難治性乳癌の克服に向けた画期的治療法の開発基盤推進研究

文献情報

文献番号
201220064A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性乳癌の克服に向けた画期的治療法の開発基盤推進研究
課題番号
H24-3次がん-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
三木 義男(東京医科歯科大学 難治疾患研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 片桐 豊雅(徳島大学 疾患プロテオゲノム研究センター)
  • 太田 智彦(聖マリアンナ医科大学 大学院医学研究科)
  • 中田慎一郎(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 林 慎一(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 大竹 史明(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
19,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「難治性乳癌」であるTriple Negative (TN)乳癌とホルモン療法耐性Luminal乳癌を対象として、1. エクソーム・遺伝子発現情報解析、2. DNA修復経路における合成致死解析、3. ホルモン療法耐性獲得機序の解明の3プロジェクトを柱に新規治療法の開発に取り組む。
1.遺伝子発現情報解析による治療標的分子の同定とその機能解明にエクソーム解析を加え、TN乳癌の発症・進展・感受性関連因子群を同定する。
2.合成致死という概念を基盤に、DNA損傷性薬剤に対して合成致死を来す新たな遺伝子の機能不全を探索し治療に応用する。
3.Luminal乳癌のホルモン療法耐性と乳癌幹細胞性との関係を見出し、新規耐性機序の解明を目指す。低分子リガンド依存的なArylhydrocarbon受容体 (AhR)の活性化によるエストロゲン受容体(ER)蛋白の分解促進と機能抑制を見出し、この新規作用機序に基づく新たなER機能阻害戦略に取り組む。
研究方法
1.TN乳癌臨床検体のエクソーム解析を行い、さらに、DNAマイアレイによるTNBC・正常乳管の網羅的遺伝子発現情報解析を行う。
2.合成致死性を生じる薬剤と遺伝子の組合せを同定するためのスクリーニングを行う。また、合成致死性の鍵となる相同組換え修復に関連する新規分子を探索、同定を行う。
3.ホルモン療法治療後の臨床検体から乳癌初代培養細胞を調整し、ホルモン療法耐性乳癌のエストロゲンシグナル経路を解析、その機序を推察する。また、AhR依存的なER蛋白分解促進機構を解析するため、蛋白量測定および遺伝子発現定量解析を行う。
結果と考察
1.TN乳癌発現亢進遺伝子としてがん抑制機能を有する1つの細胞周期関連遺伝子を同定した。また、エクソーム解析を行い、TP53, BRCA1, BRCA2, PIK3CA, NF1の体細胞変異、および体細胞変異を有するTN乳癌の新規関連遺伝子を同定した。
 次年度は、追加のTNBC臨床検体を用いて、今回同定した体細胞変異の確認やRNA干渉法による発現抑制実験、結合タンパク質の検索を通じて、TNBCの治療薬開発を目指す。
2.BRCA1のE3活性が、トポイソメラーゼ阻害剤CPT-11とPARP阻害剤に起因するDNA損傷の修復に必要であることを明らかにした(Curr. Biol. 22: 1659-66, 2012.)。さらに、PLK1がBRCA1のE3活性を抑制し、PLK1過剰発現がん細胞がCPT-11とPARP阻害剤に高感受性であることを示した。また、相同組換え修復(HR)異常の乳癌はPARP阻害剤が有効で、HRが機能するbasal like乳癌は治療抵抗性である。そこで、分子標的候補としてHR促進分子の同定を試み、DNA損傷応答への関与が未知であった新規HR促進分子RNF8を同定し、さらにこの抑制によりHR抑制因子がDNA損傷部位に集積、HRが抑制されることを確認した(Cancer Res. 72:4974-83, 2012.)。
今後マウスを用いたin vivoでのPLK1発現とCPT-11感受性の相関を解析する。また、PLK1によるBRCA1のE3活性抑制の機序を解明する。また、RNF8の抑制により、難治性乳癌の抗腫瘍薬への感受性を改善できる可能性をノックアウトにより検証し、難治性乳癌における薬剤標的となる可能性を追求する。
3.ホルモン療法耐性株5種(Type 1-5)を樹立。Type 4において、ステロイドの代謝経路変化・感受性変化(3βHSD1発現上昇・アンドロゲン受容体低下)を原因とする新規耐性機序を見出した。また、Arylhydrocarbon受容体(AhR)によるER蛋白分解の選択的促進因子、特に特異的リガンドを探索した。新たな耐性機序の詳細な解明を進めるとともに、これらは、進行性乳癌の克服、特に有効な2次治療の薬剤選択の指標の提供を目指す。さらに、乳癌の標的であるERの機能抑制に有効な選択的AhRリガンドの解析を進め、AhRの標的遺伝子誘導という有害な作用を排除できる可能性を追求する。
結論
複数のTN乳癌にて体細胞変異を認めた遺伝子を同定
TN乳癌で高発現を認めた細胞周期関連遺伝子を同定
BRCA1-E3活性欠損はCPT-11とPARP阻害剤に対する感受性を亢進させる。
PLK1過剰発現がん細胞はCPT-11とPARP阻害剤に高感受性である。
BRCA1 /53BP1同時ノックダウン細胞におけるE3リガーゼ RNF8の治療標的の可能性を示した。
ER陽性乳癌細胞のホルモン療法に対する耐性メカニズムと2次治療の選択肢を提供
ユビキチン化特異的リガンドによるAhR依存的なER蛋白分解制御機構を同定

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220064Z