がん対策に資するがん患者の療養生活の質の評価方法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201221004A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策に資するがん患者の療養生活の質の評価方法の確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮下 光令(東北大学 大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院緩和支持治療科)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援研究部)
  • 藤澤 大介(国立がん研究センター精神腫瘍学(国立がん研究センター東病院))
  • 的場 元弘(国立がん研究センター中央病院手術・緩和医療部緩和医療科)
  • 中保 利通(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座緩和医療学分野(東北大学病院緩和医療部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がん患者の療養生活の質の評価方法を確立することを目標に、以下の研究課題に取り組んだ。(1)受療行動調査を利用した我が国のがん患者の療養生活の質を評価する方法を開発し、科学的に検証し、確立する。(2)外来化学療法を受ける患者に対する緩和ケアスクリーニング方法を確立する。(3)長期サバイバーの療養生活の質の評価方法を確立し、その実態と関連要因を明らかにする。(4)鎮痛薬の処方医と看護師にとって有用な疼痛の評価指標を探索・開発する。(5)緩和ケアの構造・プロセス、アウトカム評価における代理評価の信頼性を検証する。(6)がん患者によるがん医療の質の構造・プロセス評価尺度の開発とQOL評価尺度の検討を行う。(7)一般市民を対象に受療行動調査と同様の質問を用いて療養生活の質の調査を実施し、一般市民の健康状態を把握する。(8)がん患者の療養生活の質の評価としての国民生活基礎調査の利用可能性の検討を行う。(9)がん患者の家族のQOL尺度であるCQOLC日本語版の信頼性と妥当性を検証する。
研究方法
研究方法はアンケート調査、インタビュー調査などを用いた。調査はすべて倫理委員会の承認後に実施した。
結果と考察
本研究の結果、(1)受療行動調査によりがん患者の療養生活の質を患者のQOL、満足度という側面から評価できる方法を確立した。この方法は、調査の実施可能性、サンプルの代表性及び調査項目の妥当性・信頼性が高く、がん患者の療養生活の質を全国的かつ継時的に評価していくうえで科学的に妥当な方法といえる。26年度以降も同項目を用いて受療行動調査を実施していくことで、我が国のがん患者の療養生活の質の評価を経時的に評価でき、我が国のがん政策に反映させていくことができると考えられる。(2)外来化学療法患者の頻度の高い症状である疼痛・倦怠感・気持ちのつらさでをスクリーニングするための簡便な調査票と、実施手順を開発した。質問票は実施可能であり、質問票によるスクリーニングで約20%程度の緩和ケアニードをすくい上げることができることが明らかとなった。患者の意識と運用するための人員が確保することが運用の上での課題であることが明らかとなった。(3)がんの長期生存者のQOLを評価する尺度を開発した。術後5年を経過した非小細胞肺がん患者の大うつ病の有病率は、一般人口の12か月期間有病率と、QOLも、健常成人、乳がんの長期生存者と同程度と示唆された。サバイバーの約60%がスティグマ・社会生活上の差別・不利を体験していることが明らかとなった。(4)がん疼痛治療の成績を向上するための評価指標を探索・試作検証した。この方法は、従来のPMI評価より有用な臨床フィードバック指標となりうる可能性が示唆された。(5)終末期がん患者において、QOC尺度であるCESとQOL尺度であるGDIでの患者・家族間の評価者間信頼性は許容できること、家族・遺族間の評価者間信頼性は高いことが示唆された。(6)患者の視点によるがん医療の質の構造・プロセス評価尺度として12領域36項目から成るCCESを開発し、高い信頼性・妥当性が示された。(7)受療行動調査の項目の一般市民による分布および一般市民の健康状態が明らかになった。(8)国民生活基礎調査は、がん患者の療養生活を評価する上で、代表性のある調査であり、療養生活の質を経時的に評価していくうえで有用な指標であることが示唆された。(9)CQOLCの日本語版として,「Ⅰ.心理的負担感(10項目)」「Ⅱ.時間的拘束感(8項目)」「Ⅲ.介護肯定感(6項目)」「Ⅳ.経済的負担感(3項目)」の4ドメイン,27項目から構成される尺度が同定された。CQOLCの日本語版として,「Ⅰ.心理的負担感(10項目)」「Ⅱ.時間的拘束感(8項目)」「Ⅲ.介護肯定感(6項目)」「Ⅳ.経済的負担感(3項目)」の4ドメイン,27項目から構成される尺度が同定された。
