文献情報
文献番号
201221027A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T 細胞性白血病(ATL)の根治を目指した細胞療法の確立およびそのHTLV-1 抑制メカニズムの解明に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-がん臨床-一般-028
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鵜池 直邦(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 血液内科)
研究分担者(所属機関)
- 石田 高司(名古屋市立大学大学院医学研究科 )
- 内丸 薫(東京大学医科学研究所)
- 神奈木真理(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
- 瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所遺伝子医療研究部)
- 安永純一朗(京都大学ウイルス制御研究領域)
- 山中 竹春(国立がん研究センター東病院臨床開発センター)
- 渡辺信和(東京大学医科学研究所)
- 宇都宮 與(今村病院分院血液内科)
- 岡村 純(九州がんセンター小児科)
- 重松 明男(北海道大学病院検査輸血部)
- 末廣 陽子(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 血液内科 )
- 谷口 修一(虎の門病院血液科)
- 田口 潤(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 田野崎隆二(国立がん研究センター中央病院 輸血療法科)
- 崔 日承(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 血液内科 )
- 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科 血液内科)
- 中前 博久(大阪市立大学大学院医学研究科 )
- 長藤 宏司(久留米大学医学部内科学講座)
- 福田 隆浩(国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科)
- 森内 幸美(佐世保市立総合病院血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
急速に高齢化するATL患者に対する同種造血幹細胞を利用したRISTを最大限に活用するため、その幹細胞源を非血縁臍帯血にまで拡大し、その効果を享受してもらうことを目的として、第5期試験(NST-5)を計画した。RISTのHTLV-1排除機構を解明し、新たな免疫療法である自己樹状細胞を用いた樹状細胞ワクチン療法・ATL-DC-1(第I相)を3例で終了した。
研究方法
1) ATLに対する血縁者間末梢血幹細胞を利用した骨髄非破壊的前処置療法による同種造血幹細胞移植の安全性と有効性に関する検討
第3期臨床試験の実施:前処置を第2期試験と同一にした臨床試験を実施。主要評価項目は2年全生存率。計15例で登録を終了。
2) ATLに対する非血縁者間幹細胞を利用したRISTの検討
非血縁者間骨髄を利用した臨床試験の実施:骨髄バンクドナーを介した第I相試験で、前処置にTBI 2Gyを追加。GVHD予防は,タクロリムス+短期メソトレキセートを使用。100日の生存と完全キメラ達成を主要評価項目、7月で登録を終了。
3)ATLに対する非血縁臍帯血幹細胞を利用したRISTの検討
非血縁臍帯血を利用したRISTの前向き臨床試験(第5期試験、NST-5)の実施:フルダラビン・メルファラン・TBI(4Gy)を前処置に、タクロリムス・MMFをGVHD予防。他に適切なドナーを有さない50~65歳未満の急性型またはリンパ腫型の患者で、移植後100日までの生着かつ生存を主要評価。
4)免疫療法の検討
既治療ATL患者に対するTax特異的T細胞応答賦活化ペプチドパルス樹状細胞を用いた免疫療法第1相試験の実施:主要評価項目はワクチン投与の安全性。
5)移植療法に伴う基礎的解析
(5-1)ATLのゲノム異常
同一ATL患者で、末梢血腫瘍細胞とリンパ節腫瘍細胞間でゲノム異常様式が異なる症例が、70%に存在。
(5-2)FACSによるATL細胞と免疫細胞の同時解析
キメリズム動態、ATL細胞と制御性T細胞(Treg)のCCR4発現レベルの解析を12カラーのFACSを使用。
(5-3)TCSL1 抗体を組み込んだmulti-color FACS(HTLV-1 Analysis System;HAS)の確立
HASは、TSLC1 抗体を組み込むことでATL 細胞を高感度、かつ特異的に同定。
(5-4)ATL に対する骨髄非破壊的移植療法におけるプロウイルス解析
本研究班の移植例では完全型プロウイルスの頻度が高く、tax 変異および再発が少ない。
(5-5)CCR4 抗体治療がもたらす、ATL 患者における免疫病態変化の解明
ヒト化CCR4 抗体は健常な制御性T 細胞をも除去する。がん・精巣抗原も、ATL に対する免疫療法の標的抗原になりうる。
