文献情報
文献番号
199800070A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギ-性疾患を抑制する天然薬物シジュウムの研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
北中 進(日本大学薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 豊島聡(星薬科大学)
- 馬場俊一(日本大学医学部)
- 早川智(日本大学医学部)
- 鈴木五男(東邦大学医学部)
- 斉藤貢一
- 石井里枝(埼玉県衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アレルギ-疾患の発症率は日本のみならず欧米においても増加の一途をたどっており、最近の調査では総人口の30%前後におよぶ人々が何らかのアレルギ-疾患に罹っているといわれ、これらの治療は重要な課題である。現在使用されている抗アレルギ-薬は副作用が強かったり、効果の面で充分でなかったりと根本治療には満足できないのが現状である。漢方薬や民間薬などの天然薬物にはヒトの身体に本来備わった調節機能に働き、一種の生物応答調節をしていると考えられる。南米原産のフトモモ科植物シジュウムは民間においてアトピー性皮膚炎、膿疱症等の難治性皮膚炎、花粉症等のアレルギー性鼻炎等のアレルギー性疾患に、茶剤、入浴剤、塗布剤として用い効果をあげている。そこで昨年度に引き続きシジュウムの抗アレルギ-効果を解明するため、化学成分の研究、臨床的評価及び免疫細胞に与える影響について検討し、現実的な予防法、治療法を開発することを目的として行った。
研究方法
各研究分担者により以下のように行った。
1)小児のアトピ-性皮膚炎の症状別(感染部位、肥厚部位など)に対してシジュウムの塗布剤や基材による臨床的有効性を、かゆみの症状をスコア-化し、その有効性を検討した。対象年齢は0 歳から15 歳のアトピ-皮膚炎を有する小児について実施した。塗布期間は 8 週間とし、2週間ごとに所見の観察を行い、症状をスコア-化実施した。更に「かゆみ」の指標として同意を得た患者に対して血中のヒスタミン、およびヒスタミン遊離試験を塗布前および塗布後 6-8 週に実施し、アトピ-性皮膚炎に有効なシジュウムの臨床的特徴を検討した。
2)前年度は、Th1 細胞の IFN-g 産生、Th2 細胞の IL-4 産生へのシジュウム抽出物および粗分画物の影響を調べ、粗分画物中には、IL-4 産生をより選択的に抑制するmethyl gallate を得た。本年度は、低用量KLH による免疫と血清IgE・IgG1の測定を行うため、CBA/Jマウスにアジュバント(alum)に吸着させたKLH懸濁液、2週間ごとに5回腹腔内投与することにより免疫した。Methyl gallate は初回免疫より7日後から1日おきに各群0.1, 1, 10, 100 mg/kgを腹腔内投与した。血清は免疫開始から70日後に採取した。血清中のIgEとIgG1の測定は、サンドイッチELISA法により行った。また、低用量KLH免疫マウス脾リンパ球によるサイトカイン産生試験は、上述の低用量KLH 免疫・methyl gallate 投与マウスの血清採取時に脾臓を取り出し、リンパ球懸濁液を調製し、KLHを加えて一晩培養後、培養上清中のサイトカイン(IL-4 およびIFN-g)量をELISA 法により測定した。
3) シジュウムによるヒト末梢リンパ球機能の調節を検討するため、リンパ球増殖、Allo 反応の調節、Type 1/Type 2 バランスの調節について検討した。リンパ球増殖反応は健常者 5 名(平均年齢:23.4 歳)よりリンパ球を分離し、シジュウムエキス(PG-ext.)をリンパ球液培養し、MTT assay によりリンパ球の増殖をELISA plate reader にて定量した。シジュウムによるAllo 反応の調節は健常者 5 名(平均年齢:27.6歳)より、同様にリンパ球液を生成し、シジュウムエキスを上記同様に調製した。1well に対し、PG-ext.溶液、非血縁者の混合したリンパ球を培養した。シジュウムによるType 1/Type 2 バランスの調節は健常者5 名(平均年齢:27.6歳)より、同様にリンパ球液を生成した。リンパ球液 に sample を混合したものを培養、PMAとionomycin をmitogen として添加し培養した。 IFN-g、IL-4 の1 次抗体を培養した。2 次抗体10:1の割合(BCIP-NBT)で1% Agarose gel/PBS 溶液に混和しspot をカウントした。