結論
これらの結果を総合して、本研究班ではがん患者の療養生活の質の評価方法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221004B
報告書区分
総合
研究課題名
がん対策に資するがん患者の療養生活の質の評価方法の確立に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮下 光令(東北大学 大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森田 達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センターがん対策情報センター がん医療支援研究部)
  • 藤澤 大介(国立がん研究センター精神腫瘍学(国立がん研究センター東病院))
  • 的場 元弘(国立がん研究センター中央病院 手術・緩和医療部 緩和医療科)
  • 中保 利通(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座 緩和医療学分野 (東北大学病院 緩和医療部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がん患者の療養生活の質の評価方法を確立することを目標に、以下の研究課題に取り組んだ。(1)受療行動調査を利用した我が国のがん患者の療養生活の質を評価する方法を開発し、科学的に検証し、確立する。(2)外来化学療法を受ける患者に対する緩和ケアスクリーニング方法を確立する。(3)長期サバイバーの療養生活の質の評価方法を確立し、その実態と関連要因を明らかにする。(4)鎮痛薬の処方医と看護師にとって有用な疼痛の評価指標を探索・開発する。(5)緩和ケアの構造・プロセス、アウトカム評価における代理評価の信頼性を検証する。(6)がん患者によるがん医療の質の構造・プロセス評価尺度の開発とQOL評価尺度の検討を行う。(7)一般市民を対象に受療行動調査と同様の質問を用いて療養生活の質の調査を実施し、一般市民の健康状態を把握する。(8)がん患者の療養生活の質の評価としての国民生活基礎調査の利用可能性の検討を行う。(9)がん患者の家族のQOL尺度であるCQOLC日本語版の信頼性と妥当性を検証する。
研究方法
研究方法はアンケート調査、インタビュー調査などを用いた。調査はすべて倫理委員会の承認後に実施した。
結果と考察
本研究の結果、(1)受療行動調査によりがん患者の療養生活の質を患者のQOL、満足度という側面から評価できる方法を確立した。この方法は、調査の実施可能性、サンプルの代表性及び調査項目の妥当性・信頼性が高く、がん患者の療養生活の質を全国的かつ継時的に評価していくうえで科学的に妥当な方法といえる。26年度以降も同項目を用いて受療行動調査を実施していくことで、我が国のがん患者の療養生活の質の評価を経時的に評価でき、我が国のがん政策に反映させていくことができると考えられる。(2)外来化学療法患者の頻度の高い症状である疼痛・倦怠感・気持ちのつらさでをスクリーニングするための簡便な調査票と、実施手順を開発した。質問票は実施可能であり、質問票によるスクリーニングで約20%程度の緩和ケアニードをすくい上げることができることが明らかとなった。患者の意識と運用するための人員が確保することが運用の上での課題であることが明らかとなった。(3)がんの長期生存者のQOLを評価する尺度を開発した。術後5年を経過した非小細胞肺がん患者の大うつ病の有病率は、一般人口の12か月期間有病率と、QOLも、健常成人、乳がんの長期生存者と同程度と示唆された。サバイバーの約60%がスティグマ・社会生活上の差別・不利を体験していることが明らかとなった。(4)がん疼痛治療の成績を向上するための評価指標を探索・試作検証した。この方法は、従来のPMI評価より有用な臨床フィードバック指標となりうる可能性が示唆された。(5)終末期がん患者において、QOC尺度であるCESとQOL尺度であるGDIでの患者・家族間の評価者間信頼性は許容できること、家族・遺族間の評価者間信頼性は高いことが示唆された。(6)患者の視点によるがん医療の質の構造・プロセス評価尺度として12領域36項目から成るCCESを開発し、高い信頼性・妥当性が示された。(7)受療行動調査の項目の一般市民による分布および一般市民の健康状態が明らかになった。(8)国民生活基礎調査は、がん患者の療養生活を評価する上で、代表性のある調査であり、療養生活の質を経時的に評価していくうえで有用な指標であることが示唆された。(9)CQOLCの日本語版として,「Ⅰ.心理的負担感(10項目)」「Ⅱ.時間的拘束感(8項目)」「Ⅲ.介護肯定感(6項目)」「Ⅳ.経済的負担感(3項目)」の4ドメイン,27項目から構成される尺度が同定された。CQOLCの日本語版として,「Ⅰ.心理的負担感(10項目)」「Ⅱ.時間的拘束感(8項目)」「Ⅲ.介護肯定感(6項目)」「Ⅳ.経済的負担感(3項目)」の4ドメイン,27項目から構成される尺度が同定された。
