がん医療の均てん化に資する放射線治療の推進及び品質管理に係る研究

文献情報

文献番号
201221001A
報告書区分
総括
研究課題名
がん医療の均てん化に資する放射線治療の推進及び品質管理に係る研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石倉 聡(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科放射線医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿間 直人(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 内田 伸恵(鳥取県立中央病院)
  • 辻野 佳世子(兵庫県立がんセンター)
  • 幡野 和男(千葉県がんセンター)
  • 西村 哲夫(静岡県立静岡がんセンター)
  • 戸板 孝文(琉球大学 医学部)
  • 中村 和正(九州大学 大学院医学研究院)
  • 大野 達也(群馬大学 重粒子医学研究センター)
  • 石川 正純(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 成田 雄一郎(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 遠山 尚紀(千葉県がんセンター)
  • 黒田 勇気(山形大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん医療の均てん化を図るにあたっては、診療の質の施設間差を是正し、現状よりも高いレベルに向上し標準化する必要がある。本研究では、先進諸国に比較して遅れており、がん対策基本法および同基本計画の重点課題でもある放射線治療の推進および質の向上に必要ながん診療連携拠点病院の機能強化ならびに人材育成に関して、効率的かつ実効性のある対策を立案、実施することを目的とする。
研究方法
以下四つの小班を構成し研究を行う。
1) 「放射線治療の推進に必要な拠点病院の機能に係る研究」では、今後拠点病院が実施すべき放射線治療の内容およびその実現に必要な対策等に関する政策提言を行う。
2) 「地域連携ネットワークの推進による拠点病院の機能強化ならびに人材育成に係る研究」では、専門医不足が顕著である地域に重点をおいた、都道府県および地域がん診療連携拠点病院が連携した放射線治療専門医の育成スキームのモデルを作成し、実施地域を展開する。
3) 「放射線治療モダリティ別の拠点病院支援プログラムに係る研究」では、先端的な治療である強度変調放射線治療(IMRT)や地域間格差の著明な小線源治療の標準化・均てん化に必要な対策の提示ならびに拠点病院の指導者育成を目的とした研修会・技術指導等を実施する。
4) 「放射線治療の品質管理・第三者評価に係る研究」では、安全かつ質の高い放射線治療を実施するために必要な放射線治療の品質管理プログラム及び第三者評価プログラムの確立と運用ならびに国際標準の品質管理を確立するための国際協調を図る。
結果と考察
1) H23年度に今後拠点病院が実施すべき放射線治療の内容、備えるべき人員、設備体制等、「がん診療連携拠点病院の指定要件の改訂に対する提言」を取り纏め、H24年度は本提言と現状との乖離を把握した結果、均てん化と共にIMRTや小線源治療など一部機能に関しては集約化も必要であり、一定の猶予期間とともに、常勤医が確保できない地域がん診療連携拠点病院では都道府県がん診療連携拠点病院等からの診療支援体制を構築するなど、各地域の状況に即した連携体制の確立が必要と考えられた。
2) 東北6県では「東北がんネットワーク」が構築され、ホームページ、メーリングリストを用いた放射線治療の実施状況の公開と患者紹介、治療プロトコールの共有、研修会の実施、放射線治療の遠隔支援などが積極的に行われ、県境を越えた連携強化と人材育成が図られるようになった。また島根県では、県内の放射線治療のネットワーク化計画が行政レベルで具体化した。地域の状況によっては、都道府県単位を越えたネットワークの活用も重要と考えられた。
3) 先端的な高精度放射線治療であるIMRTの普及状況を見るために、都道府県がん診療連携拠点病院51施設にアンケート調査を実施し49施設(96%)から回答を得た。集計の結果、1)都道府県がん診療連携拠点病院の63%がIMRTを実施しており、3年以内に実施予定を含めると90%の施設で対応可能、2) 既にIMRTの実施において実施件数を増加するには、医療スタッフの増員および装置の増加が必要、3) IMRT未実施施設においては導入のための知識・技術および装置の更新が課題であり、IMRTの普及には、都道府県拠点病院においても研修会等さらなる取り組みが必要と考えられた。
 小線源治療においては、海外で普及が進む画像誘導小線源治療(IGBT)を我が国でも導入するため、国内IGBT実施施設の視察ならびにアンケートによる現状調査を実施し、26%の施設で導入を検討していること、医療機器の購入に加え人材不足の解消が必要であることが示された。
4) IMRTの品質管理に関して、前立腺がん臨床試験参加10施設に国際標準に準じた品質保証・第三者評価としてIMRTファントムを用いた郵送線量測定による質の保証を実施した。また新たなIMRT線量検証判定手法を開発し、IMRTコミッショニングの第三者評価法を提案した。
