オピオイド治療効果に対する実測可能な薬理学的効果予測システムORPSの開発

文献情報

文献番号
201221036A
報告書区分
総括
研究課題名
オピオイド治療効果に対する実測可能な薬理学的効果予測システムORPSの開発
課題番号
H22-がん臨床-一般-037
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西尾 和人(近畿大学 医学部)
  • 大塚 正友(近畿大学 医学部堺病院)
  • 小山 敦子(近畿大学 医学部堺病院)
  • 山中 竹春(国立がん研究センター東病院)
  • 田中 京子(大阪府立大学 看護学部)
  • 今村 知世(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん性疼痛へのオピオイド治療に対して、治療効果の指標およびモニタリングできる実測可能な薬理学的バイオマーカーの開発し、実測可能な薬理学的効果予測システムORPS (Opioid treatment Response Prediction System)の開発を通じて、がん性疼痛の定量化システムに相補的に寄与することを目的とする。 前向き臨床試験においてがん性疼痛へのオピオイド治療を受ける患者を対象に臨床的・定量的エンドポイントと各種薬理学的バイオマーカー候補分子との相関を統合的に検討し、実測可能な薬理学的バイオマーカーを得る。
研究方法
<臨床試験の続行>
前向き臨床試験において、速放性モルヒネ製剤によるタイトレーションを行った後、定期投与としてモルヒネ必要用量を投与する。オピオイド治療は通常の治療指針に従って行う。モルヒネ治療前、治療後1日目、治療後8日目に採血、NRS (Numeric Rating Scale)、心理テストおよびQOL評価尺度などを施行する。末梢血は血漿分離およびDNA・RNA用に専用採血管で保存する。
収集する臨床情報は、次の項目である(年齢、性別、PS、疼痛部位、癌種、TNM分類、投薬内容、NSAIDsの種類、量、モルヒネ投与量、オピオイドと相互作用を起こす薬剤の投与の有無、除痛に関連し得る鎮痛補助薬の種類、量、モルヒネの必要用量、治療抵抗性の有無)。
<臨床検体の測定>
薬理学的バイオマーカーとしては、1)マイクロアレイを用いた薬力学的効果関連遺伝子の特定、2)モルヒネ関連代謝酵素の遺伝子多型、3)モルヒネ血中濃度、4)血中サイトカイン濃度を実施する。モルヒネ関連遺伝子の遺伝子多型は、ゲノムDNAを試料として測定する。通常使用されるdirect sequence法を用い、PCR法で当該遺伝子の任意のDNA配列を増幅し、シークエンス機器で塩基配列を同定する。モルヒネ薬物代謝の代謝経路にフォーカスを絞ったSNPs解析については、Affymetrix社のDMETチップ(薬物代謝関連231遺伝子上の1936個のSNPsを対象)を用いてSNPs解析を行う。マイクロアレイは、末梢血白血球を対象にオピオイド治療前後で変動する遺伝子および、治療抵抗性に関連する遺伝子を特定する際に用いる。Affymetrix 社製のGeneChip HG-U133 Plus2.0 array を用いる。血中サイトカイン測定はBioplex systemを用いて測定する。モルヒネ血中濃度測定は、ボンドエルートC18カートリッジカラム、高速液体クロマトグラフィーを用いて血漿中のモルヒネ濃度を測定する。
結果と考察
3年間で予定通り前期臨床試験50症例および後期臨床試験50症例の計100症例の登録と、100例x 3ポイント(治療前・Day 1・Day 8)の検体採取がすべて終了した。
今回特定されたCOMT, CYP3A4, UGT1A3, ABCC3, ABCB1のモルヒネ薬物代謝関連SNPsは、COMT以外は新規のモルヒネ効果予測バイオマーカーの候補SNPsであることが示された。この結果は前期臨床試験50症例に基づくものであり、検証症例である独立した後期臨床試験50症例で結果を検証する予定である。
前期臨床試験と同じ方法で26分子の血中サイトカイン測定研究の検証を行った。独立した後期臨床試験において、評価可能な49症例を対象にした。モルヒネ治療前後変化の検討では、3分子が治療後に有意に変動した。治療前血漿を試料とするモルヒネ必要量に対する検討では、6分子(IL-8, G-CSF, IL-1α, IL-6, IL-10, IP-10)の血中濃度が高容量のモルヒネ必要群で有意に低い結果が得られた。いくつかの分子は前回との結果に再現性が得られている。血中サイトカイン評価は、採血によるモルヒネ必要量の新しい予測方法として有望な結果と考えられる。
モルヒネ薬物代謝関連SNPsについては、CYP3A4, UGT1A3, ABCC3, ABCB1, COMTのSNPsは、新しいモルヒネ効果予測バイオマーカーである可能性を示した。一部の血中サイトカイン濃度とモルヒネ必要量の関連に対して、独立サンプルで再現性が確認された。本研究の結果は、将来のがん性疼痛の個別化医療に貢献できる可能性があると考える。
結論
本研究では、採血によるモルヒネ治療効果予測の新規候補因子を多数特定した。がん性疼痛の定量化システムに相補的に寄与可能な分子の選定およびプロトタイプの「薬理学的バイオマーカーによるオピオイド治療効果予測システム」を構築が、近日中に可能と考えている。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221036B
報告書区分
総合
研究課題名
オピオイド治療効果に対する実測可能な薬理学的効果予測システムORPSの開発
課題番号
H22-がん臨床-一般-037
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中川 和彦(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221036C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我々の開発した原発巣推定アルゴリズムは、大量の固形癌の遺伝子発現データを基に多施設共同臨床試験症例のデータを使用して進化してきた。本研究では、残りの60例の原発巣推定能力を検証することおよび臨床検体の組織の遺伝子発現バックグラウンドを考慮した機能向上を目指す。DEFINEは、現在エクセルベースの自動で原発巣推定結果を示すソフトウェアだが、原発巣推定アルゴリズムで使用した遺伝子群をさらに絞り込み20個前後のリアルタイムPCRベースの遺伝子発現値によって原発巣が特定できる診断キットの開発を目指す。
臨床的観点からの成果
臨床試験を継続、割り付けおよび治療が実施された103例の登録が現在まで得られているが、当初の目標症例120例を完遂する。
登録、検体採取、原発巣の推定、無作為化、治療に至る複雑な過程を有しているが、現在までの登録の経験より各施設に周知されるに至っており継続とする。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201221036Z