高齢がん患者における高齢者総合的機能評価の確立とその応用に関する研究

文献情報

文献番号
201221057A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢がん患者における高齢者総合的機能評価の確立とその応用に関する研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-016
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
長島 文夫(杏林大学 医学部内科学腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 明智龍男(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 東尚弘(東京大学 医学系研究科 )
  • 小川朝生(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)
  • 濱口哲弥(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 消化管内科)
  • 須藤紀子(杏林大学 医学部高齢医学)
  • 安藤昌彦(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目標は、高齢がん患者において高齢者総合的機能評価(以下CGA)を確立し、治療介入(在宅支援や有害事象予測モデルを作成など)により満足度を向上させることである。これまでに、CGAをがん患者専用に調整したCancer-Specific Geriatric Assessment(以下CSGA)の日本語版を作成し、タブレット端末で実施できるようにシステムを開発した。第Ⅲ相試験などのCGAデータを集積・解析し、また、CGAによるアセスメントに基づいて在宅がん支援システムを開発する。
研究方法
(1)CSGA日本語版および入力システムの開発:CSGA原作者の許可を得て、翻訳し、介護保険に関わる質問項目を追加した。24年度は、実施可能性試験を行った。入力支援システムを開発したので、25年度は、多施設臨床研究に応用していく。
(2)CGAを組み込んだ臨床研究:①高齢者大腸癌を対象とした第Ⅲ相臨床試験(JCOG1018)、②CGAの継続的実施可能性試験、③高齢血液がん患者でのCGA実施試験、④CGAによるアセスメント/症状モニタリング/マネジメントプランの介入を組み合わせた在宅がん患者支援の研究(在宅がん支援研究)などを準備し、患者登録を行った。
(3)がんと認知症に関する検討:認知症患者の担癌患者の実態を把握するため、23年度から調査を開始し、本年度はがん患者の治療方針決定に関わる要素を抽出し、CGAとの関係を検討した。
結果と考察
(1)CSGA日本語版および入力システムの開発:実施可能性試験を行い、タブレット端末を利用することでCSGA, VES-13を患者自身が入力を行い、30分程度で実施可能であった。入力支援システムとしてJCOGデータセンターと協力して、収集したデータをデータセンターにアップロードできるように工夫した。今後は多施設臨床研究の他、大規模データの収集が容易となる。
(2)①JCOG1018試験において、本年度はCGAとしてVES-13、QOL評価としてEQ-5Dを実施する附随研究を開始した。平成25年3月までに13例が登録された。また、CSGAを盛り込んだ附随研究を準備している。②化学療法開始予定の高齢がん患者において、CGAを継続的に行う実施可能性試験を行い、21名の登録を完了した。CGAは継続的に実施できることが明らかとなった。また、MMSE、VES-13、CGA7の変化と全生存期間との間に相関を認め、短期的な予後を予測しうることが示唆された。③高齢血液がん患者の化学療法開始前にCGAを実施し、頻度の高い問題は、合併症(51%)、高次脳機能障害(40%)、日常生活活動度低下(32%)、うつ病(25%)などであった。④在宅がん支援研究の実施可能性試験を開始した。
(3)がんと認知症に関する検討:CGA7およびJABCランクでADLの高い群ではがんに対する手術・薬物療法が選択される傾向があった。70%の患者で治療方針決定に家族が関与しており、家族と相談することが重要である。また、認知症の担癌患者は在宅復帰率が低いことが明らかとなった。今後は、意思決定支援/在宅がん支援を具体化して在宅がん支援システムの研究に反映させる予定である。
結論
日本人の高齢がん患者において、CGAを確立し、治療介入につなげていく。タブレット端末の開発により、臨床試験や実地診療上のCGAデータを収集、解析することが容易となった。また、CGAの指標が高齢がん患者で抗がん剤治療を行う場合に短期的な予後を予測できることが示唆され、治療方針の決定に応用することが可能と考えられる。今後は、在宅がん支援システムへの応用など、情報共有をリアルタイムに行い、患者満足度の向上を目指していく。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221057Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,100,000円
(2)補助金確定額
9,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,944,687円
人件費・謝金 2,694,811円
旅費 239,500円
その他 2,121,061円
間接経費 2,100,000円
合計 9,100,059円

備考

備考
分担研究者:東尚弘(東京大学大学院医学研究科)への分担研究費600000円において自己資金59円が発生した為

公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
-