結論
これらの研究成果はいずれもがん医療の均てん化、放射線治療の推進及び品質管理おいて重要なものである。また、本研究により先進諸国に比較して遅れている我が国の放射線治療の推進および質の向上ならびに一部機能のセンター化、ひいてはがんの治療成績向上につながり、行政および社会に多大な貢献をすることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221001B
報告書区分
総合
研究課題名
がん医療の均てん化に資する放射線治療の推進及び品質管理に係る研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石倉 聡(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科放射線医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿間 直人(埼玉医科大学国際医療センター)
  • 内田 伸恵(鳥取県立中央病院)
  • 辻野 佳世子(兵庫県立がんセンター)
  • 幡野 和男(千葉県がんセンター)
  • 西村 哲夫(静岡県立静岡がんセンター)
  • 戸板 孝文(琉球大学 医学部)
  • 中村 和正(九州大学 大学院医学研究院)
  • 大野 達也(群馬大学 重粒子医学研究センター)
  • 石川 正純(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 遠山 尚紀(千葉県がんセンター)
  • 根本 建二(山形大学 医学部)
  • 中山 優子(神奈川県立がんセンター )
  • 峯村 俊行(国立がん研究センター)
  • 福村 明史(放射線医学総合研究所)
  • 野宮 琢磨(山形大学 医学部)
  • 成田 雄一郎(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 黒田 勇気(山形大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、放射線治療の推進および質の向上に必要ながん診療連携拠点病院の機能強化ならびに人材育成を図ることを目的とする。
研究方法
以下四つの小班を構成し研究を行う。
1) 「放射線治療の推進に必要な拠点病院の機能に係る研究」:今後拠点病院が実施すべき放射線治療の内容およびその実現に必要な対策等に関する政策提言を行う。
2) 「地域連携ネットワークの推進による拠点病院の機能強化ならびに人材育成に係る研究」:専門医不足が顕著である地域に重点をおいた、都道府県および地域がん診療連携拠点病院が連携した放射線治療専門医の育成スキームのモデルを作成し、実施地域を展開する。
3) 「放射線治療モダリティ別の拠点病院支援プログラムに係る研究」:先端的な治療である強度変調放射線治療(IMRT)や地域間格差の著明な小線源治療の標準化・均てん化に必要な対策の提示ならびに拠点病院の指導者育成を目的とした研修会を実施する。
4) 「放射線治療の品質管理・第三者評価に係る研究」:安全かつ質の高い放射線治療を実施するために必要な放射線治療の品質管理プログラム及び第三者評価プログラムの確立と運用ならびに国際標準の品質管理を確立するための国際協調を図る。
結果と考察
1) H23年度に今後拠点病院が実施すべき放射線治療の内容、備えるべき人員、設備体制等、「がん診療連携拠点病院の指定要件の改訂に対する提言」を取り纏め、H24年度は本提言と現状との乖離を把握した結果、均てん化と共にIMRTや小線源治療など一部機能に関しては集約化も必要であり、一定の猶予期間とともに、常勤医が確保できない地域がん診療連携拠点病院では都道府県がん診療連携拠点病院等からの診療支援体制を構築するなど、各地域の状況に即した連携体制の確立が必要と考えられた。
2) 東北6県では「東北がんネットワーク」が構築され、ホームページ、メーリングリストを用いた放射線治療の実施状況の公開と患者紹介、治療プロトコールの共有、研修会の実施、放射線治療の遠隔支援などが積極的に行われ、県境を越えた連携強化と人材育成が図られるようになった。北部九州地区でも同様の連携強化が図られた。また島根県では、県内の放射線治療のネットワーク化計画が行政レベルで具体化した。限られた医療資源・人資源を有効に活用していくためには、地域の状況によって都道府県単位を越えたネットワークの活用も重要と考えられた。
3) 先端的な治療であるIMRTの安全な普及に向けて、放射線治療医および診療放射線技師を対象とした研修会を開催した。またIMRTの普及状況を見るために、都道府県がん診療連携拠点病院51施設に実施したアンケート調査の結果、1)都道府県がん診療連携拠点病院の63%がIMRTを実施しており、3年以内に実施予定を含めると90%の施設で対応可能、2) 既にIMRTの実施において実施件数を増加するには、医療スタッフの増員および装置の増加が必要、3) IMRT未実施施設においては導入のための知識・技術および装置の更新が課題であり、IMRTの普及には、都道府県拠点病院においても研修会に加えてさらなる取り組みが必要と考えられた。
