がんの実態把握とがん情報の発信に関する研究

文献情報

文献番号
201220066A
報告書区分
総括
研究課題名
がんの実態把握とがん情報の発信に関する研究
課題番号
H24-3次がん-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科・社会環境医学講座環境医学)
研究分担者(所属機関)
  • 柴田 亜希子(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部)
  • 服部 昌和(福井県立病院・外科)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部)
  • 杉山 裕美((公財)放射線影響研究所・疫学部)
  • 大木 いずみ(栃木県立がんセンター研究所・疫学研究室)
  • 三上 春夫(千葉県がんセンター研究所がん予防センター)
  • 岡本 直幸(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター臨床研究所・がん予防・情報学部)
  • 井岡 亜希子(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センターがん予防情報センター企画調査課)
  • 西野 善一(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター研究所がん疫学・予防研究部)
  • 早田 みどり((公財)放射線影響研究所・疫学部)
  • 安田 誠史(高知大学教育研究部医療学系連携医学部門(公衆衛生学))
  • 加茂 憲一(札幌医科大学医療人育成センター)
  • 松田 智大(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部)
  • 片野田 耕太(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部)
  • 雑賀 公美子(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター検診研究部)
  • 西本 寛(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部)
  • 東 尚弘(東京大学大学院医学系研究科)
  • 松田 彩子(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
80,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第3次対がん総合戦略の10年間を3期に分けた完成期(平成22-25年度)後半において、地域がん登録を国策として強力に推進し、院内がん登録との連携を通じて双方の精度向上を図り、がんの正確な実態把握により、がん対策の正しい方向付けを支援する。
研究方法
罹患数・率の全国値を推計し、生存率を集計する全国がん罹患モニタリング集計を実施する。地域がん登録標準DBSの普及と操作手順の標準化を促進する。地域がん登録がん登録における集約ルールの見直しを検討する。安全管理措置に関する活動を実施する。県外在住者の取扱いについて検討し、地域がん登録データの品質の検討を行う。併せて、地域・院内がん登録データを比較することで双方の品質を評価する。また、事業委託先としての大学の役割を考察する。人口動態統計によるがん死亡情報や、本研究班のがん罹患情報を利用して、がん罹患・死亡統計を整備する。
結果と考察
34県から2008年の罹患データを収集し、25県のデータに基づき全国推計を行った。年齢調整罹患率(人口10万対、日本人モデル人口)は男421.5、女275.9であった。うち、7県のデータから、2003-5年症例の生存率を算出し、遡り調査対象を除いた症例の5年相対生存率は58.6%であった。国立がん研究センターの継続実施する標準DBSの利用、保守、導入・運用事業を、研究班として支援した。データ移行しない形で、埼玉県、東京都、鹿児島県の計3県で標準DBSの運用を開始した。これにより、標準DBS利用県は37県となった。地域がん登録における適切な安全管理措置に関する検討の一環として、1)46県を対象としたミニマムベースラインの達成状況調査、2)安全管理措置に関する監査手続ならびに関連する規程類の検討、3)2)の実効性を検証するための模擬監査、4)ミニマムベースラインの追加8項目(追加後合計32項目)の検討、を実施した。ミニマムベースラインを達成した県は昨年の61.0%から大幅に増加し、82.6%となった。登録作業のさらなる標準化、効率化、作業精度の向上のため、集約ルールの見直しの検討課題を、1)形態コードで多重がん判定すべき腫瘍の過剰カウントの疑い、2)性状コード2を厳密に多重がん判定しないことによる過剰カウントの疑い、3)白血病の多重がん判定の実際、4)標準DBSとMCIJ集計値が数例異なる点、に絞り、それぞれの対処方法を、国立がん研究センターに提言した。がん登録データの品質を、各項目の不詳症例について詳細に分析することで、「不詳」の生じる原因や、現在の精度基準の妥当性を確認し、DCO割合と不詳割合の相関、高齢者における高い不詳割合等が明らかとなった。県外在住者の地域がん登録における取扱いについて、広域ブロックでの、県間移送、共通データベースの構築などを提案した。長崎県がん登録データを用いて、がん診療連携拠点病院6施設のDCO%を検討した。病理登録でカバーされている5施設について、病理診断のみの症例の割合を検討した。DCO割合と院内がん登録の開始時期との関連は見られなかったが、病理診断情報のみの割合は院内がん登録開始により明らかに低下し、質の向上に寄与していた。三重県、福島県を訪問し、地域がん登録事業の委託先としての大学の役割について検討した。標準システムの導入、実務者及び医師の確保、大学と県の情報交換が実現されており、更に電子媒体による届出が実現されていた。地域がん登録に基づくわが国の罹患年次推移の分析方法を検討した。過去20年間以上の精度の高いデータの入手可能性、全国値の代替となる代表性、の2点を考慮して、4県(宮城県、山形県、福井県および長崎県)の1985-2007年罹患データを対象とし、1985-1995年データから2000年罹患数、1985-2000年データから2005年罹患数をそれぞれ推計し、実測値との相対誤差は10%未満であることを確認した。がん診療の質の指標確立のため、沖縄県4施設において各施設の医療従事者へフィードバックする会を開催した。会の参加者の事後質問紙調査でもQIに関する活動の理解が深まっただけではなく、改善への意思、継続的な評価への支持が得られたことが伺えた。
結論
本研究班が提示する、わが国における地域がん登録の標準的機能、人材・システムの両面からの標準的要件に沿った登録室の運用により、全国レベルのがん統計の基盤となる地域がん登録がん登録の推進が期待される。登録手順の標準化を進め、登録精度を高めるためには法的な整備や院内がん登録との連携など、幅広い分野での協力体制が必要となる。第3期の最終年も引き続き、本研究班の活動を推進することで、がん罹患・死亡動向の正確かつ迅速な実態把握が可能になる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220066Z