限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201221024A
報告書区分
総括
研究課題名
限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田村 友秀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大江 裕一郎(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 森 清志(栃木県立がんセンター)
  • 岡本 浩明(横浜市立市民病院)
  • 横山 晶(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 樋田 豊明(愛知県がんセンター中央病院)
  • 里内 美弥子(兵庫県立がんセンター)
  • 今村 文生(大阪府立成人病センター)
  • 平島 智徳(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 安宅 信二(近畿中央胸部疾患センター・臨床研究センター)
  • 木浦 勝行(岡山大学病院)
  • 山本 信之(静岡県立静岡がんセンター)
  • 西尾 誠人(公益財団法人がん研究会有明病院)
  • 武田 晃司(大阪市立総合医療センター)
  • 尾下 文浩(神奈川県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局型小細胞肺がんを対象として、(1)「エトポシド+シスプラチン(EP)療法1コースと加速多分割胸部放射線療法(AH-TRT)の同時併用(EP/AH-TRT)後のアムルビシン+シスプラチン(AC)療法の安全性確認試験を行い、その後、 (2)EP/AH-TRT後の、シスプラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)療法とAC療法のランダム化第II相試験」を実施し、次期第III相試験の試験治療群を選択する。
研究方法
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)肺がん内科グループ38施設の多施設共同試験とし、主要評価項目は1年無増悪生存割合とする。対象は、限局型かつ初回治療の小細胞肺がんで、70才以下、ECOG Performance Status (PS) 0-1、測定可能病変を有し、主要臓器機能が保持された症例とする。治療内容は、EP/AH-TRTを実施後、CODE療法6週間あるいはAC療法3コースの治療を実施する。腫瘍評価項目は、1年無増悪生存割合。予定症例数は、一次登録80例。倫理的配慮においては、ヘルシンキ宣言や臨床研究に関する倫理指針等を遵守し、IRB承認、自由意思による文書同意、個人情報の厳守を必須とした。また、被験者の安全性の確保を最優先とした。
結果と考察
平成23年4月より、EP/AH-TRT後のCODE療法とAC療法のランダム化第II相試験の登録を開始した。平成25年3月までに68例が一次登録された。現時点で56例が、EP/AH-TRT療法を終え、二次登録(無作為化割り付け)に移行している。平成24年8月の定期モニタリングでは、二次登録に移行した38例の解析において、EP/AH-TRT療法の効果はCR 2、PR 24、NE 2であり、割り付けられた2群間(CODE群20例、AC群18例)での背景因子に大きな偏りはなかった。CODE群では、2例が治療中止、11例が3コースの治療完了、7例が治療中、AC群では、1例が治療中止、9例が3コースの治療完了、7例が治療中、1例がデータ未回収であった。Grade 3/4の貧血・血小板減少・好中球減少は、CODE群(n=13)、AC群(n=11)でそれぞれ62・39・69 %、18・36・91 %であった。Grade 3/4の非血液毒性は、CODE群で食欲不振1例、AC群でビリルビン上昇1例、ALT上昇1例、発熱性好中球減少5例、疲労1例であり、治療関連死を含む早期死亡の報告はなかった。追跡中の放射線治療晩期反応として、Grade 3の肺臓炎・呼吸困難を両群とも1例に認めている。
結論
「EP/AH-TRT後のCODE療法とAC療法のランダム化第II相試験」の症例登録を平成23年4月より開始し、平成25年3月まで68例が集積された。平成25年中に登録を完了する見込みである。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201221024B
報告書区分
総合
研究課題名
限局型小細胞肺がんに対する新たな標準的治療の確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田村 友秀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 大江 裕一郎(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 森 清志(栃木県立がんセンター)
  • 岡本 浩明(横浜市立市民病院)
  • 横山 晶(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 樋田 豊明(愛知県がんセンター中央病院)
  • 里内 美弥子(兵庫県立がんセンター)
  • 今村 文生(大阪府立成人病センター)
  • 平島 智徳(大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 安宅 信二(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター)
  • 木浦 勝行(岡山大学大学院)
  • 山本 信之(静岡県立静岡がんセンター)
  • 西尾 誠人(公益財団法人がん研究会有明病院)
  • 武田 晃司(大阪市立総合医療センター)
  • 野田 和正(神奈川県立がんセンター)
