臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験

文献情報

文献番号
201221047A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床病期II・IIIの下部直腸がんに対する側方リンパ節郭清術の意義に関するランダム化比較試験
課題番号
H23-がん臨床-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 伸(栃木県立がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤典男((独)国立がんセンター東病院 大腸骨盤外科)
  • 藤井正一(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター消化器病センター,下部消化管外科)
  • 大田貢由(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター消化器病センター,下部消化管外科)
  • 伴登宏行(石川県立中央病院 消化器外科)
  • 絹笠祐介(静岡県立静岡がんセンター 大腸外科)
  • 金光幸秀(独)国立がん研究センター中央病院 大腸外科)
  • 山口高史(京都医療センター 下部消化管大腸癌・ 骨盤外科 )
  • 赤在義浩(岡山済生会総合病院 外科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 術前画像診断および術中開腹所見にて,あきらかな側方骨盤リンパ節転移を認めない臨床病期 II・IIIの治癒切除可能な下部直腸癌の患者を対象として,国際標準手術である直腸固有間膜切除術(mesorectal excision:ME)が,国内標準手術である自律神経温存側方骨盤リンパ節郭清術(自律神経温存D3)に有効性で劣らないことを非劣性ランダム化比較にて検証する.
研究方法
 2003年6月よりJCOG大腸がんグループの多施設共同臨床試験(参加34施設)として登録を開始し2010年8月2日に701例目が登録され,登録を終了した.2015年8月まで,生死,再発有無,早期晩期有害事象,二次がん等について年2回の追跡調査を継続する.
 今年度は,Secondary endpointである性機能障害と排尿機能障害のデータ集積ならびに解析を行った.
結果と考察
 性機能障害アンケートの回収率は,73%であった.性機能障害発生割合は,側方郭清群79%,ME群68%と有意差はなかった.術前より性機能障害を伴う症例が半数以上(56%)あり、術前に性機能障害がない症例で検討したところ,56歳以上の患者において側方郭清群で性機能障害がより悪化しやすい傾向が認められた.排尿障害発生割合は,術後早期では,側方郭清群59%,ME群58%と有意差はなかった.術後晩期でも,側方郭清群7%,ME群5%と有意差はなかった.
 これまでmesorectal excisionに比べ,側方郭清で多いと思われていたいた性機能障害,排尿機能障害が,両群間で差がないことが示されたことは,極めて重要な知見である.
結論
 本研究の最終成果により,我が国独自に発達してきた自律神経温存側方郭清術と世界標準術式であるmesorectal excisionの優劣を示すことが可能となるが,そのデータ解析は2015年の予定である.
 本年度の研究成果により,これまで正確なデータがなく比較が難しかった側方郭清とmesorectal excisionの性機能障害と排尿機能障害の頻度が明確となった.また,これまで側方郭清で多いと思われていた性機能障害,排尿機能障害が,mesorectal excisionと差がないことが示されたことは,直腸癌の外科臨床に極めて有用なデータをもたらした.これら成果は海外学会発表後,Lancet Oncologyに公表予定である.

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221047Z