低線量胸部CTによる肺がん検診の有効性評価のための無作為化比較試験

文献情報

文献番号
201220047A
報告書区分
総括
研究課題名
低線量胸部CTによる肺がん検診の有効性評価のための無作為化比較試験
課題番号
H23-3次がん-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐川 元保(金沢医科大学 呼吸器外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 友孝(大阪大学 環境医学)
  • 西井 研治(岡山県健康づくり財団附属病院)
  • 江口 研二(帝京大学 腫瘍内科)
  • 中山 富雄(大阪府立成人病センターがん予防情報センター 疫学予防課)
  • 田中 洋史(新潟県立がんセンター新潟病院 内科)
  • 小林 健(石川県立中央病院 放射線診断科)
  • 佐藤 雅美(鹿児島大学大学院 呼吸器外科分野)
  • 高橋 里美(宮城県立がんセンター 呼吸器外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における肺がん死亡数は,がん死亡の第一位をしめ,がん対策上大きな位置をしめる.喫煙対策は重要であるが,わが国では喫煙に起因する肺がんの割合が少ないことから,何らかの対策を講じる必要がある.胸部CT検査は,胸部単純X線に比べて微小肺野病変の検出率が極めて高い事が知られていたが,その有効性は未だ確立していない.
新しい肺がん対策として低線量CT検診の導入を検討するためには,肺がん死亡率をエンドポイントとした無作為化比較試験が必要と考えられる.欧米での比較試験は喫煙者が対象であり,非喫煙者に対する腺癌の増加という現状に対応していない.わが国において低線量CT検診導入の可否を決定するためには,わが国における比較試験を遂行することが必須である.また,2010年に米国から報告されたNLST (National Lung Screening Trial)の結果を踏まえて,わが国での肺がん検診のあるべき姿を検討する必要もある.
本研究の目的は,胸部低線量CTによる肺がん検診が,わが国の肺がん死亡減少のために有用なものかどうかを判断するための,本邦の実情に合致した胸部低線量CT検診の無作為化比較試験を立案・実行することである.また,CT検診の全国規模での導入に際しては,精度管理が十分に高いレベルで行われる必要がある.そのため,現在行われているCT検診の比較も併せて行い,CT検診としての適切な撮影条件に関する検討も行う.
研究方法
(1)NLST報告(高喫煙者に対し3年連続CT検診を行い肺がん死亡が減少した)および検診と死亡減少の費用対効果・研究成果と経費の費用対効果などを踏まえて改訂したプロトコールに沿って研究を実施する.今年度は,昨年度作成したさまざまなツールおよびノウハウを改訂しつつ,実施地域の拡大と参加者数の増加を目標とした.さらに,より組織的な研究体制のために,データベース構築と報告書式の完全な統一を図る.

(2)LSCT-001ファントムを用いて,肺野に設置した模擬結節を各施設のLSCTの条件で撮影してもらい,模擬結節の検出性能を評価する.また,ノイズ測定用に円筒状水ファントム,MTF測定のためにワイヤーファントム,スライスプロファイル測定用にビーズファントムを撮影し,画質の検討を行う.
結果と考察
(1)検診RCT実施
2012年度は,石川県加賀市・内灘町・かほく市,宮城県利府町・村田町,鹿児島県垂水市・山川地区・開聞地区,岡山県玉野市,福井県あわら市にて無作為化比較試験を実施し,今年度までに1200名を超える研究参加者を得ることができた.研究基盤に関しても,昨年度までに作成した,参加者や市町村に対するさまざまな書類・ツールを,現実に研究を遂行する中で改訂を行うとともに,報告書式の統一化およびデータベースの構築を行った.同時に,検診受診に伴う「不安感」に関するQOL調査,および,予後とコンタミネーション(予定外の当該がんの検診)の調査を継続している.
本研究の対象者の28%が説明会参加を希望し26%が実際に研究に参加すると,応諾率が高率であることが判明した.同様の肺がん検診に関する無作為化比較試験であるPLCO研究は0.3%,ITALUNG研究は7.2%と報告されており,本研究の応諾率はきわめて高い.しかしながら,本年度の玉野市での経験を踏まえると,大規模な自治体ではリクルートが容易でないことも想定される.
また,説明会参加者の9割が実際に研究に参加しているが,このことは,①説明会参加後に「不参加」と決断する参加者が少ない,②説明会参加後に「不適格」になる参加者が少ない,ということが言え,今回作成・配布している勧誘・説明書は,①研究内容の適切な伝達,②不適格例の排除,の両面において有効に機能していると考えられた.

(2)現行の胸部CT検診における画質の全国調査
基礎的評価として,画像データの物理的評価および臨床的評価を行った.前期に収集した約20施設の機器のデータを評価した解析の結果,スライス厚が5㎜を超えると画質に大きな劣化が生じるが,それ以下ではスライス厚・メーカー・機種・再構成関数などは画質に大きな影響がなく,線量との相関が強いことが判明した.
結論
胸部低線量CT検診と現行検診との無作為化比較試験を立案し,これまでに6県14地区にて無作為化比較試験を実際に実施した.その結果,対象者の26%が研究に参加することが判明し,今回作成した勧誘・説明書は,①研究内容の適切な伝達,②不適格例の排除,の両面において有効に機能していると考えられた.
また,各地の低線量CT検診の撮影条件を比較した結果,スライス厚が5㎜を超えると画質に大きな劣化が生じるが,それ以下ではスライス厚は重要でなく,線量と画質が相関することが判明した.

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220047Z