食品中に溶出するアルミニウムの摂取実態に関する研究

文献情報

文献番号
199800072A
報告書区分
総括
研究課題名
食品中に溶出するアルミニウムの摂取実態に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
松田 りえ子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルミニウムは日常生活において調理器具、容器、包装材料として人が接触する頻度の高い金属である。近年、アルツハイマー病とアルミニウムに因果関係があるという学説が提出されており、健康への影響が懸念されている。しかしながら、アルミニウムの健康影響を評価するためには、先ずその摂取量を正確に把握することが重要である。
本研究では、全国10カ所でマーケットバスケット方式により調製されたトータルダイエットスタディ試料中のアルミニウム量を測定し、日常食からの一日摂取量の推定を試みた。アルミニウムの摂取量報告値は広い範囲に分布している。これは用いた食品の差の他に、分析法による変動の可能性も否定できない。この可能性を評価するため、NISTより標準試料を購入し、その測定値に基づいて各機関の評価を行った。
研究方法
全国10カ所の自治体研究機関において、マーケットバスケット方式に従って試料を調製し、アルミニウム量を測定した。通常摂食する食事由来以外のアルミニウムの混入をさけるために、食品の調理、試料の保存には、アルミホイル、アルミケースを使用しないこととした。
各機関の分析値の正当性評価のために、NISTの標準試料、Reference Material 8414(試料1)、及び8436(試料2)を配布した。各機関では、各自の方法で試料を分析し、その結果を報告した。
結果と考察
標準試料を分析した結果、試料1については、機関C及びHが認証値の範囲外の値を報告した。機関Cの測定値と認証値の差はわずかであったが、機関Hは非常に異なる結果であった。試料2では、機関Aのみが認証値の範囲外の結果となった。他の機関は認証値の範囲内の結果を報告しており、今回の調査の分析値は概ね正確であると考えられる。
アルミニウム分析の誤差の要因としては、使用した器具、試薬からのアルミニウムのコンタミネーションが考えられる。本研究におけるアルミニウムブランク値は0~0.19mg/gの範囲であった。精度管理試料及びトータルダイエット試料中のアルミニウム濃度は、数mg/gのレベルであり、これに比較してブランク値は低く、分析に大きな影響を与えることはないと考えられる。
各機関で測定したアルミニウム一日摂取量の平均値は、大人1人1日当たり5.0mgで、最小値は一日1.8mg、最大値は13.2mgであった。各食品群からの摂取量をみると、アルミニウム摂取量が大きい群は、Ⅸ群(嗜好品、1.4mg)、Ⅷ群(野菜・海草、0.9mg)、Ⅱ群(雑穀・芋、0.7mg)、Ⅹ群(魚介類、0.4mg)で、これら4群からのアルミニウム摂取量は全体の59%であった。
また、Ⅲ群(砂糖・菓子、10.4mg/g)、Ⅸ群(嗜好品、6.3mg/g)、ⅩⅢ群(加工食品、6.2mg/g)、Ⅹ群(魚介類、4.8mg/g)中にアルミニウムが高濃度に含まれていた。特にアルミニウム濃度の高いⅢ群は、カステラ、ビスケット、ケーキなどがほぼ6~7g含まれている。ベーキングパウダーを加えて焼いた製品はミョウバンを使用するために、アルミニウムの含量が高いと考えられる。Ⅲ群は摂取する量が少ないため、全体の摂取量におけるⅢ群の割合は10%以下であるが、子供はこの群を摂取する割合が大人よりも大きいと予想され、子供においてはアルミニウムの大きな摂取源となる可能性がある。
ⅩⅢ群のアルミニウム濃度は、機関によって変動が大きい。加工食品は多くの原料・食品添加物から作られており、また近年その数・種類が急速に増加している。トータルダイエット試料に含まれる加工食品の種類は、各機関1~10種類にとどまっており、選択した食品によって濃度が変化する可能性が大きいと考えられる。アルミニウム摂取量、濃度ともに小さい群は、ⅩⅣ群(飲料水)とⅣ群(油脂)であった。
結論
全国10か所で調製された試料から、アルミニウムの一日摂取量が5.0mgと推定された。アルミニウム摂取量調査では、得られた摂取量の推定値の最大値と最小値の差が大きいことが多い。この原因として、食品中のアルミニウム濃度が食品間で大きく異なっていること、サンプリングの誤差が考えられる。従って、摂取量の精密な推定には多数の試料からの分析値が必要であるが、今回の調査では、10カ所で調製した試料の平均を用いており、信頼性は高い。また、標準試料を用いて分析法のバリデーションを行っている。このようなことから、本研究によって正確なアルミニウム摂取量の範囲が推定されたと考えられる。

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