切除不能局所進行膵がんに対する標準的化学放射線療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201221048A
報告書区分
総括
研究課題名
切除不能局所進行膵がんに対する標準的化学放射線療法の確立に関する研究
課題番号
H23-がん臨床-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
古瀬 純司(杏林大学 医学部内科学腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 浩(がん研究会有明病院 消化器内科)
  • 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院 肝胆膵腫瘍科)
  • 福冨 晃(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)
  • 宮川 宏之(札幌厚生病院 第2消化器科)
  • 菱沼 正一(栃木県立がんセンター 外科)
  • 佐田 尚宏(自治医科大学 消化器・一般外科)
  • 山口 研成(埼玉県立がんセンター 消化器内科)
  • 山口 武人(千葉県がんセンター 消化器内科)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院 肝胆膵腫瘍科)
  • 大川 伸一(神奈川県立がんセンター 消化器内科)
  • 田中 克明(横浜市立大学市民総合医療センター 消化器病センター)
  • 木田 光広(北里大学東病院 消化器内科)
  • 水野 伸匡(愛知県がんセンター中央病院 消化器内科)
  • 細川 歩(富山大学付属病院 第3内科)
  • 片山 和宏(大阪府立成人病センター 肝胆膵内科)
  • 中森 正二(国立病院機構大阪医療センター 肝胆膵外科 統括診療部)
  • 柳本 泰明(関西医科大学付属枚方病院 肝胆膵外科)
  • 井口 東郎(国立病院機構四国がんセンター 消化器内科 臨床研究センター)
  • 古川 正幸(国立病院機構九州がんセンター 消化器肝胆膵内科)
  • 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科)
  • 伊藤 芳紀(国立がん研究センター中央病院 放射線治療科)
  • 中村 聡明(京都府立医科大学 放射線治療診断学)
  • 横須賀 收(千葉大学大学院医学研究院 腫瘍内科)
  • 佐野 圭二(帝京大学医学部 外科)
  • 清水 京子(東京女子医科大学 消化器内科)
  • 峯 徹哉(東海大学医学部 消化器内科)
  • 東 健(神戸大学大学院医学研究科 消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
切除不能膵癌は、遠隔転移例と局所進展により切除不能な局所進行例に分けられる。局所進行例に対しては化学療法あるいは化学放射線療法が行われるが、標準治療は未だ確立していない。本研究では切除不能局所進行膵癌に対する標準治療の確立を目的に、第一段階として、最も効果的な化学放射線療法の選択を目的に、S-1化学放射線療法を実施するに当たり、導入ゲムシタビン(GEM)化学療法の有無によるランダム化第Ⅱ相試験を実施する。続いて、選択した化学放射線療法と標準化学療法とランダム化比較する第Ⅲ相試験を行う。
研究方法
本研究はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)肝胆膵グループにおいて、第一段階として、当初からS-1併用化学放射線療法を行う群と導入GEM化学療法後S-1併用化学放射線療法を行う群のランダム化第II相試験(JCOG1106試験)を実施する。JCOG1106試験の概要は次の通りである。
1)目的と試験デザイン
上記二つの治療法の有効性と安全性を評価し、より有望な治療法を選択する。主要評価項目は全生存期間(OS)である。
2)対象症例
対象は、病理学的に腺癌が確認され、画像診断により遠隔転移がなく、局所進展のため切除不能と診断される膵癌患者であり、原発巣と転移リンパ節が呼吸性移動を含めて10cm×10cm以内の照射野に含められ、十分な主要臓器機能を有する例を適格とする。
3)治療法
A群(S-1放射線療法):放射線療法は1回1.8Gy、28回照射、計50.4Gyを照射する。S-1は80mg/m2を照射日のみ朝夕に分けて内服する。
B群(導入GEM+S-1放射線療法):GEMは標準用法用量により3サイクル実施する。その後、A群と同様の化学放射線療法を開始する。
A,B群共通:S-1併用化学放射線療法終了後、維持療法としてGEM化学療法を増悪もしくは忍容できない毒性出現まで行う。
4)予定症例数
予定症例数100例、登録期間2年、追跡期間1年。
5)放射線治療の品質保証活動
本研究では、放射線治療医による放射線治療の品質保証活動(QA/QC)を施行し、治療の質の担保に努める。
(倫理面への配慮)
本研究への参加患者の安全性確保については、適格条件やプロトコール治療の中止変更規準を厳しく設け、試験参加による不利益を最小化する。また、「臨床研究に関する倫理指針」およびヘルシンキ宣言などの国際的倫理原則を遵守する。
結果と考察
【結果】
1)JCOG1106進捗状況
各施設倫理委員会での承認が得られた施設から、平成24年1月より登録が開始された。平成25年3月末で62例が登録され、ほぼ予定通りの進捗状況である。これまでのところ治療中止30日以内の早期死亡1例(間質性肺炎)の他、重篤な有害事象は報告されていない。
2)放射線治療の品質保証活動
平成24年12月末までに放射線治療が終了した26例において、全例でプロトコール規定に従って治療が行われていたことを確認した。
【考察】
これまで切除不能局所進行膵癌に対して、GEM化学療法と化学放射線療法との比較試験が国外で2本実施されたが、相反する結果であり、その優劣について結論は得られていない。わが国ではGEM化学療法の第Ⅱ相試験を行い、OS中央値15ヶ月と良好な成績が得られたことから、現状ではGEMが標準的治療法として認識されている。一方、S-1併用放射線療法の第II相試験でもOS中央値16.2ヵ月と良好な治療成績が得られている。
局所進行膵癌では、治療開始後早期に遠隔転移などの増悪を認め、結果的に化学放射線療法を実施すべきでないと思われる症例が一定頻度でみられる。したがって、標準化学療法のGEM単独治療を先行させた後、増悪がない患者に絞って化学放射線療法を行う治療法がリスク/ベネフィットバランスから有望と考えられる。今回のGEM導入化学療法とS-1化学放射線療法を用いたランダム化第II相試験により、導入GEM療法の有用性が確認されれば、最適な化学放射線療法の方法が確立するものと期待される。また、毒性の強い化学放射線療法を適切な患者のみに実施することが可能となり、患者のみならず医療業務や医療経済上も効率的かつ有効な治療戦略に基づいた標準治療が確立できるものと考えられる。
結論
切除不能局所進行膵癌に対する標準治療確立に向けて、S-1併用化学放射線療法と導入GEM化学療法後S-1併用化学放射線療法とのランダム化第II相試験(JCOG1106試験)を実施している。本試験は平成25年末に登録終了を見込んでいる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,500,000円
(2)補助金確定額
10,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 145,393円
人件費・謝金 2,238,993円
旅費 2,690,220円
その他 3,002,394円
間接経費 2,423,000円
合計 10,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
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