先天色覚異常の診断ならびに程度判断に関する研究

文献情報

文献番号
199800079A
報告書区分
総括
研究課題名
先天色覚異常の診断ならびに程度判断に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
北原 健二(東京慈恵会医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天色覚異常においては、その診断法や程度判定は心理物理学的方法によってなされているが、検査機器や検査手技、被験者の心理状態によって診断や程度判定が異なる欠点を有している。本研究においては分子生物学的手法によって客観的な診断法および程度判定法の確立の可能性を検討するものである。
研究方法
まず正常色覚の日本人男性72名に対して赤視物質遺伝子(赤遺伝子)、緑視物質遺伝子(緑遺伝子)の遺伝子型を定量的PCR-SSCP法によって分析し、心理物理学的検査による分析と比較検討した。次に先天赤緑色覚異常者についてインフォ-ムドコンセントの後に協力が得られた21名に対して正常色覚者と同様の方法によって行った。更には女性保因者の分析、また定量的Riverse Transcription (RT) -PCR-SSCP法を用いての末梢血リンパ球中に含まれる赤および緑遺伝子のmRNAを定量し、それによって網膜における赤および緑遺伝子の発現量の類推も試みた。
結果と考察
正常色覚者では緑遺伝子の数に個人差があるものの、心理物理学的検査との相関関係はなく、赤遺伝子の180番目のアミノ酸であるセリンとアラニンの多型性によって色覚に個人差がもたらされていることが確認された。先天赤緑色覚異常者においては第1異常者では正常の赤遺伝子の欠失と赤緑融合遺伝子の存在が、また第2異常者では緑赤融合遺伝子の存在が証明された。心理物理学的検査とは18例では良く相関していたが、残り3例では一致せず、遺伝子型だけではその表現型まで確実に類推することは困難であった。女性保因者に関しては第1異常の保因者のうちあるものでは異常遺伝子型の検出は可能であったが、大多数の症例においては明確な結果は得られなかった。リンパ球中のRT-PCR-SSCP法による視物質遺伝子のmRNAの定量は含まれるmRNA量が大変微量なため不可能であった。
結論
正常色覚者では赤遺伝子の180番目のアミノ酸であるセリンとアラニンの多型性が色覚の個人差に関与していることを確認した。先天赤緑異常については遺伝子型から心理物理学的診断および程度判定の説明が困難な例も存在したことにより現時点では分子生物学的検査と心理物理学的検査の併用により、より正確な臨床診断を行えることが示唆された。

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