ATLの腫瘍化並びに急性転化、病型変化に関連する遺伝子群の探索と病態への関与の研究

文献情報

文献番号
201220050A
報告書区分
総括
研究課題名
ATLの腫瘍化並びに急性転化、病型変化に関連する遺伝子群の探索と病態への関与の研究
課題番号
H23-3次がん-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加留部 謙之輔(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
  • 都築 忍(愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部)
  • 大島 孝一(久留米大学医学部 血液病理学部)
  • 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床病態や病型の異なる成人T細胞性白血病リンパ腫(ATL)を解析し、腫瘍化ならびに病態の形成に関与するゲノム異常領域を明らかにする。それらの領域から責任遺伝子を見いだし、腫瘍化並びに分子病態との関連を探索し、診断や治療指針に有用なマーカーを明らかにする。2) 慢性型から急性転化した症例で経時的に採取できた検体を解析し、急性転化に関連するゲノム変化を解明する。3) ATLやその類縁疾患の臨床病理的な解析により、ATLの境界領域を解明する。4) Tax-specific CTLの分布とFoxP3を免疫病理組織学的に解析し、その意義を検討する。5) ATL発症に関与する遺伝子の腫瘍化における役割を検討するために、複数遺伝子導入細胞を用いたマウスT細胞性腫瘍化モデルを作成する。
研究方法
1)慢性型ATL27例を中心に解析を進めた。比較として35症例の急性型ATLを用いた。両者とも、腫瘍細胞を精製するためにCD4陽性細胞を用いた。
2)慢性型ATL経過中に急性転化した症例を経時的に追えた症例について、ゲノム異常を比較し、急性転化に関わるゲノム異常領域を解析した。
3)抗HTLV-1抗体陽性でサザン解析がなされた症例(1046検体)を対象に後方視的に解析した。特に、詳細な病理診断がなされており詳細な臨床情報を伴っている57例を対象に、HTLV-1のモノクローナリティと臨床診断、病理診断について検討した。
4)HTLV-1キャリアのALK陰性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)の治療後、1年1ヶ月後に慢性型ATLとして発症してきた患者検体の両者を比較することで、本症例における両病態の関連を検討した。
5)これまでゲノム異常陽性の末梢性T細胞リンパ腫分類不能型(PTCL-NOS)は予後不良であると報告してきたが、甲状腺原発の末梢T細胞リンパ腫は病態が異なるため、6症例を集積して、ゲノム異常解析ならびに臨床病態を解析した。
6) Tax-specific CTLの分布とFoxP3の発現との関連を免疫病理組織学的に検討した。
7)ATL発症に関与する遺伝子の機能的評価をするために初代培養T細胞に任意の遺伝子を導入し、マウスに移植する系を確立していたが、実際に、既知のがん遺伝子Myc、 Bcl2、Ccnd1を組み合わせてT細胞に導入し、マウスに移植した。
結果と考察
1)慢性型ATLと急性型ATLのゲノム異常を比較したところ、慢性型と急性型で共通する異常領域が多数存在し、ATLの発症に関与する責任遺伝子を含んでいることが推測された。一方、急性型にのみ特徴的なゲノム異常が4カ所認められ、そのうちの9p21.3欠失は慢性型の急性転化に伴って出現しており、急性転化のマーカーとなることが示唆された。急性型にのみ特徴的に認められた他のゲノム異常領域も急性転化のマーカーになることが示唆される。2)HTLV-1ウイルスキャリアに発症するT細胞リンパ腫は真のATLかどうか判断困難な症例が少なからず存在する。他のリンパ腫病型で経過中にATLとなる症例もまれで無く認められることも明らかとなった。3) リンパ腫型ATLとよく似ていると報告してきたゲノム異常を有するPTCL-NOSの中には、甲状腺原発のindolentな新しい疾患単位が存在することを見いだした。4) 一部の症例で、ATLのリンパ節病変内にはTax-specific CTLが認められ、その数はFoxP3陽性の症例では優位に低く、FoxP3による免疫抑制の関与が考えられた。5) 初代培養未分化造血細胞から誘導したT細胞にMyc, Bcl2, Ccnd1を組み合わせて遺伝子導入することにより、CD4陽性CD8陰性のATL類似の表現型を有するT細胞性腫瘍を効率よく誘導できた。
結論
(1)ATLの病型に特徴的なゲノム異常が明らかとなった。(2)HTLV-1ウイルスキャリアにおけるT細胞性腫瘍はATLであるとは限らない。(3) ゲノム異常を有するPTCL-NOSはリンパ腫型ATLとよく似ていることを報告してきたが、甲状腺原発のPTCL-NOSは検索した6症例中すべての症例にゲノム異常が認められるものの、indolentな経過をとるため、新しい疾患単位であることが示唆された。(4)Tax-specific CTLの数はFoxP3陽性の症例では優位に低く、ATLの腫瘍化に免疫抑制が関与していることが示唆された。(5)初代培養細胞を用いた腫瘍化機能解析のマウス実験モデルが確立した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201220050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,370,805円
人件費・謝金 925,280円
旅費 606,390円
その他 597,525円
間接経費 2,500,000円
合計 15,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
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