院内がん登録の標準化と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201220038A
報告書区分
総括
研究課題名
院内がん登録の標準化と普及に関する研究
課題番号
H22-3次がん-一般-040
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
西本 寛(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん統計研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山城 勝重(国立病院機構北海道がんセンター 臨床研究部)
  • 海崎 泰治(福井県立病院臨床病理科)
  • 津熊 秀明(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センターがん予防情報センター)
  • 固武 健二郎(栃木県立がんセンター 研究所)
  • 猿木 信裕(群馬県立がんセンター)
  • 岡村 信一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)
  • 東 尚弘(東京大学医学系研究科)
  • 柴田 亜希子(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん統計研究部)
  • 増田 昌人(琉球大学医学部付属病院がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の院内がん登録の登録様式・手順の標準化を進め、標準的な手法で登録される院内がん登録を多くの医療機関に普及することを目的として、1)登録様式の標準化、2)運用体制・手順の標準化、3)登録支援ソフトウェアの開発・改善、4)拠点病院全国集計結果の分析・利用と公表手法の検討の4課題について研究を行う。
研究方法
1)がん登録法制化などの社会的な動向を考慮しつつ、項目定義等の可用性および病期分類の登録精度に関する検討する。また、米国のCollaborative Staging Ver.2(CSV2)のサブセット版主要5部位について実際に4施設で入力し、実入力時間と入力内容の精度を現地review作業により評価する。
2)大学病院での登録手順などにおける問題点の検討、全国集計データ提出用品質管理サーバーの運用上の問題点を評価する。
3)研究班で開発した院内がん登録システムであるHos-CanR plusの提供を行うとともに、そのサブシステムを開発した。
4)精度評価のための指標の検討・策定を行うとともに、全国集計の効率化に向けて情報収集システムを運用する他、公表手法などの検討を行う。
結果と考察
1)登録項目の定義やコーディングルールの検討を継続して行い、今年度は病期分類の亜分類についてコード案を提示した。CSV2の入力には平均20~30分を要し、部位によるばらつきが存在したが、可用性は高いと判断できた。
2)大学病院での実態調査ではcasefinding手順の多様性により的中率に差異があり、手順の標準化が課題であった。他施設施行の初回治療については自施設受診後の治療については把握が難しく、初回治療全体の経過を把握する仕組みの構築が困難であった。「ネットワーク型品質管理」システムの運用ではおよそ1000件の処理に40秒を要した点から500施設程度を対象として運用することは問題ないと考えられた。
3)登録対象見つけ出しツール、病期分類変換ツール、予後調査支援ツール等を開発し、退院サマリ等の処理を含む診療情報管理システムとも連動する形で開発・検証を進めた。実際にサブシステムのいくつかは運用を開始、その他は試験運用を行って、標準化ツールとしての運用を拡大している。
4)都道府県別に院内がん登録で登録されている登録件数が罹患数に対して部位別にどれくらいの割合を占めているかを検討した結果、各県ごとにその傾向を踏まえた分析が必要であることが示唆された。胃癌・術後病理学的病期:ⅡまたはⅢ期で治癒切除・年齢20~80歳について分析を行ったところ、実施率の低い施設については登録の際の見落としや解釈違いが原因であった。胃・大腸・肺・乳房の4部位を対象にした臨床病期と病理学的病期の異同の検討では、手術前の臨床病期が病理学的病期より低めに見積もられることが多く、患者要因等の差を勘案しても施設による差異が存在した。大腸癌におけるTNMの組合せと病期の一致率が2007年と2008年で著明に改善しており、わが国の取扱い規約にのみ存在する「N3」が入力されている例数を施設数と合わせて検討したところ、2007年から2010年症例では著明な改善しており、病期分類の精度が改善していることが示されたが、主要5部位以外では前立腺や膀胱において、T因子の登録精度が不十分であることが示された。また、院内がん登録の普及を図ることで群馬県地域がん登録での2009年のDCO(死亡診断書情報のみが得られた症例)が6.5%と改善した事例を報告した。公表方法については、先行研究での全がん協公表指針を下敷きにした公表指針案を研究班として提示、全国集計データとあわせて、がん登録部会での検討を実施していくことが予想された。

結論
以上、第三年度は、継続的に研究を実施して、標準化への取組みを進めるとともに、新たな評価指標の策定や来年度の検討課題を抽出を行った。また、実務的にも研究成果を踏まえたシステムの提供・運用を開始した。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220038Z