消化器内視鏡検査等による新しいがん検診の開発と有効性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201220043A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器内視鏡検査等による新しいがん検診の開発と有効性評価に関する研究
課題番号
H23-3次がん-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 進英(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 博(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 研究部 がん検診)
  • 西野 克寛(市立角館総合病院 脳神経外科)
  • 石田 文生(昭和大学横浜市北部病院 消化器センター)
  • 山野 泰穂(秋田赤十字病院 消化器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
19,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の便潜血検査(FOBT)による大腸がん検診はその有効性が確立している。しかしわが国のがん死亡の12%以上を占める大腸がん死亡率の著明な減少のためには現在のFOBT単独による検診の次世代の、より有効性の大きい検診法を検討することが重要課題であり、FOBTに大腸内視鏡検査(TCS)を加えた検診法が候補として挙げられる。FOBTに1回のTCSを加えた検診の死亡率減少効果を明らかにするために、FOBTによる検診群を対照としたランダム化比較試験(RCT)を行う。また、TCS検診を行う場合、実態が不明な偶発症等の不利益をモニターし、将来の対策型検診としての検討のためにTCS検診のリスクについても調査する。
研究方法
秋田県仙北市・大仙市の両市で研究参加に応諾した40~74歳の男女を対象に、FOBTにTCSを併用する介入群と、TCSを併用しない対照群に個人別無作為割付し、ランダム化比較試験(RCT)を行う。プライマリ・エンドポイントとして大腸がん死亡率、セカンダリ・エンドポイントとして大腸がんに対する感度・特異度、累積進行がん罹患率、不利益を両群で比較する。
TCSによる大腸がん検診は市立角館総合病院にて全例実施する事とし、精密検査および偶発症の報告体制については市立角館総合病院及び精検協力医療機関にて医師会の協力の下に構築する。
データベースの運用・管理及びデータモニタリングは本研究中央データセンター(日本臨床研究支援ユニット)が実施する。
本年度は、従前の仙北市全域、大仙市2地域に、新たに大仙市の残り6地域を加えてリクルートと検診を実施する。
結果と考察
市の住民基本健診受診者を中心に、年間を通じてリクルートを行った。参加者は平成24年度末時点で5,013名となった。データモニタリング(2012.9.3時点)の結果、2群へのランダム割付は順調に行われていた。
従前の仙北市民へのフォーカスインタビューに基づいた受診行動調査による知見を元に、本年度は、大腸がん撲滅キャンペーンの実施(仙北市)、『市民公開フォーラム』開催(大仙市)、研究促進ボランティア活動(仙北市)、職域への直接のアプローチ(仙北市)、資材送付・電話によるコールリコール等々の参加促進活動等を行った。
平成24年度は、従前の仙北市全3地域(40-74歳以上人口約15,000人)、大仙市の一部(2地域)(同約9,400人)に加え、体制構築の上、大仙市全8地域(同約47,000人)へ募集を拡大し、参加者リクルート、FOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、参加者増加の為の対策、等を実施した。
対象人口から換算して単年で最大4,000人程度の参加が見込まれたが、1,266人に留まった。各種の聞き取りアンケート等にて、検診TCS施設である角館総合病院が大仙市中核地域から遠方である事が、当初の想定以上に極めて大きな障害になっている事が判明している。
研究費上の制約はあるものの、目標達成の為大仙市中心部への内視鏡実施施設の設置の検討を開始している。
本研究は死亡率をエンドポイントとしたがん検診RCTとしてはわが国初めてのものであり、かつTCSのRCTとしては世界に先駆けるものである。本研究の重要性は高く、最終結果が得られるように研究を進めていくべきと考えられる。
結論
リクルート4年目となる平成24年度は、従前の仙北市、大仙市2地域に加え、大仙市全8地域(対象人口47,000人)にも対象地域を拡大し、それぞれにおいて参加者リクルート、FOBT・TCSそれぞれの検診実施、検診・精検・治療情報の収集、検診未受診理由・研究未参加理由の調査、参加者増加の為の対策、等を実施した。平成24年度末時点の累計参加者は5,013名となり、参加者全員がFOBT検診を受診し、TCS+FOBT群においてはモニタリング時点で87%が検診TCSを受診した。TCSの盲腸挿入率は99.6%と非常に高く、苦痛の頻度は低く、さらに偶発症も重篤なものはなく、研究の組織運営を含め、研究の進捗に支障は認めなかった。平成24年度より大仙市全8地域(対象人口47,000人)へ研究を拡大し、多数の登録を期待したがその数は限られ、TCS実施施設の地理的要素などの課題が浮き彫りになった。研究完遂の為の抜本的な対策を検討しつつ、研究費で可能な最大数を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220043Z