  • 尾下 文浩(神奈川県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限局型小細胞肺がんを対象として、 (1)「エトポシド+シスプラチン(EP)療法1コースと加速多分割胸部放射線療法(AH-TRT)の同時併用(EP/AH-TRT)後のアムルビシン+シスプラチン(AC)療法の安全性確認試験を行い、実施可能性を確認する。 (2)EP/AH-TRT後の、シスプラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)療法とAC療法のランダム化第II相試験」を実施し、次期第III相試験の試験治療群を選択する。
研究方法
(1) EP/AH-TRT後のAC療法の安全性確認試験 ランダム化第II相試験の治療群のひとつとなるEP/AH-TRT後のAC療法の安全性を確認する。6症例で忍容性を評価し、その後6-15例を追加して安全性を確認する。 (2) ランダム化第II相試験 全国38施設の多施設共同試験とし、主要評価項目は1年無増悪生存割合とする。対象は、限局型かつ初回治療の小細胞肺がんで、70才以下、ECOG Performance Status (PS) 0-1、測定可能病変を有し、主要臓器機能が保持された症例とする。治療内容は、EP/AH-TRTを実施後、CODE療法6週間あるいはAC療法3コースの治療を実施する。予定症例数は、80例、集積期間は1.5年、追跡5年とする。
結果と考察
(1)EP/AH-TRT後のAC療法の安全性確認試験の最終解析結果 本試験には21例が登録され、その実施可能性が確認された。21例全例がEP/AH-TRTを完了し、18例(86%)がAC療法3コースを完遂した。Grade 4の好中球減少は17例(81%)に認めたが、治療関連死はなかった。奏効率は95%、1年/2年無再発生存割合は62%/52%、1年/2年生存割合は95%/81%であった。 (2)ランダム化第II相試験 平成23年3月に最終承認を得た。平成23年5月に第1例目が登録され、平成25年3月末まで68例が一次登録されている。現時点56例が、EP/AH-TRT療法を終え、二次登録(無作為化割り付け)に移行している。平成24年8月の定期モニタリングでは、二次登録に移行した38例の解析において、EP/AH-TRT療法の効果はCR 2、PR 24、NE 2であり、割り付けられた2群間(CODE群20例、AC群18例)での背景因子に大きな偏りはなかった。CODE群では、2例が治療中止、11例が3コースの治療完了、7例が治療中、AC群では、1例が治療中止、9例が3コースの治療完了、7例が治療中、1例がデータ未回収であった。Grade 3/4の貧血・血小板減少・好中球減少は、CODE群(n=13)、AC群(n=11)でそれぞれ62・39・69 %、18・36・91 %であった。Grade 3/4の非血液毒性は、CODE群で食欲不振1例、AC群でビリルビン上昇1例、ALT上昇1例、発熱性好中球減少5例、疲労1例であり、治療関連死を含む早期死亡の報告はなかった。追跡中の放射線治療晩期反応として、Grade 3の肺臓炎・呼吸困難を両群とも1例に認めている。
結論
限局型小細胞肺がんに対する次期第III相試験の試験治療を選択する目的で、EP/AH-TRT後のAC療法の安全性を確認後、「EP/AH-TRT後のCODE療法とAC療法のランダム化第II相試験」を開始した。平成25年3月までに68例が登録されており、平成25年中に登録を完了する見込みである。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201221024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
限局型小細胞肺がんに対する標準治療は、エトポシド+シスプラチン療法と加速多分割胸部放射線療法の同時併用である。これに日本独自のシスプラチン+ビンクリスチン+ドキソルビシン+エトポシド(CODE)毎週投与法あるいはアムルビシン+シスプラチン(AP)療法を追加する治療は、現時点で最も効果が期待される治療法であるとともに、世界的にも注目を集めている。
臨床的観点からの成果
本研究およびこれに引き続く第III相試験の実施により、全国主要38参加施設の診療のレベルアップ、すなわち日本の肺がん診療レベルの向上および均てん化への貢献が期待される。我々は、本研究で評価する新治療法により、3年生存率が15%向上することを狙っており、大きな治療成績の進歩になると思われる。
ガイドライン等の開発
現時点でまだ成果は得られておらず、ガイドライン等への貢献はない。小細胞肺がんの治療体系は、我々の実施してきた一連の第III相試験の成果に基づくところが大きい。本研究において選択された治療法は、引き続き第III相試験で評価され、その成果はガイドラインに組み込まれると期待している。
その他行政的観点からの成果
小細胞肺がんは肺がんの15%程度を占め、その半数は限局期である。我々は、新たな治療法の確立により、治癒率を10-15%向上させることを見込んでいる。これは国民福祉への多大な貢献であると同時に、再発後の化学療法、放射線療法、支持療法とこのための入院などの医療費を削減する経済的効果も期待される。また、日本全国38施設で実施する本研究は、肺がん診療の均てん化およびレベルアップに大きく貢献するものと考える。
その他のインパクト
日本の小細胞肺がん臨床研究は世界のトップにあり、我々の実施した臨床試験は、小細胞肺がんの標準的治療の発展に大きく寄与してきた。本研究は世界的に注目されるものであり、今後得られる成果は、我が国の肺がん診療レベルの高さを改めて世界に示すとともに、医療の進歩のための国際協調の中で極めて大きな貢献となると考える。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
13件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201221024Z