小児造血器腫瘍に対する標準治療と診断確立のための研究

文献情報

文献番号
201221055A
報告書区分
総括
研究課題名
小児造血器腫瘍に対する標準治療と診断確立のための研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 明子(国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
  • 渡辺 新(中通総合病院小児科)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター血液・腫瘍科)
  • 富澤 大輔(東京医科歯科大学医学部附属病院小児科)
  • 小川 千登世(福島県立医科大学産学官連携推進本部創薬関連トランスレーショナルリサーチ部門)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学・医学部小児科)
  • 出口 隆生(三重大学医学部附属病院小児科)
  • 清河 信敬(独立行政法人 国立成育医療研究センター研究所小児血液・腫瘍研究部)
  • 森 鉄也(国立成育医療研究センター生体防御系内科部腫瘍科)
  • 嶋田 博之(慶應義塾大学医学部小児科学)
  • 真部 淳(聖路加国際病院小児科)
  • 矢部 普正(東海大学医学部再生医療科学)
  • 石田 也寸志(愛媛県立中央病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,834,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急性リンパ性白血病(ALL)等造血器腫瘍に対して治療層別化のための診断体制を含めた臨床研究基盤の整備と質の高い臨床試験を立案・実施してエビデンスを創出する。
研究方法
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)のもとに、以下の臨床試験を実施する。1)T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)に対するALL-T11、2)B前駆細胞性(BCP-)ALLに対するALL-B12、3)乳児ALLに対するMLL10、4)再発小児ALLに対するR-08、5)小児慢性骨髄性白血病(CML)に対する観察研究(CML-08)、6)小児非ホジキンリンパ腫(NHL)の3つの病型及びホジキンリンパ腫に対する新規臨床試験、7)小児フィラデルフィア染色体陽性(Ph+) ALLに対する新規臨床試験、8)造血幹細胞移植の標準治療確立のための新規臨床研究、9)ALLにおけるQOL調査研究。また、以下の基盤整備を行う。1)小児臨床試験の質を向上させるための研究体制、試験デザインやデータ管理手法の確立、2)ALLにおけるIg/TCR遺伝子再構成を標的とした遺伝子増幅法による微小残存病変(PCR-MRD)およびフローサイトメトリー法による微小残存病変(FCM-MRD)の診断確立、3)ALL治療研究における新規細胞分子診断法の確立、4)長期のフォローアップ体制の確立。これら臨床試験の実施にあたっては、匿名化による個人情報保護、統一された説明文書を用いた文書同意の取得、中央および施設の倫理審査委員会の承認取得、臨床試験登録を行う。
結果と考察
わが国で初めてとなる全国統一の小児ALLに対する臨床試験ALL-T11およびALL-B12をそれぞれ、平成23年12月、平成24年11月に開始した。平成25年3月末現在それぞれ57例、63例が登録された。その他の臨床試験は、乳児ALLの臨床試験MLL-10に41例、再発ALLの前方視的観察研究ALL-R08に142例、小児CMLの多施設共同観察研究 CML-08に54例が登録された。また、先行の乳児ALLに対する臨床試験MLL03の最終解析を行った。63例が登録され、3年無イベント生存率(EFS)46.7%、3年全生存率(OS)72.5%が得られ、過去の臨床試験に比較して良好であった。予後因子としては、月齢6か月未満および中枢神経浸潤陽性例の予後が不良であった。Ph+ALL04臨床試験は、42例が登録され、うち37例(88%)が完全寛解となり、31例が第1寛解で移植を受けた。全例が生着し、合併症死亡はない。26例が3年間第1寛解を保ち、3年のEFS 57%、OS 80%と良好であった。基盤整備では、JPLSGの各種臨床研究をモデルにデータ管理の実務と方法の標準化・効率化に向けた研究として登録、調査票回収をWeb化し、ユーザーの利便性をはかると共に患者データの正規化、標準化を図った。ALL骨髄PCR-MRD定量を計170例で実施した。FCM-MRD測定を再発ALLに対する臨床試験ALL-R08の62例、のべ約300ポイントで行い、PCR-MRDとの良好な相関性を確認した。JPLSG長期フォローアップ(FU)委員会の下に5つのワーキンググル-プ(WG)を設置して、ガイドライン作成、ホームページ作成G、教育ツール作成、治療サマリー、長期FU手帳を整備した。また、乳児ALL、Ph+ALL、再発ALL、B-NHLとALCLについて、次期研究として国際共同研究が検討されている。いずれも適応拡大や新薬承認を目的とした試験であり、ICH-GCP準拠が求められる。小児造血器腫瘍の各疾患・病型はいずれも希少疾患であり、症例集積を図るには、国際共同研究がますます推進される。そのためには新薬の同時開発の仕組みの整備が必要である。
結論
小児ALLの全国統一研究が開始されたことで、ほぼすべての小児造血器腫瘍において標準治療が確立され、わが国の小児がん医療の標準化と均てん化の促進が期待される。今後の国際共同研究に対応するためにも国際水準の臨床試験を実施できる体制整備が急がれる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221055Z