4)マウスのtype 1/type 2バランスの調節を検討するため、in vivo 及び in vitro における試験を行った。 in vivo 試験はC57BL/6マウスとBALB/cマウスにシジュウム茶剤 自由飲水法にて 14 日、28 日間投与した後、胸腺、脾臓のリンパ球を採取した。リンパ球液 に sample を混合したものを培養、上記の3)と同様に処理した。in vitro 試験はC57BL/6マウス(♀:4週齢)とBALB/cマウス(♀:4週齢)の胸腺、脾臓からリンパ球を採取しPG-ext.とリンパ球液 を混合したものを培養した後にtype 1, type 2 細胞をカウントした。
5)NO産生抑制作用及びiNOS 誘導抑制作用はマウスマクロファージ様株化細胞 (RAW264.7細胞) をHam's F12 培地に懸濁し2 時間培養後、シジュウムエキスまたは単離成分を添加、同時にIFN-g及び LPS を加え、8時間培養した。培養上清を採取し、NO2- 量をグリース法で定量した。さらに、iNOS タンパクの定量のために、細胞をセルスクレーパーでかきとり、PBSで洗浄後、溶解し、タンパクを抽出しSDS-PAGE とWestern blotting により130 kDa のiNOS 酵素タンパクの発現を測定した。iNOS 活性阻害作用はマクロファ-ジをIFN-g 及び LPS ととも活性化させた.iNOSを発現した細胞を採取し、培養液にシジュウム8エキスまたは単離成分を添加し、L-アルギニン (及びcarboxy-PTIO を加え、上清中のNO2- 量をグリース法で測定した。
6)これまでシジュウム抽出物から4種の化合物を単離したが、新たに新規ベンゾフェノン配糖体諸種のクロマトグラフィにより単離し、1H-NMR,MS スペクトルの解析により、構造を決定した。
1)小児のアトピ-性皮膚炎の症状別(感染部位、肥厚部位など)に対してシジュウムの塗布剤や基材による臨床的有効性を、かゆみの症状をスコア-化し、その有効性を検討した。対象年齢は0 歳から15 歳のアトピ-皮膚炎を有する小児について実施した。塗布期間は 8 週間とし、2週間ごとに所見の観察を行い、症状をスコア-化実施した。更に「かゆみ」の指標として同意を得た患者に対して血中のヒスタミン、およびヒスタミン遊離試験を塗布前および塗布後 6-8 週に実施し、アトピ-性皮膚炎に有効なシジュウムの臨床的特徴を検討した。
2)前年度は、Th1 細胞の IFN-g 産生、Th2 細胞の IL-4 産生へのシジュウム抽出物および粗分画物の影響を調べ、粗分画物中には、IL-4 産生をより選択的に抑制するmethyl gallate を得た。本年度は、低用量KLH による免疫と血清IgE・IgG1の測定を行うため、CBA/Jマウスにアジュバント(alum)に吸着させたKLH懸濁液、2週間ごとに5回腹腔内投与することにより免疫した。Methyl gallate は初回免疫より7日後から1日おきに各群0.1, 1, 10, 100 mg/kgを腹腔内投与した。血清は免疫開始から70日後に採取した。血清中のIgEとIgG1の測定は、サンドイッチELISA法により行った。また、低用量KLH免疫マウス脾リンパ球によるサイトカイン産生試験は、上述の低用量KLH 免疫・methyl gallate 投与マウスの血清採取時に脾臓を取り出し、リンパ球懸濁液を調製し、KLHを加えて一晩培養後、培養上清中のサイトカイン(IL-4 およびIFN-g)量をELISA 法により測定した。
3) シジュウムによるヒト末梢リンパ球機能の調節を検討するため、リンパ球増殖、Allo 反応の調節、Type 1/Type 2 バランスの調節について検討した。リンパ球増殖反応は健常者 5 名(平均年齢:23.4 歳)よりリンパ球を分離し、シジュウムエキス(PG-ext.)をリンパ球液培養し、MTT assay によりリンパ球の増殖をELISA plate reader にて定量した。シジュウムによるAllo 反応の調節は健常者 5 名(平均年齢:27.6歳)より、同様にリンパ球液を生成し、シジュウムエキスを上記同様に調製した。1well に対し、PG-ext.溶液、非血縁者の混合したリンパ球を培養した。シジュウムによるType 1/Type 2 バランスの調節は健常者5 名(平均年齢:27.6歳)より、同様にリンパ球液を生成した。リンパ球液 に sample を混合したものを培養、PMAとionomycin をmitogen として添加し培養した。 IFN-g、IL-4 の1 次抗体を培養した。2 次抗体10:1の割合(BCIP-NBT)で1% Agarose gel/PBS 溶液に混和しspot をカウントした。
4)マウスのtype 1/type 2バランスの調節を検討するため、in vivo 及び in vitro における試験を行った。 in vivo 試験はC57BL/6マウスとBALB/cマウスにシジュウム茶剤 自由飲水法にて 14 日、28 日間投与した後、胸腺、脾臓のリンパ球を採取した。リンパ球液 に sample を混合したものを培養、上記の3)と同様に処理した。in vitro 試験はC57BL/6マウス(♀:4週齢)とBALB/cマウス(♀:4週齢)の胸腺、脾臓からリンパ球を採取しPG-ext.とリンパ球液 を混合したものを培養した後にtype 1, type 2 細胞をカウントした。
