肛門扁平上皮癌に対する新規化学放射線療法の確立 

文献情報

文献番号
201221053A
報告書区分
総括
研究課題名
肛門扁平上皮癌に対する新規化学放射線療法の確立 
課題番号
H23-がん臨床-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
濱口 哲弥(独立行政法人国立がん研究センター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 敏彦(山形県立中央病院)
  • 八岡 利昌(埼玉県立がんセンター)
  • 齋藤 典男(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 正木 忠彦(杏林大学医学部)
  • 高橋 慶一(東京都立駒込病院)
  • 長谷川 博俊(慶応義塾大学医学部)
  • 杉原 健一(東京医科歯科大学大学院)
  • 佐藤 武郎(北里大学医学部)
  • 絹笠 祐介(静岡県立静岡がんセンター)
  • 金光幸秀(愛知県がんセンター中央病院)
  • 小森康司(愛知県がんセンター中央病院)
  • 山口 高史(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)
  • 能浦 真吾(独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター)
  • 久保 義郎(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター)
  • 白水 和雄(久留米大学)
  • 北野 正剛(国立大学法人大分大学)
  • 伊藤 芳紀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少疾患である肛門扁平上皮癌に対し、患者にとって利便性の高い治療であると期待できるS-1+MMC+RT療法が、標準治療である5-FU+MMC+RT療法と比べて同等以上の有効性と安全性を有するか否かを評価することで、新しい国内標準治療とできるかどうかを検証する。
研究方法
【対象】
臨床病期II/III期肛門管扁平上皮癌患者を対象とする。年齢は20歳以上80歳以下で、ECOG PSは0,1、肛門癌に対する治療歴がなく、他のがん種に対する治療を含めて化学療法・放射線療法の既往がなく、十分な経口摂取が可能であり、主要臓器機能が保たれていることとした。試験参加について患者本人から同意を得る。
【治療】
放射線治療開始と同時に、以下の化学療法および放射線療法を行う。
S-1: 80mg/m2/day 1日2回内服、day 1-14, day 29-42
MMC: 10mg/m2 急速静注、day 1, 29
RT: 1回1.8Gy, 1日1回、週5日、計33回、総線量59.4Gy
【評価項目】
第I相部分:S-1とMitomycin C(MMC)と放射線照射同時併用療法の最大耐用量)、用量制限毒性を推定し、推奨用量を決定する。
第II相部分:
Primary endpoint: 3 年無イベント生存割合
Secondary endpoints: 完全奏効割合、無増悪生存期間、全生存期間、有害事象発生割合
また放射線治療の品質管理(QA)・品質保証活動(QC)も並行して行う。
結果と考察
平成23年度は第I相部分の結果により、第II相部分の推奨用量はレベル1のS-1 80mg/m2/day day1-14, day29-42, MMC 10mg/m2 day 1, 29と決定した。平成23年12月1日より第II相部分の症例集積を開始し、平成24年度は症例登録を継続しているところである。第II相部分より参加施設を43施設に拡大した。予定症例数は第I相試験部分のレベル1と合わせて65例である。
肛門管扁平上皮癌は、国内では年間200例たらずの発症数であるが、これまで月1-2例のペースで登録が進み計32例となった。2月28日までに登録された28例の患者背景は、年齢中央値59.5歳(範囲:39-78歳)、性別:男/女=4/24名、PS:0/1=22/6名であった。CRFが回収された20例の集計では、Stage II/IIIA/IIIB=3/4/13(名)と、今回、本試験のプライマリエンドポイントにおける比較の対象とするRTOG-9811試験に比べ、当試験に登録された患者の方が高齢かつstageも進んでいる傾向にあった。
これまでにプロトコール治療が終了した14例におけるプロトコール治療完遂割合は93%と良好であった。また有害事象については、Grade 3/4の白血球減少58.3%, 好中球減少33.3%、放射線性皮膚炎25%に認め、現時点ではS-1+MMC併用放射線化学療法はtolerableといえる内容であった。尚、治療関連死およびプロトコール治療中及び最終プロトコール治療日から30日以内の死亡は認めていない。
有効性評価は、中央判定にてCR確定が17例中16例と良好な成績であった。またNon-CRとなった1例については救済手術が施行されたが、病理結果はpathological CRであった。
放射線治療の品質管理を行い、「遵守」83.3%、「逸脱」16.7%、「違反」0であった。逸脱の内容はいずれも臨床的には許容できる範囲内であり、本結果は登録施設へのフィードバックし、問題点があれば、参加施設のメーリングリストで情報共有している。
本臨床試験は、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言等の国際的倫理原則に従う。またJCOGのプロトコール審査委員会、効果・安全性評価委員会、監査委員会、放射線治療委員会などによる第三者的監視を受けることを通じて、科学性と倫理性の確保に努める。
結論
平成23年度に決定した推奨用量に準じて、平成24年度は第II相部分の症例集積を継続したところ、症例集積ペースは当初の予想を上回る月1-2例と順調であった。登録患者は比較的高齢かつstageも進んでいる傾向にあるが、現時点で薬物有害反応はtolerableであり、有効性評価も17例中16例でCRと良好であった。また放射線治療の品質管理をおこなったところ16.7%に逸脱がみられたが、いずれも臨床的に許容できる範囲内であった。

公開日・更新日

公開日
2013-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221053Z