医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の開発

文献情報

文献番号
201220077A
報告書区分
総括
研究課題名
医科歯科連携のチーム医療におけるオーラルケア法の開発
課題番号
H24-3次がん-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
別所 和久(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石井 孝典(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 武井 典子(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 石川 正夫(公益財団法人ライオン歯科衛生研究所)
  • 中山 健夫(京都大学 医学研究科)
  • 堀 信介(京都大学 医学研究科)
  • 高橋 克(京都大学 医学研究科)
  • 家森 正志(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,457,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年度診療報酬改定において、がん患者等の周術期の口腔機能を管理する観点から、歯科衛生士が月に数回の専門的口腔清掃を行うよりも口腔ケア・マネジメントを行った方が、施設全体の口腔環境が改善するという報告(菊谷ら,2008.)が根拠となり、「周術期口腔機能管理料」が新設された。一方、申請者らは、某病院の関連施設において歯科医師・歯科衛生士が摂食・嚥下機能訓練を含むオーラルケアを多職種と連携・実践することで、肺炎による入院患者数・在院日数が半減し、医療費を73%削減できることを確認した。そこで、肺炎予防の効果が認められた「オーラルケア・マネジメント法」を基に、それぞれの職種の専門性を考慮した具体的な方法をマニュアル化して、近隣の施設でその普遍性を実証することが急務である。また、有効なオーラルケア法を確立するためには、細菌学的な評価も重要となるが、含嗽ができない場合に行われる従来のスワブによる採取法は、採取者や圧によりバラツキが生じ、客観的な指標とするには課題がある。これを解決するための新たな採取法を含む検査法を開発する必要がある。
以上の特色を生かして、本研究の目的は、がん患者等の有効なオーラルケア・マネジメント法を確立し、がん患者等のQOLの飛躍的向上に寄与することである。
研究方法
有効なオーラルケア・マネジメント・マニュアルの開発と評価法の検討
(1)摂食・嚥下訓練を含むオーラルケア・マネジメント・マニュアルの開発
A.肺炎予防の効果が認められた「オーラルケア・マネジメント法」を参考に、医師・歯科医師・看護師・歯科衛生士・栄養士・介護スタッフ等に分け、その役割と具体的な方法をマニュアル化する。
B.口腔清掃法は、「高齢者オーラケア分類表」の介護度(自立・部分介助・要介護)と口腔状態(多数歯・中・少数歯・無歯顎)から9つのカテゴリーに分類してオーラルケア用具と具体的な方法をマニュアル化する。
 C.機能的なオーラルケア法は、口腔機能を口のまわり(口唇・頬)、入口(咀嚼機能)、奥(嚥下機能)、口腔全体の環境(唾液湿潤度等)の4つのカテゴリーに分類して客観的な検査を実施して、摂食・嚥下機能訓練も含めて口腔機能向上方法をマニュアル化する。
(2)オーラルケア・マネジメントの有効性を確認するための口腔内微生物・機能の客観的検査法の開発
 過去の研究から、申請者らは以下の客観的な検査法を開発して評価を行なっている。
A.唾液湿潤度の測定 B.総菌数の測定 C。唾液吐出液から濁度とアンモニアの測定 
D.カンジダ菌の測定 E.口腔機能の嚥下機能に関する検査 F.咀嚼能力に関する検査

結果と考察
本年度は、当初の研究計画に沿い、有効なオーラルケア・マネジメントの開発とその応用による周術期口腔機能管理マニュアルの作成に取り組んだ。オーラルケア・マネジメントの実質的手法に関しては、歯科系医療従事者単独、病院看護師単独で作成した出版物は存在するものの、最も必要とされる多職種がそれぞれの立場から、協働する全医療関係者を対象として作成したマニュアルは、未だ存在しない。マニュアル作成に際しては、京大病院歯科口腔外科スタッフに加え、化学療法部、放射線治療科、呼吸器内科、薬剤部、看護部、医療事務職員など、さまざまな職種の協力を得、特に全身麻酔下での手術患者、化学療法・放射線治療・緩和治療を受ける患者を対象の中心とした。このマニュアルに関しては、本年2月中旬には出版した。マニュアルには、各がん治療種別に項目を設け、評価後に行う口腔疾患の治療、器質的オーラルケア(口腔清掃、口腔疾患の症状緩和・予防など)、機能的オーラルケア(摂食機能訓練、構音機能訓練、開口訓練など)に関し、それらの必要性、手法、効果の評価法などに至るまで盛り込んでいる。
 また、現在、口腔機能管理の有効性を正当に評価し得る口腔微生物・口腔機能の客観的検査法の確立にも取り組んでいる。その中のひとつである口腔内総菌数は、日内変動や採取部位、被検部位の乾燥度、採取方法などにより、口腔清掃状態を判定するに十分な真の口腔内総菌数を表す菌採取採取が困難である。総菌数測定値を口腔清掃度評価に用いることを可能にするためには、試料採取条件を規格化し、正確に患者の口腔内清掃状態を反映させる指標とする必要がある。今後、採取部位や口腔乾燥度などと採取される菌数との関連を検討し、規格化した総菌数測定手法を確立する予定である。
結論
医科・歯科・介護スタッフが連携してオーラルケアを行ない全身への影響を評価し、病院や施設においてオーラルケアを毎日提供するためのマネジメント法を確立することができた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201220077Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,994,000円
(2)補助金確定額
10,994,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,378,247円
人件費・謝金 1,340,424円
旅費 162,040円
その他 576,297円
間接経費 2,537,000円
合計 10,994,008円

備考

備考
交付された補助金に利息が8円生じたため。

公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
-