治療の初期段階から身体・精神症状緩和導入を推進するための研究

文献情報

文献番号
201221042A
報告書区分
総括
研究課題名
治療の初期段階から身体・精神症状緩和導入を推進するための研究
課題番号
H22-がん臨床-若手-033
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清水 研(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院精神腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 内富庸介(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室)
  • 明智龍男(名古屋市立大学大学院医学研究科精神腫瘍学)
  • 吉内一浩(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 松本禎久(独立行政法人国立がん研究センター 東病院緩和医療科)
  • 森田達也(聖隷三方原病院緩和医学)
  • 小川朝生(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター精神腫瘍学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療開始早期から身体・精神症状緩和を導入することが必要であり、がん対策推進基本計画の目標として掲げられているが、未だ実施は不十分である。身体・精神症状を見過ごさず適切にスクリーニングしたうえで、必要に応じて専門的緩和ケアを導入する必要があり、これを実現する包括的プログラムが必要であるが、まだモデルは確立されていない。本研究班では、身体・精神症状それぞれをターゲットとした、わが国のがん診療拠点病院の事情に即した包括的プログラムの開発を行い、将来の臨床応用につながる成果を得ることを目的とする。
研究方法
1) つらさと支障の寒暖計の妥当性の検証(清水・明智・内富・小川)
 国立がん研究センター中央病院、同東病院、東京大学附属病院、名古屋市立大学病院、岡山大学病院にて適格患者を連続サンプリングし、文書による同意を得た上で、がん診断後かつ治療開始前に、「つらさと支障の寒暖計(DIT)」を施行する。DITの結果を知らされていない独立した面接者が、Composite International Diagnostic Interview(CIDI)に基づきうつ病の診断面接を行い、DITのうつ病に対するスクリーニング能力を検討する。

2) 項目反応理論を応用した抑うつの重症度評価尺度としてのコンピューター適応型質問票(computerized adaptive test, CAT)の開発
(吉内)
エキスパートコンセンサスにより項目プールを作成したのち、終末期を除くがん患者に項目プールを実施。項目反応理論を用いて、困度度および識別度のパラメータを算出し、項目の選定および、CATのための項目プールを作成する。

3) 早期身体症状緩和導入のための介入モデル開発(松本)
非小細胞肺がんⅣ期と診断され、初回抗がん剤治療を行う患者を対象とした。対象者が自己記入式評価指標(EORTC QLQ-C30,MDASI-J,HADS)および簡便な質問票を記載し、簡便な質問票における身体尺度、精神尺度、社会的・経済的問題の尺度が基準値以上の場合に、専門的な緩和ケアサービスの介入を行う。
結果と考察
1) つらさと支障の寒暖計の妥当性の検証
本年度は新たに288例の症例が追加され、合計402例の症例を集積した。現在うつ病を合併している患者はそのうちわずか2例であり、予測に比べて少なかった。

2) 項目反応理論を応用した抑うつの重症度評価尺度としてのコンピューター適応型質問票(computerized adaptive test, CAT)の開発
症例集積を開始し、本年度は新たに266例が追加され、合計380例の集積を終了した。

3) 早期身体症状緩和導入のための介入モデル開発
我が国の早期専門的身体症状緩和導入に資する、包括的スクリーニング介入プログラムのモデルの実施可能性および予備的有用性を検証するための介入研究を開始した。現在症例集積中であり、2012年11月1日現在で60例中7例を終了している。

結論
1) つらさと支障の寒暖計の妥当性の検証
症例集積は順調であるが、予測に比べてうつ病の症例が不足しているためにDITの感度・特異度を算出するための解析が完了していない。今後DITの妥当性検討を行うためには、精神腫瘍医が存在しない病院など、他のセッティングでの症例集積が必要である。

2) 項目反応理論を応用した抑うつの重症度評価尺度としてのコンピューター適応型質問票(computerized adaptive test, CAT)の開発  
合計380例の症例を集積し、開発が終了した。

