文献情報
文献番号
201221041A
報告書区分
総括
研究課題名
小児急性骨髄性白血病(AML)に対する標準的治療法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-がん臨床-一般-042
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
足立 壮一(京都大学 医学研究科人間健康科学系専攻)
研究分担者(所属機関)
- 堀部 敬三(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
- 宮地 勇人(東海大学 医学部基盤診療学系臨床検査学)
- 齋藤 明子(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
- 林 泰秀(群馬県立小児医療センター 小児科)
- 滝 智彦(京都府立医科大学 医学研究科分子診断・治療医学・分子遺伝学)
- 多賀 崇(滋賀医科大学 小児科)
- 工藤 寿子(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
- 多和 昭雄(国立病院機構大阪医療センター 小児科)
- 富澤 大輔(東京医科歯科大学 小児科)
- 岩本 彰太郎(三重大学 小児科)
- 高橋 浩之(済生会横浜市南部病院 小児科)
- 中山 秀樹(国立病院機構福岡東医療センター 臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は難治性小児がんの急性骨髄性白血病(AML)に、高い長期生存率と晩期障害を軽減できる標準治療を確立するための質の高い臨床研究を実施して、科学的根拠に基づく医療を普及して国民の医療・福祉の向上に貢献することを目的とする。小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)間の共同研究として全国規模の臨床試験を計画し標準的治療法の開発を目指す。質の高い診断のために形態中央診断、染色体検査、キメラ遺伝子検査、細胞表面マーカー検査、などの検査所見、臨床所見を総合して診断するシステムを確立する。遺伝子変異や発現量、微小残存病変(MRD)を解析して治療層別化に用いる臨床試験を目指す。
研究方法
日本小児白血病リンパ腫研究グループ (JPLSG)AML委員会を中心に本邦のほぼすべての小児白血病治療施設が参加する以下の7つの臨床試験を計画し、うち3つの試験(AML-P05, AML-D05, AML-05)は予定登録症例数に達して登録完了、2つの臨床試験(AML-D11, AML-R11)が遂行中、2つの臨床試験(AML-12, AML-P12)を近々に開始予定である。AML-05については治療成績を解析した。
結果と考察
De novo AML臨床試験「AML-05研究」の治療成績を解析し、(1)予後良好のCBF-AML, (2) non-CBFAML, (3) 乳児AML (4) 異形成を伴うAML(AML-MLD)の4演題をアメリカ血液学会にて報告し、JPLSGAML臨床試験の結果をSt.Jude小児病院で招待講演にて発表した。AML-12(小児AMLを対象とした初回寛解導入療法によるシタラビン投与法についてランダム化比較検討, および寛解導入後早期の微小残存病変の意義を検討する多施設共同シームレス第II-III相臨床試験)については、現在小児血液・がん学会臨床研究審査委員会審査中で、近々に臨床試験開始予定である。AML-05は2コースの寛解導入療法終了後、完全寛解となったのは443例中381例(寛解導入率86.0%)。観察期間中央値3.06年で全体の3年event free survival(EFS)は55.2%(50.1-60.0%)、overall survival(OS)は73.2%(68.3-77.4%)であった。各リスク別では、3年EFSがLR群69.6%(60.6-70.7%)、IR群57.2%(49.2-64.5%)、HR群53.3%(39.2-65.6%)で、OSはLR群92.6%(85.6-96.2%)、IR群73.2% (65.0 -79.7%)、HR群66.7(51.1-78.4%)であった。
本邦におけるダウン症候群に発症した急性骨髄性白血病の寛解導入不能および再発例の疫学調査では、再寛解導入率が悪く、造血幹細胞移植での救済が難しいなど、予後不良であることが判明、この結果をBLOOD誌に発表した。AML-D05登録終了に伴い、治療はAML-D05と同様で寛解導入療法後のMRDを検証するAML- D11を遂行中である。平成24年12月31日時点で13例の試験登録がなされており、順調に臨床試験登録及びMRD解析を行っている。
APLについても次期臨床試験の参考にすべく、三酸化ヒ素(ATO)及びトロンモボデュリン製剤の使用実態に関する疫学研究を施行し、現在ATOを用いてアントラサイクリンの減量を、GOを導入して難治APLの治療成績の向上を目指すAML-P13臨床試験計画を完成した。
また、再発および寛解導入不能AMLについても「小児急性骨髄性白血病(AML)再発例および寛解導入不能例に対するFludarabineを含む寛解導入療法の有効性と安全性を検討する多施設共同第Ⅱ相臨床試験(AML-R11)」を遂行中である。
微小残存病変(MRD)をフローサイトメトリー法により検出する方法を確立し、現在、AML-R11、AML-D11で解析中である。AML-05臨床検体を用いて、種々の遺伝子解析結果と予後との相関を現在解析中であるが、NUP98-NSD1陽性例、MLL-AF6症例は予後不良であり、AML-12では高リスク群とした。
本邦におけるダウン症候群に発症した急性骨髄性白血病の寛解導入不能および再発例の疫学調査では、再寛解導入率が悪く、造血幹細胞移植での救済が難しいなど、予後不良であることが判明、この結果をBLOOD誌に発表した。AML-D05登録終了に伴い、治療はAML-D05と同様で寛解導入療法後のMRDを検証するAML- D11を遂行中である。平成24年12月31日時点で13例の試験登録がなされており、順調に臨床試験登録及びMRD解析を行っている。
APLについても次期臨床試験の参考にすべく、三酸化ヒ素(ATO)及びトロンモボデュリン製剤の使用実態に関する疫学研究を施行し、現在ATOを用いてアントラサイクリンの減量を、GOを導入して難治APLの治療成績の向上を目指すAML-P13臨床試験計画を完成した。
また、再発および寛解導入不能AMLについても「小児急性骨髄性白血病(AML)再発例および寛解導入不能例に対するFludarabineを含む寛解導入療法の有効性と安全性を検討する多施設共同第Ⅱ相臨床試験(AML-R11)」を遂行中である。
微小残存病変(MRD)をフローサイトメトリー法により検出する方法を確立し、現在、AML-R11、AML-D11で解析中である。AML-05臨床検体を用いて、種々の遺伝子解析結果と予後との相関を現在解析中であるが、NUP98-NSD1陽性例、MLL-AF6症例は予後不良であり、AML-12では高リスク群とした。
結論
AML-05の治療成績を解析し、治療成績をプロトコールに反映したAML-12を完成させた。AML-D11, AML-R11は順調に臨床試験登録を行っており、MRD解析も順調である。APLも次期臨床試験計画を完成させた。小児AMLの標準的治療法を確立し、JPLSGホームページや市民公開講座等により広く国民に公開することにより、国民の福祉向上に貢献する。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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