結論
これらの結果を総合して、本研究班ではがん患者の療養生活の質の評価方法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
受療行動調査によりがん患者の療養生活の質を患者のQOL、満足度という側面から評価できる方法を確立した。その他、がんの長期生存者のQOLを評価する尺度の開発、終末期がん患者の遺族による療養生活の質の評価の信頼性の検討、患者の視点によるがん医療の質の構造・プロセス評価尺度の開発、受療行動調査の項目の一般市民に対する調査、国民生活基礎調査の利用可能性の検討、がん患者の家族のQOL尺度であるCQOLC日本語版の開発を行った。
臨床的観点からの成果
本研究班で開発したがん患者の療養生活の質の評価方法はがん患者の療養生活の質を全国的かつ継時的に評価していくうえで科学的に妥当な方法といえる。今後も同項目を用いて受療行動調査を実施していくことで、我が国のがん患者の療養生活の質の評価を経時的に評価でき、我が国のがん政策に反映させていくことができると考えられる。また、臨床的には外来化学療法患者の頻度の高い症状である疼痛・倦怠感・気持ちのつらさでをスクリーニングするための簡便な調査票と実施手順の開発も行った。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
厚生労働省がん対策推進協議会および緩和ケア推進検討会の参考人として研究の成果の一部を発表した。本研究班で開発した方法はがん患者の療養生活の質を全国的かつ継時的に評価していくうえで科学的に妥当な方法であり、今後も同項目を用いて受療行動調査を実施していくことで、我が国のがん患者の療養生活の質の評価を経時的に評価でき、我が国のがん政策に反映させていくことができると考えられる。
その他のインパクト
患者会代表者、がん医療関係者、行政関係者、研究者などを招待し、研究成果報告会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
清水恵, 佐藤一樹, 加藤雅志,他
受療行動調査における療養生活の質の評価のための項目のがん患者における内容的妥当性と結果の解釈可能性に関する基礎的検討
Palliat Care Res , 10 (4) , 223-227  (2015)
原著論文2
Sato K, Shimizu M, Miyashita M.
Which quality of life instruments are preferred by cancer patients in Japan? Comparison of the European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-C30, and the Functional Assessment of Cancer Therapy-General
Supportive Care in Cancer , 22 (12) , 3135-3141  (2014)
原著論文3
Fujisawa D, Umezawa S, Basaki-Tange A, et al.
Smoking status, service use and associated factors among Japanese cancer survivors - a web-based survey
Suppor Care Cancer , 22 (12) , 3125-3134  (2014)
原著論文4
Miyajima K, Fujisawa D, Yoshimura K, et al.
Association between quality of end-of-life care and possible complicated grief among bereaved family members
J Palliat Med , 17 (9) , 1025-1031  (2014)
原著論文5
Maeda I,Tsuneto S, Miyashita M, et al.
