進していく予定である。子宮頸癌予防HPVワクチンの日本における中・長期的効果について検証しようとする研究はこれが唯一の研究で、有益な結果が得られるものと期待される。特に、HPVワクチンが定期接種化されることもあり、当研究の重要性はさらに高まっていると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221060Z