遺伝子多型解析による乳癌ホルモン療法の有効性及び副作用予測診断システムの確立

文献情報

文献番号
201220045A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子多型解析による乳癌ホルモン療法の有効性及び副作用予測診断システムの確立
課題番号
H23-3次がん-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
前佛 均(北海道公立大学法人 札幌医科大学 道民医療推進学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 公一(北海道公立大学法人札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座)
  • 中村 清吾(昭和大学医学部 乳腺外科(昭和大学病院))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではタモキシフェン適応症例を対象とし、CYP2D6など後ろ向き試験の結果からタモキシフェンの有効性・副作用と関連する可能性が強い遺伝子多型について前向きに検証することで、臨床応用可能なタモキシフェン有効性診断、副作用診断システムの確立を目標とする。術前ホルモン治療が行われる症例を対象に血液検体より抽出されたゲノムDNAを用いてCYP2D6などのgenotypeを行い、治療反応性との関係を前向きに検討する。
研究方法
各研究協力医療機関における医師は浸潤性乳癌と診断を受け、根治手術が予定され術前後補助療法としてタモキシフェンによるホルモン療法が適応となる症例に対し、本試験参加の適格基準が満たされていることを確認の上、この臨床試験について説明を行い、文書による同意を取得し連結可能匿名化のうえ本試験に登録している。本試験登録に同意の得られた症例から5mlの採血を行い、研究代表者は血液サンプルよりゲノムDNA抽出を行いCYP2D6遺伝子など、これまでの後ろ向き研究の結果タモキシフェンの有効性・副作用と関連があるとされる遺伝子多型についてgenotypingを行う。術前内分泌療法として、タモキシフェンによる治療を2週~4週間、手術前日まで行う。診断時の生検組織と手術摘出標本を用いてKi-67 Labeling Indexを含め組織学的・臨床的効果とCYP2D6のgenotypeの関係について検討を行う。術後補助ホルモン療法を対象とした試験の解析については、臨床病理学的情報を収集し、データベース化する。本研究課題が終了した後も登録症例の観察を継続し、研究代表者は全生存期間や無再発生存期間をタモキシフェン治療の有効性の指標としたうえで、CYP2D6遺伝子など後ろ向き研究で有効性マーカーの候補とされた遺伝子多型との関連を検討する。つまりKi-67 Labeling Indexという乳癌予後のsurrogate markerで検討するだけではなく、直接予後との関係を前向きに検討し、これらのgenotypeがタモキシフェン治療の有効性にどのような影響を与えているのかについて検討を行う。
結果と考察
これまでにCYP2D6のgenotyping、Ki-67 Labeling Index測定を行った症例を用いて行われた解析結果については、①CYP2D6 Genotype 頻度はそれぞれ*1/*1: 50%, *1/*10: 41.7%, *1/*5: 8.3% であった。また②CYP2D6 アレル頻度については、*1: 75%, *10: 20.8%, *5: 4.2%であった。さらに、③Ki-67 Labeling Indexについては、生検検体における平均Labeling Indexが28.0% (3.44% - 78.9%)、手術摘出標本における平均Labeling Indexが15.3% (0.51% - 83.5%)、術前タモキシフェン治療によるLabeling Index平均低下率は12.8% (-5.48% - 62.1%)であり、2週~4週間の術前タモキシフェン治療により有意にKi-67 Labeling indexが低下する結果を得た (P = 0.037)。CYP2D6 genotypeとKi-67 Labeling Indexの関連については、CYP2D6 *1を酵素活性正常型 (wt)、CYP2D6 *10, *5を酵素活性低下・消失型(*V)アレルとし、CYP2D6 wt/wtとCYP2D6 wt/*Vの間でKi-67 Labeling Index低下率を比較したが統計学的有意な関連は現在のところ認められていない (P=0.25)。これまでの後ろ向き試験の報告でも正常型のホモ(CYP2D6 wt/wt)とヘテロ(CYP2D6 wt/*V)の2群間ではタモキシフェン治療後の無再発生存率において有意差を認めていないことから、今回の結果は過去の報告と矛盾するものではないものの、今後登録症例数を増やし活性消失型ホモ(CYP2D6 *V /*V)を加えて検討していくことが必要と考えられる。
結論
これまでの研究成果より、2週間のタモキシフェン治療によりKi-67 labeling Indexの有意な低下を認めており、タモキシフェン治療効果のsurrogate markerとして有用となる可能性が示唆された。今後、登録症例数を増やしPrimary EndpointであるCYP2D6のgenotypeとKi-67 Labeling Indexの変動との関係を解析する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220045Z