膵臓星細胞活性化におけるオートファジーの役割

文献情報

文献番号
201220074A
報告書区分
総括
研究課題名
膵臓星細胞活性化におけるオートファジーの役割
課題番号
H24-3次がん-若手-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
仲田 興平(九州大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 水元 一博(九州大学 大学病院)
  • 大内田 研宙(九州大学 先端医療イノベーションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、癌細胞周辺の間質細胞が癌細胞の悪性度に影響している<癌間質相互作用>という概念に注目が集まっている。とりわけ、最近発見された膵間質に存在する膵星細胞(Pancreatic Stellate Cells; PSCs)は、種々の分泌因子を介し膵癌細胞の浸潤、転移を促進するとして報告された。膵星細胞が膵癌の悪性形質を誘導する責任細胞として注目されているがそのメカニズムの報告は皆無である。我々は、近年新たな癌制御メカニズムとして注目されているオートファジーがこのメカニズムに関与していると考えている。最近、オートファジーが肝炎における肝星細胞の活性化に関与している事が初めて報告されたが、膵星細胞活性化とオートファジーが関与している報告は国内外において皆無である。今回、膵星細胞が膵癌悪性度に影響を与える新たなメカニズムを解明、新たな膵癌治療戦略を構築する。
研究方法
1.ヒト膵星細胞株の樹立
膵癌患者より得られる手術切除標本を用いてヒト膵星細胞株を20株以上作成した。
2.活性化膵星細胞におけるオートファジー誘導の確認
膵星細胞でのオートファジー活性を共焦点顕微鏡によるGFP−LC3発現、ウエスタンブロット、更には電子顕微鏡によるオートファゴゾームの形成を観察して確認した。
3.膵癌細胞との共培養によるオートファジーを介した膵星細胞活性化の確認
星細胞が膵癌細胞との共培養により活性化が促進されるかを確認、その際オートファジーが誘導されているかを実験1と同様の方法で観察した。

結果と考察
1. ヒト膵星細胞株の樹立および性状の確認
膵癌患者より得られる手術切除標本を用いてヒト膵星細胞株を作成した。作成された細胞株は、膵星細胞の特徴とされるMyofibroblast様の形態を呈し、α-SMAが陽性であることを確認した。その際、同症例標本より癌組織近傍の膵組織および癌組織より離れた膵組織から星細胞を培養し、オートファジー誘導性の違いを確認したところ、癌組織近傍より作製した星細胞において癌組織より離れた組織から培養した星細胞に比べてオートファジーが誘導される症例が一部に見られた。
2. 膵癌細胞、星細胞におけるオートファジー誘導の確立。膵癌細胞および星細胞にGFP-LC3を導入し、星細胞での容易なオートファジー発現観察を確認する手法を確立した。また、ストレス条件下に癌細胞でオートファジーが誘導される事も同時に確認した。
3. 膵癌細胞、星細胞共培養における3MA投与による膵癌細胞浸潤能力への影響(大内田、水元担当)
膵星細胞、癌細胞に3MAを投与したところ星細胞、癌細胞でオートファジーの誘導が抑制される細胞を認める事を確認した。さらに、膵星細胞と膵癌細胞との共培養モデルを確立、星細胞との共培養において膵臓癌浸潤が促進される事を確認した。癌細胞、膵星細胞共培養下にオートファジー抑制剤3MAの投与で膵癌細胞の浸潤が抑制される事を確認した。
4. ストレス投与下における星細胞オートファジー誘導の影響
星細胞を飢餓ストレスとしてEBSS下培養群 (control DMEM下培養群)においてオートファジー誘導能を確認したところ、飢餓ストレス投与群においてオートファジーが誘導される事を確認した。
結論
本年度の研究成果から膵癌細胞周囲の星細胞にはオートファジーが誘導されているが、その中でも誘導の強い星細胞と誘導が弱い星細胞が認められた。また、癌細胞から離れた部位の星細胞ではオートファジーの誘導が癌細胞周囲細胞に比較して低いものがあった。癌細胞周囲の星細胞の一部が癌細胞によりオートファジーを誘導されている可能性が示唆された。今後、症例の蓄積による検討が必要である。また、今後はオートファジー抑制により星細胞自身の活性化が抑制される事を確認する。膵癌細胞および星細胞共培養下に膵癌浸潤能が増強されるがオートファジー抑制剤により浸潤能が抑制されている。今回、オートファジー抑制剤3MAを投与する事により膵臓癌の浸潤能が抑制された。本結果からでは3MAが膵癌細胞および星細胞双方のオートファジーを抑制している可能性が考えられる。しかしながら3MAはオートファジー特異的抑制剤では無いので今後はオートファジーを特異的に抑制する為にオートファジー関連遺伝子であるAtg5ノックダウンを行う事により同様の結果が示されるかを検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201220074Z