3) 早期身体症状緩和導入のための介入モデル開発
本年度より症例の集積を開始し、症例集積が終了した際には予備的な有用性が明らかになる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221042B
報告書区分
総合
研究課題名
治療の初期段階から身体・精神症状緩和導入を推進するための研究
課題番号
H22-がん臨床-若手-033
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清水 研(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院精神腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 内富庸介(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室)
  • 明智龍男(名古屋市立大学大学院医学研究科精神腫瘍学)
  • 吉内一浩(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 松本禎久(独立行政法人国立がん研究センター 東病院緩和医療科)
  • 森田達也(聖隷三方原病院緩和医学)
  • 小川朝生(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター精神腫瘍学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療開始早期から身体・精神症状緩和を導入することが必要であり、がん対策推進基本計画の目標として掲げられている。本研究班では、身体・精神症状それぞれをターゲットとした、わが国のがん診療拠点病院の事情に即した包括的プログラムの開発を行い、将来の臨床応用につながる成果を得ることを目的とする。
研究方法
1) つらさと支障の寒暖計の妥当性の検証(清水・明智・内富・小川)
適格患者を連続サンプリングし、「つらさと支障の寒暖計(DIT)」を施行する。Composite International Diagnostic Interview(CIDI)に基づきうつ病の診断面接を行い、DITのうつ病に対するスクリーニング能力を検討する。
2) つらさと支障の寒暖計の継時変化の検証(森田)
聖隷三方原病院において外来化学療法を受ける患者を対象に、初回化学療法実施時と、2週間後にDITの測定を行う。
3) 精神症状緩和の促進・阻害要因の検討(清水)
国立がん研究センター中央病院の患者20名を対象に、質的インタビューを行う。内容分析にて促進・阻害要因を明らかにする。
4) 項目反応理論を応用した抑うつの重症度評価尺度としてのコンピューター適応型質問票(computerized adaptive test, CAT)の開発(吉内) 
患者に項目プールを実施。項目反応理論を用いて、困度度および識別度のパラメータを算出し、項目の選定および、CATのための項目プールを作成する。
5) 早期身体症状緩和導入のための介入モデル開発(松本)
非小細胞肺がんⅣ期と診断され、初回抗がん剤治療を行う患者を対象とした。緩和ケアチームの看護師が一定のチェックリストに基づいて評価を行い、その評価にしたがって、緩和ケアチームの看護師、緩和医療科医師、精神腫瘍科医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士のうち、必要と考えられる職種が関わる包括的な介入を開始する。
結果と考察
1) つらさと支障の寒暖計の妥当性の検証
合計402例の症例を集積した。現在うつ病を合併している患者はそのうちわずか2例であり、予測に比べて少なかった。
2) つらさと支障の寒暖計の継時変化の検証
外来化学療法を受ける患者293名を対象にDIT実施したところ、109名がDIT高値であった。109名のうち2週間後も高値であったのは53.2%にあたる58名であり、46.8%にあたる51名は介入を行わなくても改善を認め、自然経過で苦痛が消失する患者も多いことが明らかになった。
3) 精神症状緩和の促進・阻害要因の検討
患者20名に対して質的インタビューを行い、次の5つの要因があることがあきらかになった。①患者自身が精神疾患に罹患する可能性をどの程度予測しているか(罹患可能性)、②うつ病などの精神症状について正確に理解しているか(認識)、③専門家の受診が本人にとってしやすい状況にあるか(コントロール感)、④精神症状について介入を受けることに対する本人の価値観(態度)、⑤精神症状について介入を受けることに対して、周囲の重要他者がどのように考えているか(規範)。
4) 項目反応理論を応用した抑うつの重症度評価尺度としてのコンピューター適応型質問票(computerized adaptive test, CAT)の開発
合計380例の集積を終了し、質問票の開発が終了した。
5) 早期身体症状緩和導入のための介入モデル開発
現在症例集積中であり、2012年11月1日現在で60例中7例を終了している。
結論
1) つらさと支障の寒暖計の妥当性の検証
精神腫瘍科が十分なコンサルテーション活動を行っている病院においてはスクリーニングを行わなくてもうつ病患者は既に介入が為されていることが明らかになった。
2) つらさと支障の寒暖計の継時的変化の検証(森田)
 つらさと支障の寒暖計のカットオフポイントを確立し、より介入が必要な患者を抽出するための方策の必要性が示唆された。
3) 精神症状緩和の促進・阻害要因の検討
 促進・阻害要因が明らかになった。
4) 項目反応理論を応用した抑うつの重症度評価尺度としてのコンピューター適応型質問票(computerized adaptive test, CAT)の開発
少ない質問項目で測定が可能となり、患者に負担をかけずに抑うつの重症度評価が可能となった。
5) 早期身体症状緩和導入のための介入モデル開発
本年度より症例の集積を開始しており、研究終了時には介入モデルの予備的な有用性を明らかになる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221042C

収支報告書

文献番号
201221042Z