たばこ規制枠組条約に基づいた有害化学物質の規制によるたばこ対策研究

文献情報

文献番号
201220075A
報告書区分
総括
研究課題名
たばこ規制枠組条約に基づいた有害化学物質の規制によるたばこ対策研究
課題番号
H24-3次がん-若手-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 鈴木 元(国際医療福祉大学 クリニック)
  • 井埜 利博(群馬パース大学 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在,我が国は,国際条約である「たばこ規制枠組条約(FCTC)」を批准し,さらに,健康日本21,健康増進法,がん対策基本法に基づいてたばこ対策を進めている。しかし,我が国のたばこ製品に対する規制は,対策が進んでいる諸外国と比較すると遅れており,魅力のある新規製品が販売される状況にある。さらに,たばこ製品のたばこ葉と煙中には,喫煙者と受動喫煙者にとって有害な化学物質が含有されているが,これらの有害化学物質の規制の検討についても一切行われていない。本研究では,以上の課題を解決するためにFCTCの第9条「たばこ製品の含有物に関する規制」と第10条「たばこ製品についての情報開示に関する規制」に基づいた,たばこ製品中の有害化学物質分析法の確立及び国産たばこへの分析を行い,たばこ製品の有害化学物質の規制・含有量を含めた情報開示することを目的とした。
研究方法
FCTC締約国会議(COP)は,FCTCの9,10条を推進するためには,まず,たばこ製品中の有害化学物質を分析する手法(標準作業手順書:SOP)を確立することが急務であるとした。そこで世界保健機関(WHO)は,世界各国の公衆衛生機関の参加によるたばこ研究室ネットワーク(WHO TobLabNet)を組織し,SOP作成を行っている。
今年度,本研究班はTobLabNetに参加し,
1.主流煙中benzo[a]pyrene SOP作成のためのラウンドロビン研究(分析法の信頼性を確認するための共同実験)
2.WHOのSOP作成が求められる主流煙中のカルボニル類,揮発性有機化合物の分析法の開発と技術研修会の開催
3.国産たばこ銘柄の主流煙中benzo[a]pyreneを含む多環芳香族炭化水素類(PAH)とたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)の分析
以上,3点について研究を行った。本研究は,実験室における分析研究であり,特に倫理面への配慮を必要とする点はない。
結果と考察
1.たばこ主流煙中benzo[a]pyreneのラウンドロビン研究では,5種類のたばこ製品(標準たばこ3R4F,1R5F,CM6と市場で販売される2銘柄)を分析対象とした。主流煙の捕集法は,国際標準化機構の定めたISO法と喫煙者の実態にあった喫煙法(HCI法)の2手法を採用した。その結果は,3R4Fが6.32±0.65(ISO)と15.1±1.33(HCI)ng/cigとなり,喫煙者の実態にあったHCI法が高値となった。他のたばこ製品についても同様の結果が得られた。得られたすべての測定結果はTobLabNetへ報告した。現在,TobLabNetがラウンドロビン研究の結果を集計し,SOPの評価を行っている。
2.現在までにTobLabNetは,たばこ製品に含まれる多種の有害化学物質のSOPを開発しているが,たばこ主流煙中のガス成分であるホルムアルデヒドを含むカルボニル類と1,3-ブタジエンを含む揮発性有機化合物(VOC)に関しては進んでいなかった。これまでの公定法は溶液捕集法が用いられてきたが,この方法は,操作が煩雑であり,低濃度の物質を分析できない欠点がある。そこで本研究班は固体捕集法を採用し,より簡便に高い精度でたばこ主流煙中のカルボニル化合物及びVOC類を捕集,分析する手法を確立した。さらに本年度は,国立保健医療科学院で「主流煙中のカルボニル類及びVOC分析法の技術研修会」が本研究班とTobLabNetの合同開催で行った。
3.国産たばこ銘柄の主流煙中benzo[a]pyreneを含む多環芳香族炭化水素類(PAH)とたばこ特異的ニトロソアミン(TSNA)の分析は,個人輸入たばこ5銘柄とメンソールたばこ11銘柄について実施した。特に,海外から個人輸入するたばこは,国内で販売される同銘柄と比較すると,主流煙PAH量では大きな差は認められなかった。一方で,TSNAでは,個人輸入たばこ銘柄の方が高い値であった。以上のように個人購入したたばこ製品が必ずしも国産品を同等の品質でないことから,価格面からの比較での購入は避ける必要がある。
結論
WHO TobLabNetラウンドロビン研究に参加し,たばこ主流煙中Benzo[a]pyreneの分析を行った。また,たばこ主流煙中カルボニル及びVOC類の分析法を確立・改良し,TobLabNetメンバーを対象とした技術研修会を開催した。さらに国産たばこ銘柄の主流煙中PAH及びTSNA類の分析を行った。これにより,本研究班は,たばこ製品中の有害化学物質分析を可能とし,FCTC第9,10条に基づいたたばこ対策資料の提示が可能となった。また,本研究班の分析結果は,厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会に設置された「たばこの健康影響評価専門委員会」にも提出している。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220075Z