文献情報
文献番号
201221005A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるがん患者等社会的支援の効果的な実施に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石川 睦弓(静岡県立静岡がんセンター 患者・家族支援研究部)
研究分担者(所属機関)
- 小林 国彦(埼玉医科大学 国際医療センター 呼吸器内科)
- 奥原 秀盛(静岡県立大学 看護学部)
- 大野 ゆう子(大阪大学大学院 医学系研究科 総合ヘルスプロモーション科学講座)
- 北村 周子(公益財団法人三重県健康管理事業センター 三重県がん相談支援センター)
- 河村 裕美(特定非営利活動法人 女性特有のガンのサポートグループ オレンジティ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん医療の進歩と医療制度の変化により、患者が医療やケアを受ける形態は、外来医療や在宅医療中心にシフトしつつある。また、治療の進歩により長期がん生存者が増加し、患者は自宅を中心とした地域社会で過ごす時間が多くなっている。そのため、[がん患者]と[生活者]の2つの側面が互いに影響し合い、がんの診断以降に変化をきたす日常生活や社会生活への戸惑いや混乱、医療者が傍らにいないことへの不安、医療者とのコミュニケーション不足、同病者とのコミュニケーションや交流の機会や時間の減少による孤独感など多様な悩みや負担がみられている。
そこで、本研究では、がん患者や家族に対する社会的支援の枠組みや項目について整理し標準化を進め、支援の具体的方法については、患者や家族の居住地が都市型地域か町村型地域かによって地域差が生じる可能性を検討し、地域特性をふまえた実証モデルを示し、効果的な社会的支援の手法を確立することをめざした。
そこで、本研究では、がん患者や家族に対する社会的支援の枠組みや項目について整理し標準化を進め、支援の具体的方法については、患者や家族の居住地が都市型地域か町村型地域かによって地域差が生じる可能性を検討し、地域特性をふまえた実証モデルを示し、効果的な社会的支援の手法を確立することをめざした。
研究方法
(1)実態調査結果や実証モデル検証結果にもとづき整理してきた地域で生活するがん患者や家族に対する社会的支援の枠組みのブラッシュアップを行った。(2)交流支援として全国的に広がりつつあるがん患者や家族等を対象としたがんサロンを取り上げ、先駆的事例紹介と課題や工夫に関するグループ討議を中心に構成した会議を開催し、サロン運営に関する事前調査とともに整理した。(3)地域における社会的支援の具体的支援モデルを示すために、運営母体が異なる支援活動に基づき、実証モデルの検証をすすめた。
(倫理面への配慮)
本研究においては、研究対象者に対する危険性を生じる状況は想定されていない。医療機関において、個人を対象としたアンケート調査が必要になった場合には、倫理指針に沿って研究計画を作成し、研究対象者に対する不利益を避け、人権上の擁護に配慮する。その場合、研究計画については研究実施機関の倫理審査委員会の承認を得、さらに、研究参加者の自由意思での同意を得たうえで実施する。
(倫理面への配慮)
本研究においては、研究対象者に対する危険性を生じる状況は想定されていない。医療機関において、個人を対象としたアンケート調査が必要になった場合には、倫理指針に沿って研究計画を作成し、研究対象者に対する不利益を避け、人権上の擁護に配慮する。その場合、研究計画については研究実施機関の倫理審査委員会の承認を得、さらに、研究参加者の自由意思での同意を得たうえで実施する。
結果と考察
最終年度である本年度は、第一に、医療者、がん体験者などさまざまな立場からの評価を得ながら、実践で利用可能ながん患者や家族に対する社会的支援に関連する項目の類型化と枠組みの構築を行った。がん患者や家族が抱える悩みや課題は、診療、からだ、こころ、暮らしの4項目、支援の種類は、相談、情報提供、交流の3項目に類型化した。支援のための整備項目は、職種や立場によるネットワーク内の役割分担の明確化など10項目を抽出した。
第二に、地域特性にあわせたサロン運営を検討するために、サロン運営に関する調査と支援実践にかかわる全国の医療者や患者団体等が参加する会議を行った。多くの施設や患者団体等は単独でがんサロンを運営しており、人材確保、広報、運営費用、人材育成(教育研修)などの課題を抱えながら実施している実態が明らかになった。サロン運営に関する調査と会議結果を整理し、地域特性に合わせて実践される多様なサロンの事例、課題や工夫をまとめた報告書を全国のがん診療連携拠点病院相談支援センターに配付し、サロン運営実践への活用を示した。
第三に、運営母体が異なる研究分担者の支援実証モデルの検証を行い、地域に根ざした交流活動の有用性、交流支援の多様性を示した。交通の利便性から生活圏が隣県に跨がる地域が複数ある県においては、行政機関が運営するがん相談支援センターがマネジメント機能も有することで、研修を受けた各地域のボランティアサポーター(患者会、家族、遺族、医療関係者等)を中心に5地域でサロンが運営され、地域の関係者(市町行政機関、地域医療関係者など)がサポートするという協働体制や役割分担が整理され、活動の拡大へとつながった。患者支援団体が運営するがんサロンは、10年間の活動を通じてブラッシュアップした運営手法、手順や基準等をパッケージ化し、他地域での検証を実施した。一年間の継続支援を行うなかで、地域にピアサポートグループ設立を希望する3県それぞれの地域性をふまえ、パッケージ化された内容を基本としながらも、広報、スタッフ養成、会の運営方法などの手法を地域性にあわせて修正や変更する必要があることを確認した。
第二に、地域特性にあわせたサロン運営を検討するために、サロン運営に関する調査と支援実践にかかわる全国の医療者や患者団体等が参加する会議を行った。多くの施設や患者団体等は単独でがんサロンを運営しており、人材確保、広報、運営費用、人材育成(教育研修)などの課題を抱えながら実施している実態が明らかになった。サロン運営に関する調査と会議結果を整理し、地域特性に合わせて実践される多様なサロンの事例、課題や工夫をまとめた報告書を全国のがん診療連携拠点病院相談支援センターに配付し、サロン運営実践への活用を示した。
第三に、運営母体が異なる研究分担者の支援実証モデルの検証を行い、地域に根ざした交流活動の有用性、交流支援の多様性を示した。交通の利便性から生活圏が隣県に跨がる地域が複数ある県においては、行政機関が運営するがん相談支援センターがマネジメント機能も有することで、研修を受けた各地域のボランティアサポーター(患者会、家族、遺族、医療関係者等)を中心に5地域でサロンが運営され、地域の関係者(市町行政機関、地域医療関係者など)がサポートするという協働体制や役割分担が整理され、活動の拡大へとつながった。患者支援団体が運営するがんサロンは、10年間の活動を通じてブラッシュアップした運営手法、手順や基準等をパッケージ化し、他地域での検証を実施した。一年間の継続支援を行うなかで、地域にピアサポートグループ設立を希望する3県それぞれの地域性をふまえ、パッケージ化された内容を基本としながらも、広報、スタッフ養成、会の運営方法などの手法を地域性にあわせて修正や変更する必要があることを確認した。
結論
対面を主とする交流支援は、利用者のニーズの多様性、一回の参加者は少人数のサロンが主流、ファシリテーター研修の必要性等の傾向があることから、一施設や団体ごとに独立した運営には限界がある。そこで、社会的支援に関する地域格差を埋め、支援の質を確保するためには、都道府県単位や近接地域でのネットワーク構築による相互補完と情報共有、都道府県単位のファシリテーター研修の必要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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