腫瘍細胞選択的新規抗がん剤としての葉酸修飾メチル-β-シクロデキストリンの細胞死誘導機構の解明 (24100701)

文献情報

文献番号
201220071A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍細胞選択的新規抗がん剤としての葉酸修飾メチル-β-シクロデキストリンの細胞死誘導機構の解明 (24100701)
課題番号
H24-3次がん-若手-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
本山 敬一(熊本大学 大学院生命科学研究部 製剤設計学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、腫瘍細胞選択的新規抗がん剤として期待される葉酸修飾メチル-β-シクロデキストリン (FA-M-β-CyD) の抗腫瘍活性および細胞死誘導機構を明らかにすることである。メチル-β-シクロデキストリン (M-β-CyD) は、腫瘍細胞で発現が上昇する脂質ラフトからコレステロールを遊離させることにより、その構造や機能に影響を与えるラフト阻害剤である。我々は、M-β-CyDは形質膜上の脂質ラフトからコレステロールを遊離させることにより、細胞生存シグナルを阻害し、アポトーシスを誘導することを報告した。一方、葉酸レセプター (FR-α) は各種上皮がんで過剰発現しているため、葉酸 (FA) はがん標的リガンドとして汎用されている。そこで本研究では、M-β-CyDのがん細胞選択性および抗腫瘍効果の増大を企図して、M-β-CyD に FA を導入したFA-M-β-CyDを調製し、その抗腫瘍活性および細胞死誘導機構について検討した。
研究方法
FA-M-β-CyD の in vitro 抗腫瘍活性は、FR-α 高発現細胞であるヒト口腔がん細胞由来 KB 細胞を用いてWST-1 法により評価した。FA-M-β-CyD の細胞会合は、TRITC を付加したTRITC-FA-M-β-CyD を用いて、フローサイトメトリーにて検討した。FA-M-β-CyD により誘導される細胞死がアポトーシスであるか否かを DNA 含量およびミトコンドリア膜電位を指標に検討した。オートファゴソーム形成に及ぼす FA-M-β-CyD の影響は、オートファゴソームマーカー分子である LC3-II を Cyto-ID® を用いて染色し、蛍光顕微鏡により観察した。FA-M-β-CyD の in vivo 抗腫瘍活性は、Colon-26 細胞 (FR-α(+))を用いて作成した担がんマウスに FA-M-β-CyD を尾静脈内に単回投与し、腫瘍体積および生存率について検討した。
結果と考察
In vitro 抗腫瘍活性について検討したところ、FA-M-β-CyD はKB 細胞においてβ-CyD および M-β-CyD と比較して有意に高い抗腫瘍活性を示した。一方、A549 細胞(FR-α(-))において、FA-M-β-CyD は10 mM まで抗腫瘍活性を示さなかった。次に、フローサイトメトリーによる検討から、TRITC-FA-M-β-CyDは KB 細胞と会合することが示唆された。これらの結果より、FA-M-β-CyD は FR-αを介して細胞会合し、抗腫瘍活性を示すことが示唆された。
 次に、FA-M-β-CyD により誘導される細胞死について検討を行った。FA-M-β-CyD 処理では、DNA 含量は変化せず、ミトコンドリア膜電位を低下させなかった。一方、オートファゴソームマーカー分子である LC3-II を Cyto-ID® を用いて染色したところ、FA-M-β-CyD 処理により、LC3-II 由来の蛍光が観察された。これらの結果より、FA-M-β-CyD による細胞死誘導は、アポトーシスではなく、オートファジーを介することが示唆された。また、FA-M-β-CyD はミトコンドリア膜電位を著しく上昇させたことから、ミトコンドリアにストレスを与え、マイトファジーを誘導した可能性が考えられる。
 次に、FA-M-β-CyD の in vivo 抗腫瘍活性を検討するため、担がんマウスに FA-M-β-CyD を尾静脈内に単回投与し、腫瘍体積および生存率について検討した。コントロール群と比較して、FA-M-β-CyD 投与群では顕著に腫瘍の成長を抑制した。さらに、コントロール群では、Colon-26 細胞を移植後 70 日目までに全例死亡したのに対して、FA-M-β-CyD 投与群では、140 日目においても 100% の生存率を示した。これらの結果より、FA-M-β-CyD は in vivo においても優れた抗腫瘍活性を有することが示唆された。また、FA-M-β-CyD を担がんマウスの尾静脈内に単回投与 24 時間後の血液生化学的パラメータは、コンロトール群と差異は認められなかったことから、FA-M-β-CyD は in vivo において安全性に優れることが示唆された。
結論
以上、本研究で得られた知見より、FA-M-β-CyD は、細胞形質膜上の FR-α を介して細胞内に取り込まれた後、ミトコンドリアの膜電位を上昇させることでストレスを誘導し、オートファゴソームの形成およびマイトファジーを介して抗腫瘍活性を示したものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220071Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,562,495円
人件費・謝金 0円
旅費 134,880円
その他 149,625円
間接経費 1,153,000円
合計 5,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
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