Progressive development and enhancement of palliative care services in Japan: nationwide surveys of designated cancer care hospitals for three consecutive years
J Pain Symptom Manage , 48 (3) , 364-373  (2014)
原著論文6
Miyashita M, Wada M, Morita T, et al.
Care Evaluation Scale-Patient version: Measuring the quality of the structure and process of palliative care from the patient’s perspective
J Pain Symptom Manage , 48 (1) , 110-118  (2014)
原著論文7
木下里美, 藤澤大介, 中島聡美, 他
救急外来とICUで死別を体験した 家族の複雑性悲嘆:一般病棟との比較
日本集中治療医学会雑誌 , 21 , 199-203  (2014)
原著論文8
安藤早紀, 原田真里子, Weitzner MA, et al.
Caregiver Quality of Life Index - Cancer(CQOLC)日本語版の信頼性・妥当性の検証
Palliat Care Res , 8 (2) , 286-292  (2013)
原著論文9
Mikoshiba N, Miyashita M, Sakai T, et al.
Depressive symptoms after treatment in hepatocellular carcinoma survivors: prevalence, determinants, and impact on health-related quality of life
Psychooncology , 22 (10) , 2347-2353  (2013)
原著論文10
Deno M, Miyashita M, Fujisawa D, et al.
The influence of alexithymia to psychological distress according to the seriousness of complicated grief and the time from bereavement in the Japanese general population
J Affect Disord , 149 (1-3) , 202-208  (2013)
原著論文11
Kinoshita S, Miyashita M.
Evaluation of end-of-life cancer care in the ICU: perceptions of the bereaved family in Japan
Am J Hosp Palliat Med , 30 (3) , 225-230  (2013)
原著論文12
宮内貴子, 宮下光令, 山口拓洋.
無作為化クロスオーバー試験による進行期がん患者の 倦怠感に対するリフレクソロジーの有用性の検討
がん看護 , 18 (3) , 395-400  (2013)
原著論文13
Deno M, Tashiro M, Miyashita M, et al.
The mediating effects of social support and self-efficacy on the relationship between social distress and psychological symptoms in head and neck cancer outpatients with facial disfigurement
Psychooncology , 21 (2) , 144-152  (2012)
原著論文14
Ito M, Nakajima S, Fujisawa D, et al.
Brief measure for screening complicated grief: Reliability and discriminant validity
PLoS ONE , 7 (2) , e31209-  (2012)
原著論文15
Deno M, Tashiro M, Miyashita M, et al.
Developing the social distress scale for head and neck cancer outpatients in Japan
Palliative & Supportive Care , 9 (2) , 165-172  (2011)
原著論文16
Deno M, Miyashita M, Fujisawa D, et al.
The relationships between complicated grief, depression, and alexithymia with the seriousness of complicated grief in Japanese general population
J Affect Disord , 135 , 122-127  (2011)
原著論文17
杉浦宗敏, 宮下光令, 佐藤一樹, 他
がん診療連携拠点病院における緩和ケア提供体制と薬剤業務の困難感
日本緩和医療薬学雑誌 , 4 (4) , 103-109  (2011)
原著論文18
杉浦宗敏, 宮下光令, 佐藤一樹, 他
がん診療連携拠点病院における緩和ケア提供に関する薬剤業務等の全国調査
日本緩和医療薬学雑誌 , 4 (1) , 23-30  (2011)
原著論文19
Fujisawa D, Miyashita M, Nakajima S, et al.
Prevalence and determinants of complicated grief in general population
J Affect Disord , 127 (1-3) , 352-358  (2010)
原著論文20
Sugiura M, Miyashita M, Sato K, et al.
Analysis of factors related to the use of opioid analgesics in regional cancer centers in Japan
J Palliat Med , 13 (7) , 841-846  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2016-06-24

収支報告書

文献番号
201221004Z