第3期臨床試験の実施:前処置を第2期試験と同一にした臨床試験を実施。主要評価項目は2年全生存率。計15例で登録を終了。
2) ATLに対する非血縁者間幹細胞を利用したRISTの検討
非血縁者間骨髄を利用した臨床試験の実施:骨髄バンクドナーを介した第I相試験で、前処置にTBI 2Gyを追加。GVHD予防は,タクロリムス+短期メソトレキセートを使用。100日の生存と完全キメラ達成を主要評価項目、7月で登録を終了。
3)ATLに対する非血縁臍帯血幹細胞を利用したRISTの検討
非血縁臍帯血を利用したRISTの前向き臨床試験(第5期試験、NST-5)の実施:フルダラビン・メルファラン・TBI(4Gy)を前処置に、タクロリムス・MMFをGVHD予防。他に適切なドナーを有さない50~65歳未満の急性型またはリンパ腫型の患者で、移植後100日までの生着かつ生存を主要評価。
4)免疫療法の検討
既治療ATL患者に対するTax特異的T細胞応答賦活化ペプチドパルス樹状細胞を用いた免疫療法第1相試験の実施:主要評価項目はワクチン投与の安全性。
5)移植療法に伴う基礎的解析
(5-1)ATLのゲノム異常
同一ATL患者で、末梢血腫瘍細胞とリンパ節腫瘍細胞間でゲノム異常様式が異なる症例が、70%に存在。
(5-2)FACSによるATL細胞と免疫細胞の同時解析
キメリズム動態、ATL細胞と制御性T細胞(Treg)のCCR4発現レベルの解析を12カラーのFACSを使用。
(5-3)TCSL1 抗体を組み込んだmulti-color FACS(HTLV-1 Analysis System;HAS)の確立
HASは、TSLC1 抗体を組み込むことでATL 細胞を高感度、かつ特異的に同定。
(5-4)ATL に対する骨髄非破壊的移植療法におけるプロウイルス解析
本研究班の移植例では完全型プロウイルスの頻度が高く、tax 変異および再発が少ない。
(5-5)CCR4 抗体治療がもたらす、ATL 患者における免疫病態変化の解明
ヒト化CCR4 抗体は健常な制御性T 細胞をも除去する。がん・精巣抗原も、ATL に対する免疫療法の標的抗原になりうる。
結果と考察
結果
1)現時点で9例生存中、1年生存率 69.6±10.4%、2年生存率 51.7±12.0%。
2)13/15が主要評価項目を達成し、100日以内の死亡はTMAが1例のみ。全生存期間は72.7%±1.7%。
3)6例の移植を実施。2013年4月1日時点で死亡例の報告無し。
4)免疫療法の検討
3症例が治療完了、2症例にPRと1例にSD。DLTなし。
5)
(5-1) 末梢血で慢性型と急性型ATLにはふたつのゲノム異常あり。一部は慢性型が悪性化するときに関与する可能性が示唆。
(5-2) 移植後再発の症例ではTSLC1 dim(+)でかつHTLV-1 のHBZ 領域の増幅(-)なる特異的な細胞集団が同定。
(5-3) tax を発現可能な症例は移植療法にまで到達する可能性が高く移植の有効性も高い。
(5-4) 抗原に対する免疫反応はMogamulizumab 治療後の患者で強くTreg 除去の関与が示唆。
考察
血縁者・非血縁者にドナーがいない場合、計画的に非血縁臍帯血RISTを施行することで、その安全性・有効性を第5期試験で検証する。樹状細胞ワクチン療法は3症例が実施され、第1例目が7ヶ月間PRを、第2、3例目おのおの4、1ヶ月間SDを維持。ATLに対する樹状細胞ワクチン療法としてはfirst-in-humanであり、メカニズムを現在検討中。
1)現時点で9例生存中、1年生存率 69.6±10.4%、2年生存率 51.7±12.0%。
2)13/15が主要評価項目を達成し、100日以内の死亡はTMAが1例のみ。全生存期間は72.7%±1.7%。
3)6例の移植を実施。2013年4月1日時点で死亡例の報告無し。
4)免疫療法の検討
3症例が治療完了、2症例にPRと1例にSD。DLTなし。
5)
(5-1) 末梢血で慢性型と急性型ATLにはふたつのゲノム異常あり。一部は慢性型が悪性化するときに関与する可能性が示唆。
(5-2) 移植後再発の症例ではTSLC1 dim(+)でかつHTLV-1 のHBZ 領域の増幅(-)なる特異的な細胞集団が同定。
(5-3) tax を発現可能な症例は移植療法にまで到達する可能性が高く移植の有効性も高い。
(5-4) 抗原に対する免疫反応はMogamulizumab 治療後の患者で強くTreg 除去の関与が示唆。
考察
血縁者・非血縁者にドナーがいない場合、計画的に非血縁臍帯血RISTを施行することで、その安全性・有効性を第5期試験で検証する。樹状細胞ワクチン療法は3症例が実施され、第1例目が7ヶ月間PRを、第2、3例目おのおの4、1ヶ月間SDを維持。ATLに対する樹状細胞ワクチン療法としてはfirst-in-humanであり、メカニズムを現在検討中。
結論
高齢者ATLに対するRISTは、その細胞源にかかわらず免疫機序による抗AATL効果により、潜時的にはそれを治癒にいたらしめる潜在能力を持っていると思われる。したがって、RISTの細胞源を広げていくことはもちろん、さらに樹状細胞ワクチン療法を可及的すみやかに推進し、新薬(抗CCR4抗体)とのコンビネーションをうまく取り入れれば、その免疫療法の感受性をあげることにより、治癒率の向上、しいてはATLの撲滅へと導いてくれる日はそう遠くないと思われる。
公開日・更新日
公開日
2013-06-03
更新日
-