5)NO産生抑制作用及びiNOS 誘導抑制作用はマウスマクロファージ様株化細胞 (RAW264.7細胞) をHam's F12 培地に懸濁し2 時間培養後、シジュウムエキスまたは単離成分を添加、同時にIFN-g及び LPS を加え、8時間培養した。培養上清を採取し、NO2- 量をグリース法で定量した。さらに、iNOS タンパクの定量のために、細胞をセルスクレーパーでかきとり、PBSで洗浄後、溶解し、タンパクを抽出しSDS-PAGE とWestern blotting により130 kDa のiNOS 酵素タンパクの発現を測定した。iNOS 活性阻害作用はマクロファ-ジをIFN-g 及び LPS ととも活性化させた.iNOSを発現した細胞を採取し、培養液にシジュウム8エキスまたは単離成分を添加し、L-アルギニン (及びcarboxy-PTIO を加え、上清中のNO2- 量をグリース法で測定した。
6)これまでシジュウム抽出物から4種の化合物を単離したが、新たに新規ベンゾフェノン配糖体諸種のクロマトグラフィにより単離し、1H-NMR,MS スペクトルの解析により、構造を決定した。
結果と考察
アトピ-性皮膚炎の小児を対象にシジュウムの塗布剤 3 か月投与、観察し、「かゆみ」及び皮膚所見を点数化し、評価した。同時にヒスタミン代謝物のN-メチルヒスタミン(NMH)、血中ECP値及びヒスタミン遊離試験(HRT)を実施した。その結果、「かゆみ」の軽減と皮膚症状の改善を認め、また、血中ECP 値及び尿中 NMH 値は有意な低下が認められたことから、シジュウム塗布剤はアトピ-性皮膚炎の痒みに有効な手段と考えられ、治療薬の軽減につながると期待される結果を得た。シジュウムの茶剤、入浴剤、スキンケア外用剤をアトピ-性皮膚炎や、炎症を伴う難治性皮膚疾患の尋常性乾癬あるいはその類症等の患者皮膚に対する効果を検討した。これら難治性の皮膚疾患に対して多くの症例において症状の軽減に有用な方向に働くことが観察され、Q.O.L.の向上に寄与する結果を得た。シジュウムの抽出物より単離同定したmethyl gallate が選択的に Th2 細胞に作用し、サイトカインの産生を抑制することを認めたことから、更にKLH 免疫しIgE 産生を誘導したマウスにmethyl gallate 投与において IgE 産生を抑制することを認めた。また、KLH 免疫マウスに methyl gallate を投与した脾リンパ球のサイトカイン産生は、IL-4 が減少し、INF-g が大幅に増加していることを見出し、抗アレルギ-作用を裏付ける結果を得た。一方、健常者Tリンパ球にシジュウム抽出物を添加することによって、低濃度(10-50 mmg)でTh2 を抑制し、Th1 優位になることを認めた。また、Balb/c及び C57BL マウスにシジュウム茶を自由飲水法で投与し、脾細胞においてTh2 を抑制し、Th1 優位になったことを認め、シジュウムはTh1/Th2 振り分け効果を介した免疫調節作用を有する可能性を示した。シジュウムがマクロファ-ジの産生するNOを抑制し、その主要成分が加水分解型のタンニンであることを認め、そのNO 産生調節作用のメカニズムの解明を試みた。NO 合成酵素と酵素活性に対するシジュウムの作用について検討し、シジュウムエキス及び単離した加水分解型タンニンは NO 合成酵素抑制作用と酵素活性阻害作用を持つことを明らかにし、これらのNO産生調節物質は新たな抗炎症剤となる可能性を示唆した。シジュウム中の成分の分離を行い、新規化合物を単離構造決定した。これらの化合物の抗アレルギ-性作用については今後の課題とされた。
以上の結果より、シジュウムは臨床的にアレルギ-疾患に対し有効性が認められ、エキス及び活性成分の生化学的試験及び免疫学的研究において作用機作の解明がなされつつある。
以上の結果より、シジュウムは臨床的にアレルギ-疾患に対し有効性が認められ、エキス及び活性成分の生化学的試験及び免疫学的研究において作用機作の解明がなされつつある。
結論
シジュウム製剤はアトピ-性皮膚炎等の難治性皮膚炎に対し皮膚症状の改善と痒みに対するQ.O.L.の向上に寄与する結果を得た。作用機序としてはケミカルメディエ-タ-を抑制するばかりでなく、Th1/Th2 振り分け効果を介した免疫調節作用を有する可能性が示された。また、含有成分のポリフェノ-ル類はサイトカイン産生に影響を与え、マクロファ-ジの一酸化窒素産生の作用機構が明かとなり、シジュウムの抗アレルギ-作用が裏付けされた。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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