ワクチニアウイルス等の安全性とワクチン接種に関する研究

文献情報

文献番号
199800073A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチニアウイルス等の安全性とワクチン接種に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
倉田 毅(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 吉倉廣(国立感染症研究所)
  • 田代眞人(国立感染症研究所)
  • 森川茂(国立感染症研究所)
  • 杉山和良(国立感染症研究所)
  • 小島朝人(国立感染症研究所)
  • 宮村達男(国立感染症研究所)
  • 梅田珠実(国立感染症研究所)
  • 橋爪壮(日本ポリオ研究所)
  • 神谷齊(国立療養所三重病院)
  • 山西弘一(大阪大学)
  • 十字猛夫(日赤医療センター)
  • 山田章雄(国立感染症研究所)
  • 橋本雄之(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワクチニアウイルス等のポックス系ウイルスを扱う者、患者を扱う医療関係者に、WHOおよび米国ではワクチニアのワクチン接種を勧めている。また米国では、実験事故あるいは思わぬ接触(患者等)の際に、免疫グロブリンの投与も勧めている。またそれら(ワクチン、免疫グロブリン)の用意がされている。わが国には、それらの用意は現在全く無い。国家備蓄とされていたワクチニア(池田、リスタ一等株)のワクチンも既に有効期限切れとなっており、上記ワクチニアウイルス等の事故に対する対応手段はない。この研究では、ワクチニアウイルスをベクターとする組換えDNA実験に携わるワクチン未接種世代の研究者に対する・ワクチン(LC-16弱毒株)の接種の必要性、・免疫グロブリン(ワクチニアウイルスに特異的)の必要性と効力等について、委託研究により弱毒生ワクチンを作製する(千葉県血清研究所に依頼)とともに、既ワクチン接種者から、免疫グロブリンを採取し、有効グロブリンの入手が可能かどうかを検討することを目的とする。最近ワクチニアウイルス(カナリアポックス等を含む)をベクターとして組換えDNA実験に携わる人も増加しており、アトピー性皮膚炎の若年層の増加も目立ち、実験室感染を防ぎ、サル痘の流行地へ入る人々、あるいは医療関係者への接種を含めて、さらに感染者の発症を抑制する方法を開発検討し、あるいは流行地への国際協力等の基礎資料を作り、わが国の対応等について早急に検討する必要がある。
研究方法
過去の種痘による免疫持続の判定とワクチニアウイルス弱毒株LC16m8の作成(委託)、免疫性の検討、さらに若手既種痘者でのワクチンの有効性を検討し、(このワクチンによる副反応はほとんどはない点で旧来の株による種痘とは大きく異なる)血清を得て、免疫グロブリン分画を作成し、そのin vitro、in vivoでのウイルス増殖抑制効果を検討する。
1. 既種痘を受けたヒトの現在の抗体保有調査(実験室関係者)
2. LC16m8株のワクチンの小動物、既種痘者における抗体誘 効果の検討
3. LC16m8接種小動物における通常ベクターとして用いられているWR株等の感染力の感染病理学的基礎検討
4. LC16m8ワクチンの作成(千葉血清に委託し作成)と力価測定を行なう(感染研)。
5. 抗16m8抗体(免疫グロブリン)の小動物とヒトにおける誘導と精製(日赤血液センターに依頼)、またその精製抗体のワクチニアウイルス感染防御効果の検討
6. ワクチニアウイルス等のポックスウイルスの扱いに関するバイオセーフティ上の問題点とその解決法の検討
7. 世界のポックスウイルス感染の現状の調査と世界各国の対応の調査を行なう。
8. 2年後には若年研究者世代へのワクチン対応、免疫グロブリン投与等の有効性、安全性、必要性等につき研究班としての成果を出す。
9. 1-8の成果をもとに、行政対応に資する。
結果と考察
1998年度においては
・この研究の最も基本となるワクチン(LC16m8)につき、研究承認がおりた時点で製造を依頼した。
・既ワクチン被接種者、未接種者につき抗体測定するための血清を集積している。
・既に保管・作成してあったWR株、LO株、LC16mO株、LC16m8株と、これらの組換えウイルス(1,2)の継代・増幅、ウイルスストック調整、感染価測定を行ない、研究体制を整えた。
・組換えウイルスについては比較検討のため、同一の異種遺伝子がワクチニアウイルスゲノムの同一部位に挿入され、同一のプロモーターにより発現されるもの(2,3)あるいはことなった挿入遺伝子を持つもの(3,4)を選別した。また一部は新規の組換えウイルスも構築した。
・これらウイルスの性状、組換えウイルスの純化度、挿入異種遺伝子の発現についてチェック・確認を行なった。
・サル天然痘(マンキーポックスMP)の野外分離株のポック形成など生物学的性状解析を行なった。また今回(1996-97年)のザイールのMP分離株をCDCより分離され検討したかぎりでは、以前のMP株との間に差は見られなかった。
・現在使用されているベクターとしてのワクチニアウイルス株を安全性の視点からの調査を行なった。外国では向神経性の強いWR株がよく用いられている。
・平成8~10年の間で感染研でのワクチニアウイルスをベクターとした研究は13件ある。ワクチニアDNAに他のウイルス蛋白遺伝子を挿入し、大量発現、免疫原性を見るものであり、粒子が形成される。あるいはワクチニア粒子を産生しない系も用いられている。いずれもBSL-2で承認されているものである。
結論
上記の結果に基づき、次年度においてワクチニアウイルスをベクターとして用いているウイルス学会員に呼びかけ参加してもらい、安全性について検討し、最終年度(次年度)に「ワクチニアウイルスをベクターとして用いる際の安全性とワクチン接種について」のマニュアルを作製する予定である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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