 小線源治療においては、子宮頸癌腔内照射において施設訪問、手技の相互比較を行うとともに、前処置に関する患者アンケートを実施し患者満足度の評価および改善点の検討、鎮痛・鎮静に関する現状調査を行い、鎮痛・鎮静マニュアルの作成を開始した。また手技のデモンストレーションを含む研修用DVDを作成し、腔内照射保有全173施設に送付した。海外で普及が進む画像誘導小線源治療(IGBT)を我が国でも導入するため、国内IGBT実施施設の視察ならびにアンケートによる現状調査を実施し、26%の施設で導入を検討していること、医療機器の購入に加え人材不足の解消が必要であることが示された。
4) 安全かつ質の高い放射線治療を実施するために必要な品質管理、品質保証の確立に向けて、英国による報告書「Toward Safer Radiotherapy」の翻訳資料を日本放射線腫瘍学会のセミナー等の参加者約750名に配布し、医療安全に対する啓発を行った。IMRTの品質管理に関して、前立腺がん臨床試験参加10施設に国際標準に準じた品質保証・第三者評価としてIMRTファントムを用いた郵送線量測定による質の保証を行うとともに、第三者評価手法の確立を図った。また新たなIMRT線量検証判定手法を開発し、IMRTコミッショニングの第三者評価法を提案した。
結論
これらの研究成果はいずれもがん医療の均てん化、放射線治療の推進及び品質管理おいて重要なものであり、我が国の放射線治療の推進および質の向上ならびに一部機能のセンター化、ひいてはがんの治療成績向上など行政および社会に多大な貢献をすることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先端的放射線治療である強度変調放射線治療(IMRT)における研修会の実施、国際標準に準じた品質保証・第三者評価として郵送線量測定による質の保証ならびに第三者評価手法の確立を図ったことにより、今後先端的放射線治療を用いた臨床研究実施に必要な基盤形成に貢献した。
臨床的観点からの成果
東北6県では「東北がんネットワーク」が構築され、ホームページ、メーリングリストを用いた放射線治療の実施状況の公開と患者紹介、治療プロトコールの共有、研修会の実施、放射線治療の遠隔支援などが積極的に行われ、県境を越えた連携強化と人材育成が図られるようになった。北部九州地区でも同様の連携強化が図られた。また島根県では、県内の放射線治療のネットワーク化計画が行政レベルで具体化した。これらにより均てん化と質の向上が図られた。
ガイドライン等の開発
今後がん診療連携拠点病院が実施すべき放射線治療の内容、備えるべき人員、設備体制等をまとめた、「がん診療連携拠点病院の指定要件の改訂に対する提言」を作成した。
子宮頸癌腔内照射の手技のデモンストレーションを含む研修用DVDを作成し配布した。
安全かつ質の高い放射線治療を実施するために必要な品質管理、品質保証の確立に向けて、英国による報告書「Toward Safer Radiotherapy」の翻訳資料を作成し配布した。
その他行政的観点からの成果
拠点病院の機能強化に必要な政策提言、地域ネットワークの構築、専門的技能を有する人材育成、治療技術の標準化、国際標準の品質管理の確立等の成果は、我が国の放射線治療の推進および質の向上ならびにがん医療の均てん化に資するものであり、ひいてはがんの治療成績向上につながることも期待される。
その他のインパクト
2011年、日本放射線腫瘍学会のシンポジウム「放射線治療の推進に必要な施設の整備 -がん対策基本計画への提言-」において、本研究班の成果を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
34件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
辻野佳世子,戸板孝文,幡野和男,他
子宮頸癌腔内照射における患者満足度アンケート調査報告
臨床放射線 , 58 , 605-613  (2013)
原著論文2
Shikama N, Tsujino K, Nakamura K, et al.
Survey of advanced radiation technologies used at designated cancer care hospitals in Japan.
Jpn J Clin Oncol , 44 , 72-77  (2014)
10.1093/jjco/hyt161
原著論文3
辻野佳世子,大野達也,戸板孝文,他
子宮頸癌腔内照射における鎮痛鎮静法についての全国調査
臨床放射線 , 59 , 1226-1233  (2014)
原著論文4
Ohno T, Toita T, Tsujino K, et al.
A questionnaire-based survey on three-dimensional image-guided brachytherapy for cervical cancer in Japan: advances and obstacles.
J Radiat Res , 56 , 897-903  (2015)
10.1093/jrr/rrv047

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201221001Z