がん死亡率減少に資するがん検診精度管理に関する研究

文献情報

文献番号
201220061A
報告書区分
総括
研究課題名
がん死亡率減少に資するがん検診精度管理に関する研究
課題番号
H24-3次がん-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センター 検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐川 元保(金沢医科大学 呼吸器外科)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学医学部 産婦人科)
  • 渋谷 大助((財)宮城県対がん協会 がん検診センター)
  • 西田 博(パナソニック健康保険組合健康管理センター)
  • 松田 一夫((財)福井県健康管理協会)
  • 中山 富雄(大阪府立成人病センター疫学予防課)
  • 笠原 善郎(恩賜財団福井県済生会病院 乳腺外科)
  • 濱島 ちさと(独立行政法人国立がん研究センター 検診研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
24,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん対策推進基本計画の個別目標である「全ての市町村で精度管理を行う」「50%の受診率達成(胃、肺、大腸は40%)」に資する課題について検討した。
研究方法
(1)精度管理の評価指標、手法の開発とその普及、及び全国の精度管理状況の把握①個別検診実施体制の評価指標の開発:検診体制が特に優れた114市町村の個別検診の実施体制を調査した。②チェックリスト(CL)とプロセス指標による評価法の開発:同年度の集団検診の指標値(CLスコア、受診率・精検受診率)の関連分析を行った。③都道府県が行うべき精度管理手法の標準化、コンテンツ作成および全国研修会での普及:都道府県の生活習慣病検診等管理指導協議会(協議会)が行うべき精度管理手法を標準化した。また精度管理を行う際のツールも作成し全国研修会で周知した(乳がん、子宮頸がん)。さらに研修会の効果と各協議会の精度管理水準を評価する為の手法も決定した。④全国の精度管理状況の把握:ⅰ)市区町村の精度管理状況の把握:全国1733市区町村の検診実施体制を調査した。ⅱ)都道府県の精度管理状況の把握:(1)③の手法により、全都道府県のH23年度の肺がん部会の活動状況を調査した。(2)精度管理向上体制に関する検討①自治体の精度管理に対する支援策策定:優良な取り組みを行っている18自治体に対し精度管理の取り組み内容をヒアリングした。(3)受診率向上に関する検討①自治体でのcall-recallシステム(CRS)の普及率:全国1733市区町村のCRSの普及率を調査した。②個別受診勧奨およびInformed decision making(IDM)の評価:東京八王子市での大腸がん検診受診勧奨において、住民を、ハガキでの個別通知をしなかった群(a)、ハガキでの個別通知のみ行った群(b)、(b)に加え検診不利益の情報を提供した群(c)に割り付け、各群の受診率とIDM割合を比較した。
結果と考察
(1) 精度管理の評価指標、手法の開発とその普及、及び全国の精度管理状況の把握①精度管理改善の為の対策を医師会と行っている自治体は約半数、特に重要な精検結果回収方法を共に整備している自治体は約2割であった。従って今後は個別検診での医師会の役割を明確化しそれをふまえた指標を作成する必要がある。②CLの受診率関連項目の合計スコアは有意に受診率と相関し、精検受診率関連項目の合計スコアは精検受診率と有意に相関していた。よって、指標と精度管理水準の関連性が認められた。今後は両指標を組み合わせた評価法を開発することにより効果の高い精度管理が期待できる。③協議会が活用できるツールとして回答基準を統一したCL、CLやプロセス指標を把握する為の調査票、調査依頼文書、指導文書等の雛形を作成した。またそれらを全国研修会(44県参加)にて周知した。研修会の効果の評価はその後の各協議会の活動状況の評価と兼ねており、協議会開催の有無や検討結果の公表状況により評価することとした。それらを今後継続的に評価し公表することにより、自発的な精度管理改善を促し最終的に検診の質の均てん化が期待できる。 ④ⅰ)CLの達成率は調査開始時より約13ポイント改善していたが一部の項目(個別受診勧奨、受診歴別集計、検診機関の適切な委託)は一貫して低く今後はこれらの改善が特に重要である。ⅱ) 34県が肺がん部会を開催し、うち28県がHPで検討結果を公表していた。また公表内容が一定の水準を満たしていたのは3県のみであった。 (2)精度管理向上体制に関する検討:ヒアリング結果をふまえ、行政担当者に必要なノウハウや、他の自治体が参考にできる取り組み事例を抽出してマニュアルを作成した。マニュアルは6月に配布予定であり、行政担当者の支援となることが期待できる。(3)受診率向上に関する検討①海外でエビデンスのあるCRSは日本では8%しか普及していなかった。今後はCRSの整備が受診率向上の為に最も重要である。②各群の受診率は(a)4.9%、(b)5.1%、(c)6.6%だった。IDM割合は各々(a)20.7%、(b)26.4%、(c)29.6%であった。以上よりハガキでの個別通知による受診率向上効果が示され、また検診不利益の情報提供は利益のみの提供と同等の受診率向上効果、及びIDM割合を上げる効果があることが示された。
結論
がん対策推進基本計画の個別目標達成に資する精度管理体制構築の検討が進捗した。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220061Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
32,000,000円
(2)補助金確定額
32,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 653,598円
人件費・謝金 5,976,201円
旅費 2,931,655円
その他 15,054,546円
間接経費 7,384,000円
合計 32,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
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