ヒト化抗CD20抗体を細胞外ドメインとした新規キメラ抗原レセプター (CAR) 遺伝子導入T細胞の作成と評価

文献情報

文献番号
201220072A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト化抗CD20抗体を細胞外ドメインとした新規キメラ抗原レセプター (CAR) 遺伝子導入T細胞の作成と評価
課題番号
H24-3次がん-若手-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
寺倉 精太郎(名古屋大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 直江 知樹(国立病院機構 名古屋医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
<目的1> 新規にヒト化抗CD20抗体を用いたCARを作成し、細胞表面上に発現するCD20の抗原量とCD20-CAR+ T細胞の反応しうる限界について検討すること。
<目的2> CD27細胞内ドメインを用いたCARをCD28あるいは4-1BBを用いたCARと比較して有用性を検討する。(in vitro, in vivo)
<目的3> 最適と思われるCARを用いた細胞調製がGMP基準に則って可能かどうか、実際に試験調製を行って検討する。
研究方法
<1> 名古屋大学の冨田らは、CD20抗体の連用に伴い腫瘍細胞表面上のCD20発現の低下・陰転化を来す症例とそのメカニズムについて報告している。これらの細胞株や臨床検体を用いて、作成したCD20-CARがどの程度のCD20低発現株まで認識・傷害できるのか明らかにする。T細胞腫瘍細胞株であるCEMに対してCD20を遺伝子導入し、様々な程度のCD20を発現させたCEM細胞株群を用いて、これらに対するCD20-CAR+ T細胞の細胞傷害活性を検討する。CD20-CAR+ T細胞が認識しうるCD20抗原の密度を定量的に検討する。
<2> 細胞内ドメインがCD3ζのみであった第1世代CARに続いて、細胞内ドメインにCD28や4-1BBなどの共刺激シグナルドメインを持つ第2世代CARが開発され、抗原との結合後のIL-2産生能および細胞分裂能力の向上が得られた。今回我々はAffinityの低いTCR刺激後のT細胞生存に有利な影響があると報告されたCD27の共刺激ドメインの役割を in vitro およびin vivoで検討する。CD20-CARの細胞内ドメインをoverlapping PCR法を用いて、4-1BBおよびCD27の細胞内ドメインと入れ替え、作成する。作成したCD20-CD28, CD20-4-1BB, CD20-CD27を用いて、これらを遺伝子導入するウイルスベクターを作成する。これらをより対等に比較するために、Jurkat細胞にこれらのCD20-CARを遺伝子導入して、CD20刺激を加えたときの反応性を比較検討する。
<3> 細胞療法を臨床応用するためには、信頼性の高い細胞調整が必須である。そのため、3-6例の患者から分離されたT細胞に実際に作成したCD20-CARを遺伝子導入し、SOPを作成するとともに、遺伝子導入効率その他に問題がないかどうか確認する。
結果と考察
<1> 様々なCD20発現強度を持つCD20+CEM細胞に対するCD20-CAR+ T細胞による細胞傷害活性をクロム放出試験で検討した。CD20-CAR+ T細胞は、極めて低いCD20発現を示すCEM細胞に対しても高い細胞傷害活性を示した。CD20低発現となり、臨床的に抗CD20抗体療法に対して不応となった患者から樹立された細胞株に対しても、有意な細胞傷害活性を示した。また同様に抗CD20抗体療法に不応となった患者から分離された臨床検体に対しても認識・細胞傷害活性を示した。これらのデータから、CD20-CAR+ T細胞はかなり低いCD20発現まで認識・傷害しうることが示唆された。CARの認識できる抗原量を、T細胞レセプターの認識できる量および抗体の認識できる量と比較するため、標的細胞上のCD20発現を定量的に検討している。
<2> overlapping PCR法を用いて、CD28を細胞内ドメインとするCD20-CARのCD28細胞内ドメインを4-1BBやCD27の細胞内ドメインと入れ替えた。このようにして作成したCD20-CD28, CD20-4-1BB, CD20-CD27を用いてこれらを遺伝子導入するためにウイルスベクターを作成し、Jurkat細胞に遺伝子導入を行った。CD20刺激を加えて伝わるシグナルを定量化するために、これらの細胞にreporter vectorを遺伝子導入している。
<3> GCPに準拠した細胞調製を行うために必要な材料として、ウイルスベクター作成のためのプラスミド・ベクターなど様々なものが必要となる。これらの情報を収集している。上記<1><2>の結果から臨床試験を行うために最適なCD20-CARが決定されれば、実際の細胞調製を行う。
結論
<1> CD20-CAR+ T細胞はin vitroにおいて、CD20低発現細胞株を有効に認識する。CD20抗体療法に不応となった患者の細胞においても十分高い細胞傷害活性を示す。in vivoでも同様の有用性が示されるかの検討が必要である。
<2> CD20-CARの細胞内ドメインとしてCD28,4-1BB, CD27の細胞内ドメインを持つ細胞を作成した。Jurkatを用いた cell-based reporter assayの樹立が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220072Z